第44話 復旧と推しのイベント

ドラコ王国での祝勝会を終えて、ロロア魔王国に帰ってきたのだが……


(ナギサ)

お前、なんで居るんだ?


(早乙女 椿)

師匠、助けてくださいよぉ〜!(涙目)


(ナギサ)

今度はなんだ?

お前、領地があるだろ?


(椿)

領地が無茶苦茶なんです(半泣)


(ナギサ)

そうか、頑張れ。


(椿)

手伝ってくださいよぉ〜(涙)


(ナギサ)

なんでだよ、インフラ壊れてないだろ。

機械もまた永久保証付きだぞ?


(椿)

そうなんですが、機械は研究用にもらった見本がぐちゃぐちゃで、研究できないんです。

インフラもそうです。

これじゃあ研究できないんです。

後、田畑はぐちゃぐちゃです。

これじゃあ作物が作れません、食糧不足が起こります。


(ナギサ)

田畑は他領も同じだろ?

椿のとこだけってわけにはいかないだろ?


(椿)

王都の田畑にも被害が出てるんです。

城壁の外の田畑は全滅です。


(ナギサ)

まぁそうだろうねぇ……


(椿)

だから助けてください!

このままでは食糧危機が起こります。


(ナギサ)

その為の同盟と輸出だろ。

みすみす分かっている国益を阻害するわけにはいかないな。

こっちは食糧支援ができるだけの生産はしてる。

それを蔑ろにはできないな。


(椿)

そんな……


(ナギサ)

それが国際関係だよ。

ボクらの手を出すところじゃない。

見本の機械ぐらいならやれるよ。


(椿)

ううっ……ケチ(涙目)


(ナギサ)

仕方ないだろ、国とはそういうもんだ。

もちろん食糧支援はできるから、要請があれはするよ?

 

(椿)

人でなし(半泣)


(ナギサ)

なら、もう付き合いやめる?

例の世界なら自分一人でも行けるでしょ。


(椿)

うーん……お金……


(ナギサ)

自分で調達しな。


(椿)

推しグッズ。


(ナギサ)

買えば?


(椿)

うにゅうぅぅぅっ……


(ナギサ)

あのな、自分の領地"だけ"そうなれば、お前、居られなくなるぞ。

嫉妬は凄まじいだろう。

他の領地は要請があれば、支援物資を"買う"んだ。

皆、自領だけ考えるが、今回は規模が違う。

被害が出てた領地はどうしてんだ?


(椿)

付き合いのある領地から買ってます。


(ナギサ)

ほらみろ!


(椿)

私、付き合い無いんです……


(ナギサ)

でも、他領から技師が見学に来るんだろ?


(椿)

来ますが領主との付き合いは無いんです。


(ナギサ)

お前、危ねぇ〜なぁ……


(椿)

大丈夫です。

反対派閥には見せたり教えたりしてません。

そこは執事長が選別してます。


(ナギサ)

なら、その執事長が用意してないか?


(椿)

分かんない……


(ナギサ)

お前な……


(椿)

じゃあ、師匠から買えば良いんですね。


(ナギサ)

国の許可が出ればな。


(椿)

師匠と弟子です、絶対許可出ます!

変なの買って、領民になんかあったらいけないし。



で、許可が出た。


(ナギサ)

どうしましょう?売ります?


(ロロア魔王国魔王 カイン・ロロア サキュバス)

売ってあげてください、シルフィア様。

師弟関係ですし。



という事で、いつもの5倍の価格を提示した。


(椿)

うにゅうぅぅぅっ(涙目)


(ナギサ)

嫌なら買わなくて良いぞ。


(椿)

鬼ぃぃぃっ(半泣)


(ナギサ)

普段の相場の8割で良いよ。


(椿)

やったぁ〜!!

師匠、愛してるぅ!チュッ♡(投げキッス)


(ナギサ)

おえぇぇぇっ!!


(椿)

なんでですか!(涙)



その後、ドラコ王国からも要請があり、食糧支援を行った。

普段の相場の9割で取り引きした為、吹っかけた領主は肩身が狭くなった。

そりゃそうだ、同盟国とはいえ他国。

そこが足元見ずに通常相場より低い価格で取り引きしたんだ。

急いで高値で取り引きした領主も、次からはロロア魔王国から輸入する。

そして高値で売った領主は、人でなし、守銭奴と社交界で揶揄されることとなった。

椿への見本は現地で引き渡し、ナギサはロロア魔王国に帰った。

なんだかんだで2年で元に戻したのは凄いなぁと思ったら、ここでもナギサのチートが炸裂していた。

まだ"永久保証付き"の状態だった。

インフラは生きている。

田畑をどうにか戻せば元通りになる。

これがかなり助かったらしい。


(ドラコ王国国王)

ここでもナギサ様のお世話になったな。


(ドラコ王国王妃)

はい。

ナギサ様のインフラ無しでは、こうはいきませんでしたね。



まぁ、流石に街並みを元通りにするには、もう少しかかりそうだ。

建物の復旧は時間がかかるからな。

壊れた建物でも、ナギサが手を加えたところだけは壊れてなかったしな。

逆に、それに合わせて建てるのに苦労している場合もあった。


(椿)

師匠!


(ナギサ)

今度は何だ?(ため息)


(椿)

推しのイベント!


(ナギサ)

お前、領地は!


(椿)

なんとかなった。

食糧事情も戻ったし、建物も修復完了した。


(ナギサ)

結構ぐちゃぐちゃだったが?


(椿)

師匠のインフラのおかげですよ。

それに合わせて建て直すだけだから、結構早かったです。


(ナギサ)

王都は苦戦してるみたいだが?


(椿)

お貴族の我儘でしょ。

うちは庶民が多いから、簡単でしたよ?


(ナギサ)

視察に行こうか。


(椿)

えっ?


(ナギサ)

何か問題でも?


(椿)

いや、ほら、師匠、いつも言ってるじゃないですか。

国の許可なく動けないって(泳ぐ目)


(ナギサ)

お忍びって知ってる?


(椿)

な、なら、国王の許可取ってくださいよ(焦)


(ナギサ)

分かった、直々に取りに行こう。


(椿)

取らなくて良いです(涙目)


(ナギサ)

なんで?


(椿)

いや、その、えーっと……(泳ぐ目)


(ナギサ)

まだ終わってないと(ため息)


(椿)

うにゅうぅぅぅっ……


(ナギサ)

なら諦めろ。

諦めるのも大事だ。


(椿)

ダメですか?(上目遣い)


(ナギサ)

お前、腐りまくってグジュグジュでも領主だろ(ため息)


(椿)

く、腐りまくって……(涙目)


(ナギサ)

こんな時ぐらい、領主らしくしろ(ため息)


(椿)

こんな時、どうしたら良いか、分からないの……


(ナギサ)

笑えば良いと思うよ(ため息)


(椿)

えへへ……違ぁ〜う!

行きたい!行きたい!推しのイベント、行きたいのぉぉぉっ!!(叫び)


(ナギサ)

はいはい、連れてってやるよ。


(椿)

ほんと!(嬉)


(ナギサ)

椿の領地に。


(椿)

なああぁぁぁっ!!(泣)


(ナギサ)

いつなんだ?


(椿)

今でしょ!


(ナギサ)

なら間に合わないな。


(椿)

なんで?


(ナギサ)

3日ほど寛ぐから。


(椿)

4日後です!


(ナギサ)

4日後からは仕事だ。


(椿)

何の仕事ですか?


(ナギサ)

ひ・み・ちゅ♡


(椿)

ぬがああぁぁぁっ!!


(ナギサ)

国家機密だ。

なんでもかんでも言えるわけないだろう(ため息)


(椿)

教えてくださいよぉ〜(ムスッ)


(ナギサ)

ダメだ!


(椿)

なんで?


(ナギサ)

ダメなもんはダメだ。


(椿)

女王様に聞いてくる!


(ナギサ)

アホかああぁぁぁっ!!



静止を振り切ってカイン・ロロアに聞きに行く。


(カイン・ロロア)

は?シルフィア様には1週間は休んでもらうつもりなんだが?


(椿)

じゃあ、4日後の推しのイベント行っても大丈夫ですね!(輝く目)


(カイン・ロロア)

まぁ、そうだが、領地の方は大丈夫なのか?


(椿)

大丈夫です!執事長が仕切ってますから!


(カイン・ロロア)

は、はあ……



呆れて言葉が無いカイン・ロロア。

コイツ、領主で大丈夫か?とため息をついた。


(椿)

師匠!女王様から聞きました、1週間休みですね!!


(ナギサ)

ホントに聞きに行くか(ため息)


(椿)

だから行きましょう!(輝く目)


(ナギサ)

はいはい、皆んなが行けたらな。


(椿)

聞いてくる!



キリアのところに走る椿。


(椿)

キリア!


(キリア サキュバス)

うわっ!なんだよ、どこ来てんだよ!


(椿)

4日後、推しのイベント!(鼻息)


(キリア)

4日後?

あゝ、その日、俺、仕事だわ。


(椿)

なんでよ!サボりなさいよ!いつもサボるでしょ!(血走り目)


(キリア)

アホかああぁぁぁっ!!

心、入れ替えたんだよ!仕事の合間に行く事にしたんだ。

もう仕事に殺されたくねぇ〜!!


(椿)

良いじゃない、1日だけよ!

推しのイベントだけだから!!(鼻息・血走り目)


(キリア)

落ち着けよ!怖ぇ〜よ!目ぇ〜血走ってるじゃねぇ〜か!(怖)


(椿)

推しなの!推しのイベントなの!これは使命なの!(鼻血)


(キリア)

知らねぇ〜よ!鼻血拭けよ!


(キリアの上司 ダークエルフ)

あゝ、キリア、その日は休んで良い。

付き合ってやれ(ため息)


(キリア)

マジかよ……


(キリアの上司)

なんか国際問題になりそうだ、行ってやれ(ため息)


(椿)

ありがとうございます!(土下座)



キリアの上司に土下座する椿。


(キリアの上司)

あゝ、いや、まぁ、気にしないで(ため息)



早速ナギサの元へ。


(椿)

キリアは大丈夫だって!(鼻息)


(ナギサ)

アンナはダメだ、仕事だって。


(椿)

そんなはずはない、行ってくる!


(ナギサ)

はぁ?



椿はクラン王国に行った。

初めて一人で渡った。

お前、大丈夫か?

一度も試してなかったよな……


(椿)

アンナ!(鼻息)


(クラン王国王都クラン ギルド職員 アンナ:女)

わっ!どうしたの?ナギサは?


(椿)

一人で来た!(血走り目)


(王都ギルド職員 アンナ)

よく事故、起こさなかったよね!


(椿)

根性よ!

それより4日後……


(王都ギルド職員 アンナ)

私、仕事よ。

5日後休みだから、一緒に行くつもり。


(椿)

4日後じゃなきゃダメなんだ!

推しのイベントなんだ!


(王都ギルド職員 アンナ)

あら、そうなの。

私は行けないわ。


(椿)

そこをなんとか(鼻息・血走り目)


(王都ギルド職員 アンナ)

こっ、怖っ!

いや当番だから、そんな無茶言わないで。


(椿)

そんなぁ〜(絶望)


(王都ギルド職員 アンナ)

べつに行けば良いじゃない。

私は翌日、連れてってもらうから。


(椿)

ありがとうございます!(土下座)


(王都ギルド職員 アンナ)

ちょっ、ちょっと!

何してんの?


(椿)

アンナ様は女神様です(感涙)


(王都ギルド職員 アンナ)

は、はあ……

で、帰れるの?


(椿)

あっ……


(王都ギルド職員 アンナ)

アンタねぇ〜……

ナギサに連絡してあげるわ(ため息)



アンナから連絡を受けたナギサが迎えにきた。


(ナギサ)

お前、根性やな(ため息)


(王都ギルド職員 アンナ)

初めてで、よく事故にならなかったわね。


(椿)

推しの為です!(鼻息・鼻血・血走り目)


(王都ギルド職員 アンナ)

まず鼻血拭きなさい(ため息)



無事、推しのイベントに行けた椿。

物販でも片っ端から買って行く。


(ナギサ)

お前な……


(椿)

推しの為です!(鼻息・血走り目)


(キリア)

凄ぇ〜な(ため息)



まぁ、分からないわけじゃないが、その根性にため息が出たナギサとキリアだった。

時間が遅かったので、イベントの後は食事だけして帰った。


(ナギサ)

キリアの次の休みは?

また勝負したいだろ?


(キリア)

そうだな、重賞レースはあるのか?


(ナギサ)

そうだなぁ……毎週あるな。

日本ダービー、安田記念、宝塚記念。

3週続けてあるわ。


(キリア)

分かった。

全部行けるように、仕事、片付けるわ。


(ナギサ)

頑張れ。

ボクも空いてたらになるけどな。


(キリア)

まぁ、お前の仕事の規模はデカい。

影響デカいだけに無理は言わねぇ〜。


(ナギサ)

ありがとう。


(キリア)

って事だ、無茶言うなよ、椿。


(椿)

はーい、推しのイベントはしばらく無いから大丈夫!


(キリア)

分かってねぇ〜よな(ため息)



そう言うと、椿は領地に帰って行った。


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