第42話 ドラコ王国存続の危機、スタンピート

ナギサ達はロロア魔王国に帰ってきた。

しばらくは何事もなく過ごしていたのだが……


(早乙女 椿)

師匠!!(涙目)


(ナギサ)

なんだよ。


(椿)

助けてください!(半泣)


(ナギサ)

ヤダ!


(椿)

マジなんです!ヤバいんです!!


(ナギサ)

なら頑張れ!


(椿)

"スタンピート"です!


(ナギサ)

頑張れよ。


(椿)

違うんです!話を聞いてください!!

ダンジョンから魔物が溢れてるんです!


(ナギサ)

まぁ、それが"スタンピート"だ。


(椿)

おかしいんです!


(ナギサ)

笑えば良いと思うよ。


(椿)

えへへ……違ぁ〜う!

あり得ないんです!

記録にあるのは最大でも10万の魔物なんですが、今、既に100万を超えてるんです。

それでもまだ止まらないんです。


(ナギサ)

大変だなぁ……


(椿)

そうなんです。

伝説によると、"魔力噴火"っていうのがあって、それが起こると数百万とも1000万とも言われる魔物が発生して、国を蹂躙するんです。

これで国が滅ぶと伝えられているんです!


(ナギサ)

そっかぁ……まぁ、頑張れ、お前なら大丈夫だ(微笑み)


(椿)

無理です!無茶です!

数百万ですよ!1000万かもしれないんですよ!


(ナギサ)

惜しい人を亡くしたなぁ……


(椿)

死んでません!生きてます!殺さないでください!!


(ナギサ)

自国の事だろ、勝手に動けないって言っただろ?(ため息)


(椿)

だから、今、使者が女王様に謁見してます!

師匠も協力してください!!


(ナギサ)

あのな、女王が許可しないと動かないよ。


(椿)

だから、許可が出るように口添えしてください!


(ナギサ)

なんでだよ。


(椿)

弟子を見捨てるんですか?(涙)


(ナギサ)

うん!(キッパリ)


(椿)

師匠ぉ〜!!(泣)



そこへカイン・ロロアがやって来た。


(ナギサ)

どうしました?カイン。


(ロロア魔王国魔王 カイン・ロロア サキュバス)

シルフィア様。

この度のドラコ王国の申し出、受けようと思います。

我が国にとっても輸出国であり、同盟国でもあります。

それに、どうも前回のクーデターのようなものでもないようです。

国が蹂躙され滅ぶというのであれば、我が国としても黙って見ているわけには……

仮にドラコ王国が滅びた場合、無法地帯となります。

それも戦争による侵略ではなく、魔物の暴走によるものです。

そのまま我が国に魔物が来ないとも限りません。

どちらにせよ、食い止める必要があります。


(ナギサ)

分かりました。

しかし、未だ数が不明。

既に100万を超えてるとなると、どうなるかは分かりません。


(カイン・ロロア)

はい。

なので、無理と判断したら、引き上げてください。

ナギサ様を失うわけにはいきませんから。


(ナギサ)

という事だけど。


(椿)

引き上げないでください!(流涙)


(ナギサ)

分かった、行かなきゃ良いんだね。


(椿)

なんでですか!(号泣)



仕方ないので、ドラコ王国に向かう事にした。

流石に今回は騎士団も出た。


(ナギサ)

ロロア魔王国があるのに大丈夫ですか?


(騎士団団長 熊獣人)

ナギサ様だけ死地に向かわせるわけにはいきません。

たしかに国の守りもありますから、少ないですがお供します。



ナギサの神格化により、増えた武装メイド、その数3000!

専属メイドも200人同行する。

まさに総力戦だ。

騎士団も含めて総勢7000の部隊でドラコ王国に乗り込んだ。


(キリア サキュバス)

ナギサ、やべぇ〜ぞ。

今、魔物の数が700万を超えた、まだ止まらねぇ〜。


(ナギサ)

キリア、居たんだ(驚)


(キリア)

居たよ!なんでだよ!驚くなよ!


(ナギサ)

てっきり死んだ……


(キリア)

死んでねぇ〜よ!殺すなよ!!(涙目)


(椿)

い、1000万超えるんじゃ……


(騎士団団長:男)

ま、魔力噴火だ!これはマズい(冷汗)


 

ナギサ達が王都に着く頃、魔物の総数が分かった。


(ドラコ王国国王)

いっ、1700万……


(騎士団副団長:女)

はっ、最後はドラゴンが10万体、それで止まりました。


(国王)

ドラゴン10万体!


(ドラコ王国王妃)

貴方……


(ドラコ王国第1王女)

しかし、ナギサ様もご助力してくださるのでは?


(国王)

わ、分からん。

ここまでになると、いくらなんでも死にに行けと言うようなものだ。

ロロア魔王国も魔物の暴走を懸念して守りを固めるだろう。

来たとしても、即引き上げの命令が発せられるだろうな。


(ドラコ王国第1王子)

数が数だ。

我が国を蹂躙した後、ロロア魔王国やその他の小国へも向かう可能性もある。

自国の守りを固めるのは当然だ。


(ドラコ王国第2王女)

椿はどうなんです?


(ドラコ王国第2王子)

椿と比べると、ナギサ様の方が火力が上だ。

ナギサ様が撤退するような状況では、椿一人では無理だろう。


(国王)

詰んだか……

伝説の魔力噴火だ、その時は国が滅ぶとの言い伝えだ。


(第2王子)

どうでしょう、椿をナギサ様と一緒に撤退させては。


(第1王子)

というのは?


(第2王子)

異世界から来たんだ。

滅ぶと分かっていて、道連れは我が国の沽券に関わらないか?


(第2王女)

ナギサ様を師匠と慕っていますし、その後の生活は大丈夫ではないかと……



絶望的な空気が漂う。

もはや存続は不可能、それが国王達の総意だった。

ナギサ達が到着した。

国王が急いで出迎えた。

そして……


(国王)

ナギサ様、ご助力ありがとうございました。

即引き上げてください。

できれば椿も連れて行ってもらえないでしょうか?


(ナギサ)

なぜです?


(国王)

魔物の総数が分かりました。

総数1700万、最後尾にはドラゴンが10万体です。

流石に持ち堪えれません。

我が国が滅ぶと分かっていて、異世界から来た椿まで道連れにするのは忍びない。

我が国の沽券にも関わる。

椿もナギサ様を師匠と慕っています。

その後を頼めないでしょうか?


(ナギサ)

分かりました。


(椿)

師匠!


(ナギサ)

迎え討ちましょう。

殺るか殺られるかです。

ドラコ王国が滅亡したら、ロロア魔王国にも影響が出ます。

分かっていながら、同盟国を見捨てるわけにはいかないでしょう。


(国王)

しかし、それでは……


(ナギサ)

やるだけやってみましょう、撤退はそれからでも遅くない。


(国王)

ナギサ様……申し訳ない……



早速、作戦会議だ。


(ナギサ)

迎え討つ場所は?


(近衛騎士団団長:男)

もはや王都しかありません。

兵を展開するには他では間に合いません。


(ナギサ)

分かりました。

魔物の襲撃ルートと王都の地図をお願いします。


(近衛騎士団団長:男)

はっ、ここに!



もうなりふり構ってはいられない。

死ぬか生きるか、いや死ぬな。

そんな事に国家機密も何も言ってられない。

魔物は王都西方、西の門側から突っ込んでくる事が分かった。


(ナギサ)

早速、準備しましょう。



ナギサ達は西門に向かう。

正面じゃないだけに、砦が少々弱い。

まぁ、今更文句を言っても仕方ない。


(ナギサ)

では、準備します。



そう言うと、武器を片っ端からポチッた。

10式戦車1万、戦闘爆撃機3万、当然戦闘機も3万。

46cm砲2万、バルカン砲500万、ロケット砲300万、ミサイル1000万発、対空ミサイル50万、対空砲数百。


(椿)

師匠、何処と戦争するんですか!


(ナギサ)

1700万体なんだろ?もう戦争だよ。


(第2王子)

あわあわあわ……(冷汗)



魔物到達は4日後と分かった。

地図を広げると……


(ナギサ)

大規模魔法はこの場所より奥に着弾させます。

用意した武器はこの位置に配備しますから、ここより奥には絶対行かせないでください。

フレンドリーファイアは気をつけてください。

それを抜けてきたのをお願いします。


(第2王子)

分かった、この位置より絶対奥には行かせないです。


(椿)

私は?


(ナギサ)

火魔法はどこまで使える?


(椿)

"ファイアランス"まで撃てます。

得意なのは"ファイアボール"ですけど。


(ナギサ)

なら討ち漏らしの掃討だな。

フレンドリーファイアには気をつけるように。


(椿)

分かりました、師匠!

で、"フレンドリーファイア"ってなんですか?



ガン!

騎士達が頭を打った。


(ナギサ)

同士討ちの事だよ。


(椿)

分かりました!師匠。



大丈夫か?

そういう空気が流れた作戦会議室だった。

武器の設置も終わる。

とりあえずバルカン砲を試射してみる。



パパパパパパパパパパン!!


煙が収まると、凸凹になった大地が現れた。


(第2王子)

か、神のアーティファクト!


(ナギサ)

こんな感じやね。

後は当日か……



しかし、予想外の事が起こった。

なんとカイン・ロロアが駆けつけた。


(ナギサ)

カイン、なんで!


(カイン・ロロア)

シルフィア様、いくらなんでも無茶な数!

居ても立っても居られなくなり、馳せ参じました。


(ナギサ)

そんな事してもしもの事があったら、ロロア魔王国はどうなるん!


(カイン・ロロア)

ロロア魔王国はシルフィア様が居たからこそ成り立った国、シルフィア様を失うなら、国は滅んでも構いません。


(ナギサ)

そんな事して、国民はどうなるの?


(カイン・ロロア)

・・・すみません、考えが回りませんでした……


(ナギサ)

しかし、今からじゃ撤退するにも間に合わない。

分かりました、王宮に避難してください。


(カイン・ロロア)

はい、申し訳ございませんでした。


(第2王子)

では、こちらに。



第2王子の案内で王宮に避難したカイン。

翌日、魔物が到達した。


(騎士団団長:男)

魔物が到達しました!


(ナギサ)

始めるぞ!

 【ファイアレイン】

 【ファイアスター】

 【ファイアボム】

 【アースレイン】

 【アーススター】

 【アースボム】

 【ライトニングレイン】

 【ライトニングスター】

 【煉獄】



極大魔法が炸裂する。

ガンガン潰していくナギサ。

しかし、相手は1700万体、なかなか減っていかない。

いや、減っているのだが、あまりに多くてそう見えないのだ。


(椿)

減らない、いえ、減っているのに多すぎてそう見えない。



ナギサは極大魔法を連発するが、そろそろ討ち漏らしが出てきた。


(ナギサ)

次、行けっ!



一斉に武器が火を吹き、戦闘爆撃機が爆撃を開始、戦闘機は機銃掃射を開始する。

圧倒的物理の力。

肉片に変わっていく魔物。

それをすり抜けるヤツが出てきた。


(武装メイド ダークエルフ)

行くぞ!我に続け!!



喊声を上げて突っ込む武装メイド達。

 

(椿)

私も!

 【ファイアボール】



椿は無数に展開した魔法陣から"ファイアボール"を連射する。


(第2王子)

我らも遅れるな!!



ドラコ王国の騎士、総数10万が突っ込んだ。

ナギサは極大魔法の連発、武器の操作、そして武装メイド達の護衛と凄まじいマルチタスクをこなしていく。

そのおかげで武装メイド達は被害なく順調に魔物を削っていく。


(武装メイド ダークエルフ)

ナギサ様……



討伐も後半に差し掛かる。


(ナギサ)

ぶっ!(吐血)



ナギサはいきなり吐血した。

あれだけのマルチタスクをこなすんだ、脳には負担がかかりまくる。


(椿)

師匠!


(ナギサ)

気を抜くな!集中しろ!



しかし……


(ナギサ)

ゲフォゲフォゲフォゲフォ……



ナギサを見た椿は固まった。

 

(椿)

師匠!



ナギサは口どころか鼻や目、頭からも血を流していた。


(ナギサ)

来るぞ!ドラゴン、10万体!



討ち漏らしを任せ、現れたドラゴンと対峙する。

いくら極大魔法でも10万体も居れば、全ては潰せない。

次エリア、ナギサの用意した武器集団もついに抜けてきたのが発生した。


(椿)

私もドラゴン殺ります!



椿も加勢した。


(ナギサ)

ドラゴンを食い止める!

 【ウィンドカッター】

 【ウィンドスピア】

 【ウィンドランス】

 【アーススピア】

 【アースアロー】

 【アース

ぶほっ、ぶほっ、ぶほっ……


(椿)

師匠!


(ナギサ)

 【限界突破】

 【ライトニングスピア】

 【ライトニングアロー】

ゲフォゲフォゲフォゲフォ……



武装メイド達に怪我人が出だす。


(武装メイド ダークエルフ)

ナギサ様……

お前ら、気合い入れてかかれ!

怪我は避けろ!

意味分かるな!



怪我人が出だした事で理解した。

ナギサは限界と……

このままでは神が死ぬ、我らの神が崩御される、それだけは嫌だ。

必死に魔物を刈る武装メイド達。

しかし流石に数が多い。

振り返れは、ナギサはドラゴンと対峙している。

ドラゴンは、目測でもまだ1000は居る。

遂に死者が出だした。

そして……スタンピートは終わった。

総数1700万体、討伐し切った。

流石に王都に被害は出たが……


(ナギサ)

やったか……


(椿)

師匠!(涙目)


(ナギサ)

最後の仕上げだ。

 【エリアリボーン】

 【エリアテラヒール】

 【エナジーチャージ】

 【ストリップ】

 【ストレージ】

ぶほっ……


(椿)

師匠!(半泣)


(ナギサ)

全員治療して生き返らせた。

武器も回収した。

魔物の部位はここだ、換金でもして使え……



椿に袋を渡した途端、ナギサは膝から崩れ落ちた。


(椿)

師匠ぉ!(叫ぶ)



ナギサはそのまま倒れた。


(椿)

師匠!師匠!師匠ぉ〜!!

そうだ!

 【ヒール】



しかし、ほとんど反応は無い。

当たり前だ、もはや瀕死だ、いつ死んでもおかしくない。

息してるのが不思議だ。


(椿)

 【ヒール】

 【ヒール】

 【ヒール】

 【ヒール】

なんでよ!なんで効かないんだよ!(絶叫)



その叫びに駆けつける武装メイドとカイン・ロロア。


(カイン・ロロア)

シルフィア様!!(絶叫)


(武装メイド ダークエルフ)

ナギサ様!!

回復魔法を使える者、早く来い!!(絶叫)


(椿)

 【ヒール】

 【ヒール】

 【ハイヒール】

 【ギガヒール】

なんでよ!効いてよ!それ以上って使えないよ!!


(カイン・ロロア)

我らに伝わる禁呪なら……

私の命などどうでも良い!


(椿)

ダメだよ!やめてよ!そんな事したら、師匠は……


(カイン・ロロア)

しかし、このままではシルフィア様が……


(椿)

そうだ、魔法は"イメージ"って師匠が言ってた。

なら、これで……

 【テラヒール】



椿は生き返らせるイメージで回復魔法をかけた。


(専属メイド サキュバス)

脈が安定しました、呼吸も落ち着きました。



しかし、意識が戻らない。


(椿)

師匠ぉ(涙)


(カイン・ロロア)

シルフィア様(涙目)


(武装メイド ダークエルフ)

ナギサ様を連れて帰る、至急支度しろ!


(武装メイド達)

はっ!


(椿)

私も行く!師匠を放っておくわけにはいかない!!



慌てて準備をするロロア魔王国の者達。

その殺気に誰も何も言えない。


(第2王子)

あの……いや、なんでもないです……(恐怖)


(国王)

これで万が一の事があれば、我が国はどう責任を取れば良いのか……


(第1王子)

取り返しのつかない事になりますよ。


(第2王女)

私が同行します。

万が一の時は、私の命で……


(武装メイド ダークエルフ)

来なくて良いわ!

お前ごときに我が神の代わりが務まると思うな!

思い上がりもほどほどにしろ!!(射殺す目)


(第2王女)

申し訳ございません(涙目)



もはやボロクソである。

王族が一メイドに恫喝されている。

しかし、その事態を不思議に思わないほど事態は緊迫していた。

回復役が涙ながらに交代でナギサに"ヒール"をかけ続けている。

それでも意識は戻らない。


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