第41話 地獄の訓練とクーデター

領民代表達は領民を説得し、これほど恵まれた機会は無いと言い放った。

滞在中は椿の屋敷に居り、訓練に集中する事になった。

"武装メイド"達も腕が鈍ってはいけないと、定期的に交代した。

護衛団員達には地獄の毎日が始まった。


(護衛団団長:男)

こっ、こっ、こっ、こっ……


(武装メイド ダークエルフ)

どうしました?まだ始まったばかりですよ?


(護衛:男)

さっ、さっ、さっ、さっ……


(武装メイド サキュバス)

まだウォーミングアップですよ?大丈夫ですか?


(護衛:女)

しっ、しっ、しっ、しっ……(涙目)


(武装メイド エルフ)

回復魔法をかけますね、皆さん頑張ってください。

 【ヒール】

 【エナジーチャージ】



ぶっ倒れては魔法回復。

これの繰り返しでメニューをこなす。

武装メイド達も同じようにこなしているのに息すら上がってない。

魔道士も魔力の限界まで搾りだされ、回復魔法で回復しては訓練を続ける。


(護衛団団長:男)

お願いします、まずは手加減してください(半泣)



泣きついた護衛団団長だった。

毎日ボロボロになって訓練を続けた護衛達。

段々上達してはきたが、まだ足元には及ばない。


(護衛団団長:男)

一体どんな訓練をしたんですか?


(武装メイド ダークエルフ)

私は何回死んだか分かりません。

その度にナギサ様が生き返らせてくださいました。

二度とするなと怒られてばかりでしたが、神を守るには己の限界を超え、更なる高みへと至る必要があります。

私のミスでナギサ様に傷一つでも付けるわけにはいかないのです。

ナギサ様の為なら、この命、惜しくはありません。


(護衛団団長:男)

さ、さいですか……(死んだ目)



このままじゃ自分達は多分、いや絶対死ぬなぁと冷や汗が止まらない護衛団団長だった。

ある日、ナギサが様子を見に来た。


(ナギサ)

どんな感じですか?


(護衛団団長:男)

イエス、マーム!

順調に仕上げていただいております!


(ナギサ)

・・・は?


(護衛団長:男)

我々は、まだひ弱なクソ野郎ですが、我々のようなクソ野郎でも、日々教官殿に鍛えていただき、幸せであります!


(ナギサ)

どうしたの?


(椿)

いや、その、なんというか……


(ナギサ)

人格変わってないか?


(椿)

いや、まぁ、なんというか、あはははは。



以前とは別人になっていた護衛団員達であった。

それでもまだ、ナギサの"武装メイド"には歯が立たなかった。

10人がかりでもフルボッコになる。

"武装メイド"の方は息一つ上がらない。


(武装メイド ダークエルフ)

以前よりは強くなっている、その調子だ。


(護衛:男)

ありがとうございます!マーム!


(武装メイド ダークエルフ)

もう一本、いこか。


(護衛:男)

イエス、マーム!



あぁあ、これはもう元には戻らないなぁと思うナギサだった。

武装メイド達が模擬戦に入った。

お互いの姿がブレる。


(護衛団団長:男)

き、消えた……



どうやら目が追いついてないようだ。

カン、カン、カン、カーンと木剣の当たる音が鍛練場に響く。

そして姿を現した時、ダークエルフがサキュバスの喉元に木剣を突きつけていた。


(護衛団団長:男)

さ、流石です!マーム!


(武装メイド ダークエルフ)

まだまだだな。


(武装メイド サキュバス)

精進いたします!



そして、次に魔道士役の武装メイドが鍛錬場に上がる。

無詠唱で展開する魔法陣、その数100!


(武装メイド エルフ)

 【ファイアボール】



連射されたファイアボールがお互いにぶつかり相殺される。


(護衛:女)

お姉様♡マーム!


(ナギサ)

お、お姉様??


(武装メイド エルフ)

まだ100が限界か……



ある意味充分だと思うぞ?

しかも連射だし。


(武装メイド エルフ)

ナギサ様、よろしくお願いします。


(ナギサ)

へっ?



羨望の眼差しでナギサを見る武装メイドと護衛団員達。


(ナギサ)

分かった。



ナギサは無数の魔法陣を展開させる。


(ナギサ)

 【ファイアボール】

 【ウォーターボール】

 【サンダー】

 【ウィンド】



"ファイアボール"を"ウォーターボール"が打ち消し水蒸気が上がる、そこへ"ウインド"が渦を起こし、"サンダー"が雷を発生した。

いわゆる竜巻の発生である。


(武装メイド エルフ)

女神様……(輝く目)


(武装メイド ダークエルフ)

やはり神!(輝く目)


(武装メイド サキュバス)

我らの女神!(輝く目)


(護衛団団長:男)

やはり神は存在した!


(護衛:女)

四属性同時展開、こんなの神の業!


(護衛:男)

我らは神の御使様より指南されているのだ!


(椿)

こんなの出来ません!師匠ぉ〜!!(涙)



とりあえず圧倒的な魔法を見せ、周りが納得したところで鍛練場を降りた。


(ナギサ)

今、どんな感じかな?


(椿)

全て順調です。

学校の方も生徒が集まりだしてますし、勉強塾にも参加者が増えてきました。


(ナギサ)

それは良かった。

例の対策は?


(椿)

密偵を生徒として忍び込ませています。

今のところ、問題児は排除してます。


(ナギサ)

それは良かった。

芽を摘むようなバカな事は防がないとね。


(椿)

そうですね。



するとナギサの滞在中にとんでもない知らせが届く。


(執事長:男)

椿様、クーデターです。

すぐさま挙兵して王都に向かいましょう。


(椿)

えっ?師匠!


(ナギサ)

頑張れ。


(椿)

なんでです!師匠も来てくださいよ!


(ナギサ)

あのな、正式な通達無しに加勢したら、国際問題になるぞ。

しかもドラコ王国内のいざこざだ、ロロア魔王国の者が勝手に手を出すわけにいくか。


(椿)

そんな師匠!


(ナギサ)

頑張れ、正式な通達が来たら考える。


(椿)

考えるじゃなくて、加勢してくださいよ!


 

椿が挙兵の準備をしてる間に、ロロア魔王国のカインから通達が来た。

"今回のクーデターに加勢して欲しい"と。


(ナギサ)

・・・は?


(椿)

やったぁ〜!師匠!!


(ナギサ)

どういう事だ?


(執事長:男)

僭越ながら、王都に使者を送りました。

国王様より、ナギサ様にご助力いただく為にロロア魔王国にも軍事同盟による援軍を要請しました。

魔女王カイン・ロロア様に許可をいただき、ナギサ様に加勢をお願いしたく存じます。


(椿)

やったぁ〜!師匠!!


(ナギサ)

断る!


(椿)

なんでですか!可愛い弟子の危機ですよ!


(ナギサ)

お前が狙われているわけじゃないだろ。


(椿)

なんでです、挙兵するんです、その辺の兵士のように使い捨てられるんです(涙目)


(ナギサ)

まずその"その辺の兵士"に謝ろうか。


(椿)

良いじゃないですか、師匠!(涙目)


(ナギサ)

しかし、今から挙兵しても間に合わないだろう?

あまりに少数だとロロア魔王国のメンツにも関わるだろ?


(執事長:男)

ナギサ様、ナギサ様の部隊がこちらに向かっております。

我々は合流次第、出発いたします。



3日後、ナギサの専属メイド達が到着した。

その数、2000。

うち、武装メイド1900。

100人は世話係だ。


(専属メイド ダークエルフ)

皆様のお世話はお任せください。

椿様のメイドの方々は領地の守りを固めてください。


(椿)

やったぁ〜!助かるぅ〜(嬉)



椿は領軍1000人を率いて出発した。

領軍と言っても護衛部隊だ。

有事の際は、それが領軍となる。

王都に到着すると、国王が出迎えた。


(ドラコ王国国王)

ナギサ様、この度はご助力感謝する。


(ナギサ)

ほんとに良かったんですか?


(国王)

構いません、椿が、あの……


(ナギサ)

椿!


(椿)

なんで!師匠の勇姿、見たいじゃないですか!

私は戦争の時、最前線に立ったけど、師匠は居なかったじゃないですか!


(ナギサ)

当たり前だろ(ため息)



仕方なく、クーデター軍を迎え討つ事になった。

砦に移動するナギサと椿の連合軍、それに第2王子率いる国王軍が同行した。


(椿)

どういう作戦でいきます?師匠。


(ナギサ)

まずは椿の突撃だな。

露払いだ、散ってこい。


(椿)

なんでですか!


(ナギサ)

まぁ、大規模魔法による殲滅、討ちもらしを突貫か?


(第2王子)

それでいきましょう。

魔道士達を配置します。



各軍配置を確認し、持ち場に戻る。


(椿)

師匠!


(ナギサ)

持ち場に戻れよ。


(椿)

私の持ち場は師匠の横ですよ?


(ナギサ)

なんでだよ!指揮官が居るだろ!


(椿)

指揮官は団長です。

私は師匠と大規模魔法担当です。


(ナギサ)

はいはい(ため息)



3日後、クーデター軍と対峙する。


(第2王子)

警告する!

今すぐ投降しろ!

でなければ殲滅する。

誰一人、生きて帰れると思うな!


(クーデター軍大将)

やれるものならやってみろ!

こちらは総数10000、王都を落とし簒奪する!


(第2王子)

こちらには椿が居る。

今回、師匠のナギサ様にも加勢していただいた。

お前らに勝ち目は無い!



その言葉に響めきが起こった。

椿だけでも厄介だ。

というか、こちらの劣勢は確定している。

そこに椿が師匠と慕うナギサが居る。

しかもナギサは軍を率いている?


(クーデター軍大将)

先に聞く。

そこに居るメイドはなんだ?


(椿)

師匠の軍よ、お前らなんか、フルボッコなんだから。


(クーデター軍大将)

・・・は?

メイドが軍?ふざけてんのか!


(ナギサ)

やれば分かる。

お前らは勝てない。


(クーデター軍大将)

言わせておけば!

行くぞ!突撃だ!!


(ナギサ)

バカだ。


(椿)

師匠。


(ナギサ)

やるか……

 【ファイアレイン】

 【アースレイン】

 【サンダーレイン】

 【煉獄】


(第2王子)

嘘……だろ……(唖然)



雨のように降り注ぐ火球に土球、稲妻。

そこに地獄の炎、"煉獄"が炸裂する。

兵士10000?

それがどうした、蟻を潰すようにガンガン削るナギサ。


(椿)

負けてられません!

 【ファイアボール】



無数に展開した魔法陣から火球を連射する椿。


(第2王子)

・・・


(近衛騎士団団長:男)

これ、我々の出番、ありますかね(汗)



あっと言う間に残党500。

そこへ……


(武装メイド ダークエルフ)

我に続け!突貫!!



喊声を上げて突っ込むナギサの武装メイド達1900。

もはや圧勝である。

その武装メイドがすれ違った直後、大将を残して殲滅した。


(クーデター軍大将)

嘘……だろ……



あっと言う間に捕縛されるクーデター軍の大将。

全く出番が無かった第2王子と近衛騎士団。


(ナギサ)

王子。


(第2王子)

は、はい。

あぁ……この度の狼藉、目に余る。

王都に連れ帰り、処刑する。

他、一族郎党処刑の上、領地は取り上げ、家は取り潰す。



そう言うと、近衛騎士団が連れて行った。

ナギサの前に跪く武装メイド達。


(ナギサ)

皆んな、怪我は無い?


(武装メイド ダークエルフ)

はっ、お気遣い、至極恐悦!


(ナギサ)

念の為ね。

 【テラヒール】


(武装メイド達)

ありがたき幸せ!


(椿)

流石、師匠です!(誇)


(第2王子)

怖い……



王都に引き上げた第2王子達。

報告を聞いた国王は改めてナギサと椿のポテンシャルに驚愕した。

それだけでは無い、ナギサが率いる武装メイド集団。

これだけでも第2王子の話だと、近衛騎士団でも劣勢のようだ。


(近衛騎士団団長:男)

もしよろしければ、手合わせを願いたいのですが……


(武装メイド ダークエルフ)

分かりました、お受けいたします。



鍛練場に移動した一行。

近衛騎士団団長とダークエルフが舞台に上がる。


(近衛騎士団団長:男)

では、行きます!



近衛騎士団団長が襲いかかったが、ダークエルフは動くことなく、一刀両断にした。


(近衛騎士団団長:男)

お見事です!



たった一撃、全力の一撃を弾き返し、喉元に木剣を突きつけた。

近衛騎士団員達が唾を飲む。


(近衛騎士団団長:男)

どうしたら、そこまで強くなれるのですか?


(武装メイド ダークエルフ)

我々は神に仕えています。

神をお守りするには、自分の限界を超えた更なる高みへと至る必要があります。

私は何度死んだか分かりません。

その度にナギサ様に生き返らせていただき、怒られました。

しかし、私のミスでナギサ様に傷一つ付けるわけにはいかないのです。

それはここに居る皆が同じ思いです。

我々武装メイドは神の剣、専属メイドは肉壁です。

そのような我々でも、ナギサ様は必ず守ってくださいます。

そのお方を我々が守らずして誰が守るのでしょうか?


(近衛騎士団団長:男)

その忠誠心、騎士として感服いたします。



ダークエルフに騎士の礼をする近衛騎士団団長。

それに倣って武装メイド達に騎士の礼をした近衛騎士団員達。


(第2王子)

こ、怖すぎる……


(椿)

流石です、師匠!



近衛騎士団団長すらその場から動く事なく、一撃で屠った武装メイド。

それが1900人居る。

こんなの近衛騎士団が総力をあげても敵わない。

背中に冷たい物が流れた国王達であった。


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