ミートパスタの染み

@l0_30e1

ミートパスタの染み

昼過ぎ,冷蔵庫に残っていたひき肉とトマト缶でミートソースを作った.

茹でたパスタにあえて,深皿に盛る.ソファに腰を下ろして,一口目.

勢いよくすくったせいか,ソースが跳ねてTシャツの胸元に落ちた.

慌ててティッシュを取りに立ったが,すでに染みは薄くにじんでいた.


落ち着かず,とりあえずお風呂場でプラスチックの桶に水を張り,Tシャツを沈めた.空気を含んだ布が,ゆっくりと水面下に沈んでいくのをしばらく見ていた.

リビングに戻って,冷めたパスタを黙って食べた.テレビでは古着のリメイク特集をやっていた.「汚れは工夫次第」というナレーションが,妙に耳に残った.


翌日,浴室に干していたTシャツを取り込むと,染みはまだうっすらと残っていた.

けれど,不思議と気にはならなかった.

どこか,既に馴染んでいるような気がしたから.


それ以来,そのTシャツはパジャマとして使っている.

着るたびに,あの跳ねたミートソースのことを少しだけ思い出す.

気にするほどでもないけれど,忘れることもない.

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミートパスタの染み @l0_30e1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ