ルートⅡ 二葉 怜花の手③
修羅場。
それは場面によって意味を変える言葉で、バトル漫画などでは強者同士の戦闘で誰も割り込めない状況を言ったりする。
ラブコメなんかでは主人公を好きなヒロインがたまたま会ってしまったりする時や、主人公の浮気現場(勘違いも含む)を彼女に見られた時。
要は第三者が割り込めないような雰囲気を言う言葉だ。
そして今、俺の目の前ではその状況が行われている。
簡単に説明すると、
「いきなり土下座してどうしたんですか」
「私がそうしたいからしているだけです」
「何かやましいことでもあるんですかね」
「そんなことは。ただ……」
「やましいことしか無かったと」
さて、どういう状況なのか。
ソファに座る光留を見た途端に土下座をした二葉さん。
なんだかいつにもまして冷たい声の光留。
俺の知らないところで二人は知り合っていて、その時に何かあったのだろうか。
もしそうだとしたら俺も会っているはずだけど、覚えてないし、それに二葉さんがうちに来ると言った時にもう少し反応があっても良かったと思う。
光留の方も少し間はあったものの、特に違和感なく二葉さんがうちに来ることを許していた。
「二人はどういう関係なん?」
「初対面」
「です……」
うん、どうやら二人はどこかで会ってるらしい。
そしてその時に二葉さんは光留に弱味か何かを握られたようだ。
光留、恐ろしい子。
「そういえば
「あ、はい。
「勝手な妄想で語るな」
「すいません調子乗りました。私が告白して松原君がなんとなくで私を選んだくれただけです。今は私を好きになってもらえるように試行錯誤してる段階です」
ほんとに何をされたのか。
というか俺が二葉さんを選んだのは事実なんだからそこまで焦らなくてもいいと思うが。
光留にも一応そこら辺のことは軽く話しているし。
「でも、私と松原君のお家デートを許してくれたってことは、私達のことは認めてるってことですよね?」
「何か勘違いしてる?」
「と、言いますと?」
「うちは千景に『勝手に彼女面してる変質者がうちに来るみたい』って相談されたから仕方なくうちが相手してあげようとしただけ。そしたら相手が案の定だった」
二葉さんから何かを訴えかけるような視線をいただいた。
もちろんだけど、俺はそこまでのことは言ってない。
俺は光留に「家に来たいって言ってる女の子がいるんだけどいい?」って聞いた。
その相手を聞かれた時に「告白されて、俺がその子に何かを感じて手を取ったんだけど、それがなんだか分からない相手」と、よく分からない言い方で伝えた。
捉え方次第では光留のような考え方にもなるのか。
「俺の伝え方が悪かったな」
「絶対に違う」
「なに、うちが千景に言われたことをねじ曲げて捉えてるって言いたいの?」
「……そんな事ありません」
「そういえば先に言っとくけど、うちは千景の恋愛についてとやかく言うつもりは無いから」
ほんとに二葉さんは光留に何をした。
二葉さんは少しホッとしたような顔になってるけど、こんなに不機嫌な光留を俺は初めて見る。
「じゃあ私が松原君と付き合うことに反対は──」
「相手があなたじゃ無ければ」
希望から絶望に。
俺と付き合うことを『希望』と呼んでいいのか分からないけど、上げて落とすは二葉さんを泣かせるには十分だったようだ。
「泣けば周りが全員味方になるようなところで生きてきたんだ。いいよね、困ったら泣いて全部相手のせいに出来て。あなたのそういうところがほんとに嫌い」
光留はそう冷たく言い放ってリビングを後にした。
いつもの俺なら何も考えずに光留の後を追っていた。
正解とか間違いとか無く、それが俺の当たり前。
だから自分で少し驚いた。
光留を追いかけないで、泣いている二葉さんの頭を撫でていることに。
「女の子の髪って神聖だから簡単に触ったら駄目なんだっけ? ごめん」
なんか昔どこかでそんなことを言われたような気がする。
だから二葉さんの頭から手を離そうとしたが……
「今は、触って欲しい……です」
「こういうこと言ったら駄目なんだろうけど、弱ってる女の子って可愛いよね」
二葉さんから頭突きされた。
痛くは無い。
とりあえず二葉さんが泣き止むまで二葉さんの頭を撫で続けました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます