第6話 麗血の夜妃
俺は魔剣 アスヴェルグレアを手に持ち、目的地へとたどり着いた。
「ここがお主の目的地か?」
「ああ、そうだ」
俺はそう返しながら、足を進める。
ちょうど部屋の真ん中くらいに来ると、明らかに魔力濃度の桁が違っていた。俺でなければ疑問に思うだろうが、俺からすればそこから導き出される答えは一つ。
(封印されているのはここか)
そう考えた次の瞬間、ルークの目の前に煙が漂ってきて、声が発せられた。
あれか?形作られた幻影ってやつか?
『何をしに来た。貴様』
「何をしに来たと思う?」
俺はからかうように言葉を返す。
『余計な問答は必要ない。妾の問いに答えろ』
「クックック、いいだろう、教えてやる。
俺は…お前を復活させに来た。八冥災禍 序列第八位
『ッ!?』
「なんじゃと?八冥災禍の一人を復活させる…じゃと?」
「ああ、俺はその為にこのダンジョンを踏破しに来た。だいぶ傷を負ったが、お前さえ手に入れば安いもんだ」
「お主は相変わらず、狂っておるのう」
「フッ、俺と契約しろ、ヴァルヴァイラ。俺に力を寄越せ」
俺はこの手を掴めとばかりに手を差し出す。
『貴様、何が目的だ』
「俺はルーク・フォン・ゼフィルス。俺の目的は…この世界の頂点となり、世界の覇者となることだ。これは俺の覇道の第一歩目だ。俺と契約すれば、俺がお前を初めての世界へと連れて行ってやる」
『随分、大言壮語な夢を掲げているみたいだな』
「今は…な」
『妾にメリットがないように思えるが?』
「メリット…か」
『まさか、何もメリットを持ってこずにこの場へ来たのか。ハッハッハッ、もし、そうなら浅はかにも程があるな』
メリット…ねぇ〜。仕方ない、あれを使うか。面倒事が増えるからあまり気が進まないが……
「まさか。ちゃんと持ってきているさ」
『だったら言ってみろ』
「"序列の入れ替え"」
『なっ…』
そう、これがこいつと契約するための俺の唯一の策だ。こいつじゃあなければ八冥災禍と契約するなんざあ、不可能だ。実力不足にも程がある。
だが、こいつなら話が変わってくる。案の定、反応しやがった。
『"序列"なんてものに妾は興味ないがの』
「いやいや、俺は知ってるぞ。お前はずっと八冥災禍の他の奴らから後ろ指を指されていたことに。俺だったらお前をトップにまで押し上げられる」
『なぜ、わざわざ貴様みたいなクソガキに妾の力を賭なければならぬ』
「唯一の希望、だろ?」
『……』
図星なのはわかってるさ。それに俺みたいな物好きはそう居ないしな。多分…
「これを逃せば、二度とこんなチャンスはないかも知れないぞ?いいのか。これから一生こんな薄暗いとこで一人で過ごすことになっても」
『くっ、貴様ァ』
「俺なら多少は話し相手にもなれるかもしれない」
『チッ、なら条件を一つ増やす』
「…いいだろう、許す」
『まだ話してないんだが?』
「ククク、どうせ"自由"だろ」
こいつはいつも自由を求めている。俺に力を貸すならそれくらい許してやってもいい。
『…先程から不気味な程に妾のことを理解しておるな。その理由は聞かせてもらえるのか』
「クク、またいつか話してやるよ」
これは嘘じゃない。
『いいだろう。それもまた楽しみが増えるというものだ』
「交渉成立、だな」
『勘違いするな、あくまで対等な契約だ。それ以上でもそれ以下でもない』
「わかってるさ」
あくまで対等な関係、つまり、互いに用済みとなった瞬間、裏切っても構わないという意思表示。
『だが…其方のことは少し気に入った』
「そ、そうか」
おや?もしやツンデレなのか。
「まあ、とりあえず復活させてしまうか」
『方法はわかるのか?』
「当然だ」
俺は封印場所に手をかざし、ありったけの魔力を流し込む。
「くっ…」
俺は自分が持っているほとんど全ての魔力を流し込んだ。限界まで、それも死ぬ寸前まで魔力を流し込む。
「クッソ……」
今となってはもっと魔力量を上げれば良かったと強く後悔する。同年代としては圧倒的だろうが…やはり、この封印は一筋縄ではいかない。
すると、辺り一面が光に満ちる。
成功か…
『まさか…本当に封印を解くとは…』
俺は目の前に、血に染まったような赤い眼をした少し驚いた表情をする、神々しさを覚えるほどの美貌を持つ美女を確かに確認してから、意識を手放した。
今この時、約数百年前たった一人で一国を滅ぼした赤き厄災。
八冥災禍の一人、麗血の夜妃 ヴァルヴァイラが復活した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます