第5話 終焉剣 アスヴェルグレア

「ゴフッ……、何とか倒せたか。はぁはぁ、ギリギリだったが…これが生の実感と言うやつか。なんとも言えぬ高揚感がある」


 どちらが死ぬか分からないほどの激戦の後、立っていたのはルークである。だが、ルークも立っているのがやっとなほどの重傷であった。そんな中、内心ルークはワクワクしていた。


 また一歩最強に近づいた、と。


「ククク、これであとはあいつを復活させれば完璧だ」


 ルークは奴が封印されているであろうフロアへと足を進めようとする。


【力が欲しいか】


「ん?…なんだ?この声は」


 ルークはやけに頭に響く声に苦虫を噛み潰したような顔をするが、周りを見渡すと、俺の背後で視点が留まる。そこにあったのは炎と氷で纏われた剣であった。それもとてつもない魔力で纏われながら。常人では近づくことすら出来ないだろう。常人なら、な。


「まさか…終焉剣終焉剣 アスヴェルグレアか」


【ほう、我を知っておるのか。やはり、其方には見所がある】


(クハ、やはり俺は運がいい。魔剣は原作ではドロップ率0.1%という鬼畜設定にしてたからな。まさか1発でドロップするとは)


「俺に興味を持ったのか?」


【そうじゃな。そのよわいで我を倒す者に興味を持たぬはずがなかろう】


「はっ、だったら話が早い。俺に力を貸せ。俺を主と認めろ」


 こういうのはな、下からへりくだってはダメだ。上から気味が丁度いいんだよ。


【ハッハ、実に傲慢なことよ、其方、どちらかと言うと我の好みであるな。だが、この程度で其方を主と認めるほど、我は決して甘くはないぞ】


「まあ、そうだろうな。では何をすれば俺を主と認める?」


【そうだな…では、其方に一つ問おう。その返答次第で決めるとしよう。構わぬな?】


「ああ、構わん」


 あと一つとか言ってる時点で甘いとは思うが…


【では、汝に問う。其方は我を手に取り、何を為す?】


「…なんだ、そんなことか」


【ほう?】


 俺からしたらそんなもん初めから決まっている。


「俺はこの世で最強、つまり頂を目指す。そしてこの世界を支配する。完全攻略だ。俺の邪魔をする者、俺に害を為す者、俺の物を奪いに来る者、そんな奴らは全員揃って俺の敵だ。奪われるくらいなら俺が全てを奪ってやる。根こそぎ奪い取ってやる。そして、俺は世界の支配者となり、最強となる。俺の家族なんか眼中にもない。俺が最強だと、頂点だとこの世界に証明してやるんだ」


 ルークは眼に邪悪なオーラをなびかせながら、最後まで言いきった。


【つまり、たくさん切るのだな?】


「…ああ、そこら辺の有象無象の絶望顔なら適当に見せてやるよ」


 俺は知っている。こいつが興奮を覚えるのは、他人の絶望顔を拝むことだ。普通に考えたら気持ち悪い話だが、今は利用させてもらうとしよう。


【ハッハッハッ、其方のことが実に気に入ったぞ。なんでもお見通しというわけだ。さあ、我と契約するが良いぞ、若き獅子よ】


「その言葉を待ってた。俺はルーク・フォン・ゼフィルスだ。お前はなんて呼べばいい?」


【ふむ、名前…か、そうだな。よし、我のことはこれからグレアと呼ぶが良いぞ。…それはそうと、まさかゼフィルス家の血を引いておるものとはな。どおりで強いわけだ。まあ、其方はゼフィルス家でも特別なのかもしれんがな。ハッハッハッ】


「クク、まあな」


 なんと…こちらはこちらで見抜かれてそうだが……まあ、細かいことはおいおいでいいか。俺はグレアと契約すると、今度こそ目標としていた場所へと足を進める。


【ところで、お主はなぜこんな所に来たのじゃ?】


「まああとで分かることだ」







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