第31話
「皆さん、この地の領主として、安易な事を口走ったばかりに、皆さんには多大な迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。お詫びに、今日だけですが、市場で仕入れた商品を、仕入れ価格で販売致します。今後の販売価格については、領主として目を光らせて頂きます。」
市場の店主達は慌てて自分の店に帰って行った。
勿論、卸業者達にも残った食材を販売して頂いた。
暫く市場は領民の買い物で、てんやわんやになり大変なことになってしまった。
市場や卸業者達が販売できる物が少なくなってくると、買い物をする領民も少なくなった。
卸し業者達の、残った全ての食材の買取りを済ませ。お礼を伝えた後帰って頂いた。
一方市場の店主達に対しては、元々値上げしなかった店の残った食材を通常価格で支払い、仕入れ価格で販売した分は、仕入れ価格に利益分を上乗せして支払った。が、値上げした店の店主達には、残った食材は、通常価格を支払ったが、販売した分は仕入れ価格に、通常上乗せ分の半分を乗せて支払った。
意義を申し立てて来た者も居たが、本来ならば、営業許可自体、無くしてもいい位の悪質な物だったので、店主達にどちらが良いか決めて貰った。
領民達も一応これで落ち着いてくれたが、今後も暫くは店主達を見張る必要がありそうだ。
市場での騒動が落ち着くと、仮小屋製作場の事が気になり出向く事にした。
案の定食材の卸業者が来なかったせいで、食材の仕入れが出来ずにみんな困っていたようだった。食材を取り出し渡して置いた。
次に、動物達の食事が始まった。
その後、焼き窯の工房を訪ねると、焼き上がったレンガブロックの取り出しが始まって居た。そのレンガブロックを空間収納に収めて行くと、昨夜話して居た、焼き窯が五本、すでに出来上がっていた。
既に溜まって居る、焼く前のレンガブロックがどんどん焼き窯の中に吸い込まれて行った。
そして窯に火が入ると、今度は動物達の食事の時間となった。
食事が終わると、動物達はレンガ作りに戻って行った。
その後は、街道に向かい、トンネルに向かうと屋敷に戻った。
この様な毎日が数か月過ぎて行った。
市場や領民も落ち着きを取り戻し、毎日が平穏に過ぎて行った。
王都からの街道も石畳が敷かれ、快適な旅が出来る様になって居た。
温泉街も温泉が湧く洞窟から源泉を引き込み、ミスリル鉱石を掘った後の広大な広場を区画整理し、温泉街として、土産物施設、市場、一般宿泊施設、療養施設にお金持ちのリゾート地としてバカンス気分が味わえる豪華な宿泊施設の建設が着々と進んで居た。
従業員の教育は、ケイト様の奥様と使用人の方々や、領土内の貴族の奥様と使用人達が率先してやってくれていた。
焼き窯の工房では、15本の焼き窯がフルで動いて、レンガブロックがやっと間に合って居る。
セントドラゴン山からトンネルまでの街道と、温泉街からの街道も整備され、馬車での走行も楽になって居た。
トンネルは二本共ほぼ完成し、馬車が通る車道部分は石畳になっており、馬を休ませるための休憩所には、水場と休憩所、それと癒しの種と薬草の種を混ぜて蒔き、馬達の体力回復の場所を作った。
残っているのは、一般の宿屋と、お金持ちが泊まる宿泊施設を作って居る所だ。当初の予定していたのは、街道整備に温泉街、それとトンネル工事で、もし時間が許すのであれば、御山の登山道整備とスキー場の整備である。なので、一応後は建物が出来れば、完成となる。
トンネルの通行料は無料にして、多くの人が行き来出来る様にして、宿泊施設で回収する予定にしている。市場以外の施設は、領主の経営とする事にしている。
当初はマイナスからのスタートである。
今、鼠達とモグラ達は、街道整備が終わった為、セントドラゴン山の、頂上までの登山道の整備に掛かっている。
此の登山道の整備が終わったら、宿泊施設の建設を開始する予定にしている。
今後は、スキー場の整備だけになってしまいそうだ。
「今日は工事の進捗状況の確認と、みんなの食事が終わったら、ドラゴンさんに会いに行って来ようと思って居ます。帰りが遅くなっても心配しないで下さい。それと、私を待たずに皆さんお休みください。」と、ケイト様やコランさん、ケリー君に告げて屋敷を出た。
全ての工事の進捗と確認を行った後、ドラゴンさんが眠る、セントドラゴン山の地下をクロと一緒に目指した。
ドラゴンさんの元に着くと、動物の長老達も集まって居た。
「ドラゴンさん、お久しぶりです。漸くご報告が出来そうになったので、お伺いさせて頂きました。
長老の皆さんには、いつも助けて頂いてありがとうございます。所で今日は皆さまお揃いで、何か有ったのですか?」
「いや、グレンがドラゴンを訪ねると聞いたから、皆で此処に集まっていたんじゃよ。」
「そうだったのですね。それでは改めて、ドラゴンさん遅くなってすいません。動物達の力をお借りして、漸くここまで、工事が進みました。もう暫く掛かりますが、此の御山に人が訪れる事が出来る様になります。待って居て下さいね。」
「あい、分かった。が、もう少し早く来てもいいんじゃないか? 寂しかったぞ。」
「すいません。此れからは気を付けますね。」
「だが、ここ数か月で、良く此処まで作り上げたもんだな。」
「はい、動物達の皆さんが、協力してくれたおかげです。ありがとうございます。これは少しですが、皆さんで召し上がって下さい。」と、食事を出して行った。
そして、色々な事を話しながら、みんなと楽しい時間を過ごした。
食事も終わり、夜が明けようとしていた頃、長老達みんなはそれぞれの場所に戻って行った。
「ではドラゴンさん、又参ります。」
「ああ、次は、もう少し早く来てくれよ。」
「分かりました。努力致します。それでは。」と、クロとドラゴンさんの所を後にした。
そのまま屋敷に帰ると、厩の部屋に入り、クロと一緒に仮眠を取った。
ゆっくり休んで、目が覚めるとコランさんが、心配そうに僕の顔をのぞき込んで居た。
「どうしたんですか?」
「いや、中々お帰りにならないので、お部屋を見に行ったら、一匹の鼠がここに案内してくれたんです。」
「そうだったんですね。心配をかけてしまい、すいませんでした。」
「いえ、大丈夫です。それより、お食事はどうされますか?」
「頂きます。」
「此方に運びましょうか?」
「いえ、屋敷に戻ります。」
「分かりました。ご準備してお待ち致します。」
「すいません。直ぐに参ります。」
暫くクロや馬達と話した後、身支度を整え、食堂に向かった。
食堂では、ケイト様御夫妻、ケリー君とコランさん親子が待って居てくれた。
みなさんと食事をした後、お茶を飲みながら、経過報告を聞いた。
工事及び、従業員の教育は順調なようで、温泉街の建物は内装工事が始まって居た。
トンネル内の建物も、もうすぐ内装工事が始まるらしい。
市場の方も落ち着いているが、一件だけ、完全に領民の信用を無くした店主が居り、仕入れた全ての食材を、買取りでこの屋敷に毎日持ち込んで居るらしかった。
只、口を開けば、僕の悪口を言い続けて居るらしく、この様な輩は何するか分からないから、用心をするように、ケイト様から言われた。
「分かりました。用心しておきます。」
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