第3話
その後クロが近くに村があるけど言って見るかい?と言ってくれたので、連れて行って貰う事にした。
その村に着くと、市場が有った。其処を見て回り、干し肉や干し魚、ソーセージに野菜それに、パンに果物やチーズ等が沢山買えた。みんなが見て居ない所で収納し、先程頂いた銀貨で買い物をして回った。お金はこの村に入る前に銀貨三枚をポケットの中に出して置いたんだ。
銀貨二枚分で結構買えたな。そう思いながら、雑貨屋さんを覗き、お皿と水壷にナイフとお鍋それとスプーンとフォーク、火付け木を三束買って買い物終了。この時雑貨屋のおじさんに頼んで、水壷に水を詰めて貰って置いた。
村を出てくると、クロの案内で、そのまま森の奥に向かって歩くと、洞窟が有り、今夜は其処で休む事にした。
枯れ木を集め、火を点けると凄く落ち着いた。お鍋に野菜と干し魚とソーセージ少々を入れてスープを作り、クロには干し肉とソーセージの残りを食べさせた。鼠にはパンとチーズを出して置いた。
ところが、今夜は昨日と違う鼠が家族?を沢山連れて来た。
「鼠さん、みんな家族?」
「イヤ、仲間だ。グレンの事を話したら、みんな付いて来てしまったんだ。すまない。」
「構わないよ。ただ、こんなに来ると思って居なかったから、足りないかも知れないけどいいかなぁ?」
「一口ずつでいいんだ。ゴメン貰っていいかなぁ」
「じゃあ、パンとチーズと果物、これをみんなで食べて。スープは食べないよね?」
「ありがとう。残って居るなら食べさせて。」
食事の後みんなが喋り始めて大変だった。それで、名前をつける事にした。
鼠は数が多いので、申し訳ないけど番号にして貰った。それでも、一番~五十三番までになった。それでもみんな嬉しそうだ。
僕は、そのまま寝てしまった。翌朝起きるとクロ以外、鼠達は種を拾い集めるとみんな居なくなっていた。
暫く此処で、こんな生活をして過ごしていた。
♢ ♢
その頃この領地でもさらに辺境の村で、農作業を済ませ、若者が牛を引いて帰る途中、崖崩れに会い、牛と牛を引いていた若者も怪我をしてしまった。若者は軽傷で済んだが、牛は太ももに怪我と、脚を挫いたのか立つ事が出来なくなっていた。
此の若者は、家で稼ぎ頭の牛を諦めきれず、薬草は無いか探し回りながら、色々な草を集めて食べさせたり、傷口に刷り込ませたりしていた、その草の中に不思議と牛が好んで食べる草が有った。
その草は今迄見た事の無い物だった。
そして暫くすると、牛の傷が塞がり立ち上がると歩き出した。
若者は試しに自分もその草を食べて見た、これが美味かった。そして若者の傷もいつの間にか治ってしまった。
その後成年は其処に生えていた十数本の薬草を持ち帰り、雑炊の中に入れ家族皆にも食べさせたのだ。
そうすると、今迄寝たきりになっていた爺ちゃん婆ちゃん、それに爺ちゃん達の介護と畑仕事で疲れ果て、農作業を休み気味の父親や母親が元気になり、寝たきりだった爺ちゃん達はいつの間にか立ち上がり歩き出すと、畑や家の仕事が出来る様になって居た。
そして、若者は薬草の事を村中に教えて回ると、この薬草の事がこの辺境伯の村々に瞬く間に広がり病人が劇的に減ったのだった。
一方何も知らない御主人様は、往診の依頼が減った事で、今迄往診に裂いていた時間を領主としての仕事に回す事が出来るようになり、奥様とデートする時間が出来たのだ。
そして、領民は病が治った事で、薬代も不要になり、労働に従事する時間が増えた結果、領民の収入が増え、この辺境伯領の税の増収に繋がって居たのだ。
今の所この薬草はこの辺境伯の領地にしか生えていないみたいだ。
この厩や庭にも鳥が落とした種から薬草が生え、猫や馬、モグラ、鼠などが美味しそうに食べていた。
そんな事になっているなど、知らない僕は、市場が開くのを待って食料や僕の服の着替え等の買い物を済ませると、村を出てクロに乗り、さらに森の中を進んで行った。
僕は鼠達やクロと穏やかな毎日を過ごして居た。一緒にクロに乗っていた鼠が、
「そうだ、グレンこの森の奥の洞窟に、温泉が湧いているよ。入って行くかい。」
「この世界にも温泉が有るんだ。入っていいのかい?」
「多分、誰の物でもないから、構わないと思うよ。」
「そうか、それなら是非入りたいよ。」
「僕は、あの匂いが苦手なんだ。洞窟の入口まででいいかい?」
「構わないよ。それより無理言ってゴメンね。」
そう言うと、クロは温泉が湧く洞窟の入口までぼくを運んでくれた。
鼠と僕は、洞窟の中に入って行き、手を浸けて見ると少し熱いが入るには丁度いい温度だった。
直ぐに服を脱ぐと鍋でお湯を数回すくって被り中に浸かった。
「気持ちいい。この世界で風呂に浸かれるなんて。それも温泉に。何て贅沢何だろう。」
温泉を思う存分に堪能し、洞窟の外に出ると、クロが突然、
「グレン、早く僕に乗って。」
クロに言われた通りに、鼠と背中に乗ると、その場から急いで立ち去り、森の陰に隠れた。
僕達に静かに此処に隠れている様に告げると、クロは何処かに消えて行った。
暫く隠れていると、何処からか、馬車が二台護衛も付けずに現れた。
その二台の馬車から降りて来た、二人の内の一人に見覚えがあった。その人は、数日前に森の中で助けたソラン辺境伯様の護衛だったはず。見間違いだろうか?
その二人は此処が森の奥で誰も居ないと思ったからか、声を潜める事もなく話始めた。
「リバー、どういう事なんだ、ケイト卿はこの数日内に、死ぬんじゃなかったのか?」
「そうだ確かに彼は死ぬはずだ。バーム伯爵に頂いた毒薬を、数日前まで彼の薬に少しづつ入れ私が飲ませていた。その毒は確かに効いている。その証拠に食事も摂れなくなり、後は、死を待つばかりだ。」
「それならどうしてまだ死なない?」
「分からない。食事もできない体になって一週間たって居るが、まだ死にそうにない。」
「デイトス伯爵が何か飲ませているのではないか? 直ぐに調べなさい。それと、娘ジェシーの事はどうなっている、先日のソラン辺境伯一家の襲撃は失敗に終わったそみたいだな。 君は最初成功したと言っていたんだぞ。それがどうだ、私がデイトス卿を訪ねて見るとみんなピンピンしているじゃないか。まさか襲撃したと私に嘘をついたんじゃないだろうな。」
「そんな、嘘をついたりしていません。確かに私は、暗殺を依頼した襲撃者の奴等に
ソラン辺境伯一家を皆殺しして来た。と報告を受けたんだ。」
「分かった、では、奴等が襲撃に失敗したと信じてやろう。とにかく、私はジェシーに可愛い娘スージーを殺されたんだ。あの娘を同じ目に遭わせなければ、わたしの気持ちは収まらん。」
「私だってそうだ、本来ならばジェシーを妻に迎えケイト辺境伯に代わり領主になった後、ジェシーを暗殺する予定だったのだ、ジェシーを妻に迎えるための根回しを、ソラン辺境伯夫妻にしていた。というのに、それを横からしゃしゃり出て来たデイトスに計画をすべて邪魔されたんだぞ。」
「そう思うのなら早くあの親子と息子を、五人共殺してしまいなさい。」
「「バーム卿…⁉ いつこちらに?」」
「良い報告が、中々来ないので、ソラン辺境伯のお見舞いに来たついでに、立ち寄ってみたのだ。終わった事を言っても仕方がない。次の計画を速やかに立てるのです。」
「はい。仰せのままに。」
「其処の洞窟でミスリル鉱石が見つかって、もう五年が経つのですよ。何時になったら採掘計画は実行出来るのです。この山がどれだけの金貨を産むと思って居るのですか?」
「分って居ます。もう暫くお待ちください。」
「ではリバー、君に追加の薬を渡して置きます。もう失敗は許されませんよ。」
「はい、今度こそ上手くやります。」
「ドロミテ卿には三人の暗殺者を預けて置きます。馬車の前に待たせている。」
「「ありがとうございます。」」
「次は、良い報告を持って来て下さい。では帰ります。」
「はい。お気を付けてお帰り下さい。」
バーム卿と呼ばれていた男は二人に見送られ、先に帰ったようだ。
「バーム卿は恐ろしいお方だ。目的を果たすためなら、手段は選ばないからな。」
「そうだな。では我々も誰かに見られる前に解散しよう。」
と、彼等は帰って行った。
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