第2話
収納していたパン半分とオレンジジュースで食事を済ますと、早々に寝た、暫くして目が覚めると、其処には鼠二匹が壁の隙間から入って来ていた。
眺めていると、僕が落とした小さいパン屑を拾い交互に食べてた。
僕は、起き上がると、パンをちぎって二匹の鼠の前に食べていいよ。と置くと、鼠達はそのパンを何処かに運んで行ってしまった。
その後ぼくは直ぐに眠ってしまい、目が覚めると、まだ薄暗いが、夜が明け始めていた。
「さあ~て、今日は何処まで行こうかな。」
行く当ても、お金もないが、とりあえず、昨日リリアさんから頂いた食料があるうちに、生活が出来る様にしなくてはならない。
そう思いながら、小屋から出たら、鼠達が沢山居たので驚いて、思わず大声を出しそうになった。
「昨夜はありがとうございました。おかげで元気になりました。」と、どこからか小さな声が聞こえて来た。
思わず辺りを見回したが、だれも居ない。気のせい?と思っていると、
「君こっちだよ。」と、また聞こえた。
「え…‼ 今の声って鼠さんたち?」
「「そうだよ。」」
「後は死ぬだけだと思っておりましたが、貴方に頂いたパンのお陰で生き返りました。」
「鼠さん…⁉」
「そうです。私はこの鼠達の長老をさせて頂いています。」
「何で、喋っているの⁉ 普段は喋れるのに喋れないふりをしているの?」
「まさか、人間の言葉が喋れるはずないですよ。」
「でも今、みんな喋っているよね。それじゃあ、僕に聞こえているのは何なの、幻聴…⁈」
「違うよ、落ち着いて。多分だけど、これは君が私達に自分の食事を分けてくれたから、話せるようになったんだよ。君が持っている癒しの魔法スキルで。」
「そんな、僕が知らない動物と話せる魔法スキル? ん…⁉ やっぱりこの世界に魔法って有ったんだ。」
「そうだね。でも僕や仲間達の間でも知る限り、この世界で、この力を持っている人間はいなかったはずなんだ。」
「それに、人間から、こんな優しい魔力を感じたことも無かった。私達の言葉は、君にしか聞こえないと思う。」と、鼠は言った。
「そうなの。それじゃぁ、過去にそう言う経験をした事がある動物を知ってるの?」
「俺達も今迄経験した事無かったけど。僕達動物の間に伝わる数百年も前からの伝説には今と同じ話が有るんだ。」
「そんな伝説が有ったんだ…⁉」
「ただの言い伝えだと思っていたから、俺達もかなりビックリしている。」
「その伝説の魔法スキルの事を、ご先祖さま達はアニマルコミュニケーションと呼んでいたそうだよ。」
「そうなんだ。何かとても長い名前だね。」
「そうだね、舌を噛みそうだよ。」と鼠が言うと、みんなが笑った。
「それともう一つ言い伝えがあるんだ。この力を持った人間は癒しの種を生み出す。と言われているんだ。所で、君の名前を教えて貰ってもいいだろうか?」
「ゴメン、ビックリして居て、教えてなかったね。僕の名前はグレンだよ。それと癒しの種って、どういう事なんだい。」
「君の名前はグレンだね。分かった。それと僕はこれがその言い伝えの種なんじゃないか?と思ったんだけどね。」と、鼠は、小さな米粒の半分位の物を持ち上げてみせてくれた。
「それが癒しの種なの?」
「グレン小屋の中に落ちている此の種貰っていい?」
「構わないけど、その種をどうするんだい?」
「秘密さ」
「分かった。此処で芽を出されても困るだろうから。それじゃあ、僕は此れから住む所を捜さないといけないから、旅を始めるよ。」
鼠達は、そこら辺に落ちている種を口に詰め込み、何処かに持って行って居た。
「それじゃあ、儂らも暫く姿を隠します。」そう言うと、鼠達はどこかに消えていった。
僕はそのまま森に入って一日歩いて行くと、小さな洞窟が見つかった。小川が流れているらしく、水の音も聞こえる。
鼠君にあげた残りのパンと、バナナ一本とジュースで食事を済ますと眠りについた。
翌朝目覚めると、昨日の鼠が訪ねて来た。
「人間に襲われて怪我を負った仲間がいるんだ。助けてくれないか。」
「分かった?何処に向かえばいいんだ?」
「少し遠いけど、案内するから、このクロに乗って。」と大きな犬が、僕の前に伏せて居てくれていた。
「分かった。では乗せて貰うよ。」
僕と鼠が乗ると、クロは立ち上がり走り出した。
「グレン、振り落とされないように、しっかりと捕まって居てね。」
「分かった。君は僕の服の中に入っているといいよ。」
「ありがとう。助かるよ。」
クロに乗って二十分位経っただろうか、かなり遠くに来た気がする。すると、突然少し開けた場所に出た。其処には、貴族の馬車が。野盗に襲われたのだろう。
馬六頭と護衛数人、それに馬車の中に、三人が折り重なるように倒れていた。
「遅かったか?」そう思ったが、近寄って見ると、みんな襲われ動けないよだが、死んでは居なかた。
まだ間に合うかも知れない。でもどうすればいいんだ。そう思い、まず馬車の中で折り重なった三人に両手を当て、額を当て傷が治るように祈りながら癒してみた。
すると彼等を包み込むように、身体全体が淡い光に包まれ、光が収まると傷が治り身体が動くようになって行った。
次に護衛と馬達を次々にさっきと同じように癒して回った。
何とかみんなを無事に癒す事が出来、命を取り留める事が出来た。
「良かった、みんな助かって良かったよ。」と鼠は馬達の顔に飛びつくと、鼻の上を通って、頭の上に乗り飛び跳ねながら、馬達と喜び合っていた。
一方の貴族と護衛達は夢でも見ていた?と言う顔をしていたが、漸く落ち着いたようだった。
「君が私達を助けてくれたんだね。ありがとう。お礼を申し上げる。」
と皆さんが頭を下げてくれた。
「私は、この領地を治める、デイトス・ソランと申します。」
「妻のジェシー・ソランと申します。」
「僕は、デイトス・ソランの長男でケンタ・ソランと申します」
「皆さまご紹介ありがとうございます。私はグレンと申します。」
「そうですか。グレン君ですね。此処から一日程東に行った、私が治める辺境伯領を 訪れた時には、ぜひ我が家にお立ち寄りください。お待ちしています。恥ずかしいが、野盗に襲われ持ち合わせが此れだけしか有りません。少ないが、お礼に受け取っては貰えないだろうか?」と布袋を差し出された。
「では、遠慮なく頂きます。ありがとうございます。」
「では、又会える日を楽しみしています。」
と言うと、みんなは帰って行った。
僕は今頂いた布袋を開いて見ると、其処には、金貨十枚と銀貨十枚が入っていた。
金貨はこの世界でどの位の価値が有るんだろう?と思って居ると。
みんなが立ち去るまで、僕を此処に連れて来てくれた、鼠とクロは大人しくしていたが、
「「グレン、仲間達を助けてくれてありがとう。」」と喜んでくれた。
「所で、クロには、何も食べ物は上げて居ないのだけど、言葉が分る様になっている。鼠君何故か分かるかい?」
「恐らくグレンが、背中に乗っている時、クロを癒してあげていたんじゃないのかなぁ。」
「そうだよ。ずっと癒してくれていたから、あんなに速く此処まで来れたんだよ。」
「そうだったんだね。気づかなかったよ。」
そんな風に話していると、何処から集まったのか、大量の鼠達と鳥達が集まり、其処に落ちている、癒しの種を拾い何処かに持って行ってしまった。
それじゃあ、僕も少し拾って持って置こう。とさっき頂いた金貨、銀貨が入った布袋の中に鼠達が取りこぼした種を拾い集めて、一緒に入れて収納した。
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