第6話 ラスト・ブロードキャスト

 翌日。旧資料室は、封鎖された。

 けれど、放送室はまだある。マイクも、ちゃんとある。

 だから澪奈は、放課後、ひとり静かに放送室へ入り、ICレコーダーの録音ボタンを押した。

「こちら、放送部の“ミオナノート”です。今日は、少し特別なお話をします。

 過去と未来、どちらにも属さない、とある“声”の物語を。」


 静かな校舎に、澪奈の声が、そっと響いた。


「名前も知られず、記録にも残らない。

 そんな“誰か”の想いが、この空間のどこかに微かに残っていたとしたら……

 あなたは、それを――聞き取ることができますか?」


 ——私は、白取澪奈。

 図書委員で、放送部の二年生。

 未来の“私”から、記録を受け取りました。


 ——そして今、ここに、私の声で、記録します。


 ——これは、消えゆく記憶への、ささやかな反抗。


「……いつか、未来で、またあなたに会えますように。」

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