ニート、遺跡探索をする

四方に並んだ扉のうち、目的のひとつ――遺跡に繋がる扉の前に立つ。

俺は一度深呼吸をしてから、それを開けた。


 


「やっぱ、ここは綺麗だよな……」


見渡す限り、自然と調和した古代遺跡。

崩れかけた柱や苔むした石畳が、陽の光に照らされて美しく輝いている。

不気味な森の向こうにある異世界とは思えない、平穏な風景だった。


俺は慎重に足を進め、前回来た“出口らしき場所”――

遺跡の最奥、青白いバリアの張られた場所までやってきた。


「確か……前は素通りして、結界で出られなかったんだよな」

「今回は《鍵》がある。もしかしたら……」


ポケットから、あの黒いメカニカルな《鍵》を取り出し、バリアにかざす。

しかし、何も変化はない。


「……ダメか。そう簡単にはいかねーよなぁ……」


しょんぼりしながら鍵を戻し、仕方なく遺跡の別方向を探索することにした。


 


* * *


 


石畳の道を進んでいくと、開けた広場に出た。

そこには……巨大な石像。いや、動いていた。


「……え?」


石でできた巨人。まるで某RPGに出てくるゴーレムそのままだ。

目にあたる部分が赤く光り、軋む音を立てながらこちらを向いてくる。


「えっ、まって、こっち来んな!?」


ゴーレムは突然、ダッシュしてきた。

足音はドスンドスンと地響きを立て、明らかに敵意を持っている。


「ヤバイヤバイヤバイ!」


俺は慌てて《超ウルトラDX刀》を構え、柄のボタンを押す!


――『REBUILD』


まばゆい光と共に、変身が始まる。

例の特撮ヒーロー的なスーツが体を包み、装着完了。


『REBUILD SYSTEM ACTIVE』


「よし、来いゴーレム! 俺の新装備の力、見せてや――」


……避けられた。


「ちょっ、まっ、当たらん!?」


振った刀が空を切る。次の一撃も、その次も。

動きが遅い。いや、俺の運動センスが絶望的にない。


「え、俺こんな運動センスなかったっけ!? いやなかったけど!!」


ゴーレムは、こちらの動きを冷静に観察していたようで、

俺の《盾》が前方しか守れないと理解した瞬間、背後に回り――


ドゴォッ!!


「ぐはっ……!?」


衝撃と共に、視界が真っ白に弾ける。


「っあ……やば、これ、もしかして……」


何発も背中に叩き込まれ、変身が強制解除された。


 


《REBUILD SYSTEM…SHUTDOWN》


 


「……うそ、だろ……?」


スーツが消え、ただのニートに戻った俺。

目の前には、今まさに拳を振り上げようとするゴーレムがいた。


 


「詰んだ、かも……」


 


額に汗がにじむ中――

俺は必死で次の手を探していた。

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