第12話 オーク討伐 ①

俺たちは、馬車を借りて目的地へ向かっている。


徒歩なら7日、馬車なら2日で到着する。


今回は緊急依頼でもあり、被害の拡大を防ぐために


費用はかかるが、馬車を使う事にしたのだ。


依頼のあった村まで行き、被害状況とオークの情報を得てから


クエストに向かう予定にしている。



昨日、道具屋で閃光玉を4つ買い、


スサーナからは、剣技の「飛撃」を教わった。


光の剣の刃を飛ばす技で、遠距離攻撃が可能。


今回の討伐に役に立つだろうと言われた。



道中、馬車の運転は俺とジャックとで交互に行い、


情報交換も兼ねて色々と会話を楽しんだ。


「ジャックさんとリリンさんは、パーティー組まれているんですよね」


「半年活動しているという事は、パーティ名ってあるんですか?」


「俺たち、碧空へきくうの風という名前で活動しています」


「カッコイイですね!」


「ショウさんたちは?」


「まだ無いので、これから案をだして決めようと思ってます」



「魔熊を倒した凄いパーティーですから、


名前を決めたらすぐ広まってしまうんだろうなぁ!」


「そうかなぁ?」


「そうですよ!」



「俺たちまだ、ルードラ王国のギルドでしかクエストを実行していないけれど


他の王国などで、依頼を受けた事あります?」


「ありますよ」


「商業王国スウドラのギルドでも、スードラのギルドカードが使えるので、


 護衛のクエストを受けた事があります」


「報酬も良いですし、護衛した商人から気に入られれば、直接依頼もありますし


 お礼にと商品を提供してくれたり、安く譲ってもらえる場合もあります。


この剣とリリンの弓は、お礼として頂いたモノです。


 受注するのをオススメしますよ」



「ありがとう、良い事を聞けました」


「他の王国も行ってみたいですね、気分転換にもなりそうだし・・・・」



「あっ、オススメの宿と食堂教えて下さい」


「スウドラなら、巨人の足跡という宿と、子羊の酔い処という食堂が良いですね」


「ありがとう、メモしておこう」


俺は忘れないように、急いでメモをとった。


冒険者となったのだし、観光を兼ねて色んな王国や町を巡るのも、


これからの楽しみとなる。



「リリンさん、その服装可愛いですー、どこで買ったのですか?」


「私、裁縫すきで、これ私が自分で作ったんですよ」


「わたし不器用だから、作れそうにないなぁ・・・・」


「わぁ、凄いなぁ・・・良いなぁ・・・」


「あとで作ってあげますよ」


「フフフ、マリーは可愛いから、私が作った服着せて


 一緒に遊びにでも行きたいな」


「遊びに行きましょう!約束ですよ!」



荷台ではマリーとリリンが、お互いの服装の話をしたり、


髪の手入れの話などしているようである。


とても会話が弾んでいるようで、二人とも笑顔が見られた。


お互い異性同士のパーティーなの為、普段話せない同性同士の共通の話題を、


ここぞとばかり話しているようだ。



福太郎は、リリンの肩に停まって、ご機嫌に歌っている。


「リーリン、可愛い♪俺の嫁♪・・・」


「可愛い可愛い、俺の嫁♪」


そう聞こえるが、俺は無視しておいた。


マリーが聞いたら、さぞかし寂しがるぞ、まったく。



夜は馬を休ませて、馬車の中で寝る。


見晴らしの良い場所で、火をともしながら、俺たちは身体を休ませる。



見張りは夜目が効き適任でもある、フクロウの福太郎にお願いしておいた。


「福太郎さん、あの・・・見張りをお願いしたいのですが・・・」


「リリンのキスをもらえるなら、してやってもいい・・・」


「ちょっと相談してきますね・・・」



「リリンさん、ご相談がありまして」


「福太郎に夜の見張り頼んでみたら、リリンからキスしてもらえるなら、やる」


と言っているんですが、お願いできたりしますか?」


「リリンさんの事を、好きになってしまったらしいです・・・」



ジャックとリリンは、俺の頼みを不思議そうに眺めていた。


「えっホーホー言ってましたけど、福太郎と会話できるんですか?」


「まっ・・・まあね、俺前世、フクロウだったからかな?」


「記憶ないけれど、話せるんだよね・・・・」


おもわず、口から出まかせを言った。



納得したかどうかはしらないが、話せるという証拠を見せる事にした。


「福太郎は今、リリンの肩に乗っているけれど、マリーに移ってもらうように


 頼んでみるよ」


みんなに先に伝えてから、お願いしてみた。



「リリンからマリーに移ってくれ」


「面倒だけど、まぁ移ってやる」


と移ってくれた。



その瞬間、「おーーーすごい!」とみんなから拍手がおこった。


たしかにホーホーとお互い話していて


「たしかに会話しているみたいです」


ジャックとリリンは凄いねと、感嘆された。



「実はですね・・・・」


マリーが自信満々に、俺の翻訳のスキルの事を語ろうとしたので、慌てて


両手で、マリーの口を塞いだ。


「何でも無いよなー、なー、マリー」


コクコクとマリーがうなずく。


「そんな訳で、俺フクロウにだけ話せるんですよ」


「す、凄いですね」


多少、不思議がられたが、乗り切った。



小声でこっそりマリーに話した。


「まだ、正式なパーティーメンバーになっていないから、


 翻訳の件は話さない」


「今はまだ秘密、分かった」


「分かった・・・」


マリーには、今は秘密で仲良くなれば、俺から話すつもりだという事を


言っておくべきだった・・・・



俺は・・・普通に日本語を話しているんだが、


第三者から見ると、フクロウ語を話しているらしい。


ほんと、翻訳のスキルは便利だ。



本題に戻り、再度リリンにお願いできるかどうか確認したら、


そんなに好いてくれるなら、いくらでも!と


リリンは嬉しそうに福太郎へ3回ほど情熱的なキスした。


福太郎が、その間、羽をピクピクさせていたのが印象的だった・・・


「任せろ、リリンは俺が守る」と舞い上がり、張り切っていた。



キスをしていたときのジャックが福太郎を


親の仇のような、鋭い眼光でギラッと睨んでいたのを俺は見てしまった。


左の手のひらに、右手をグリグリしている・・・・


イラついているが分かる。


いつも笑顔の清い青年だが、鬼の表情をしていた。


「俺だって、まだしていないのに・・・クソ」


ボソって言っていたのを俺だけ聞いた。



俺は肩を数回叩き、あれはあくまでペットだから・・・


ジャックはカッコイイし、リリンが好きじゃなきゃ、


半年も2人でパーティーなんて続けられないさと励ましておいた。



福太郎の見張りのおかげで、俺たちはゆっくり眠る事が出来た。


何も起こらず平和な朝を迎える事が出来たのだ。


その後、福太郎はリリンの膝の上で就寝。


ジャックの睨む視線が、恐かった・・・・


馬車で移動をしつつ、1時間くらいたった時にゴブリンの集団にでくわした。



俺は指示出しを行った。


「マリーは運転席で待機、状況に応じて、防衛と回復をお願い」


「はい!」


「おれは馬車前方で防衛、ジャックは後方で防衛」


「リリンは、馬車の荷台から矢で攻撃」


「各自、頼んだ」


「はい!」


「はい!」



馬を倒されてしまっては、目的にたどりつけない。


そして・・・馬車の賠償金を払わなければならない。


今回のクエストの討伐報酬が、無になり逆にマイナスだ。



ゴブリンに馬車を壊されないように、守りながら応戦していく、


そんな中「ザッ」「ザッ」と風を切るすさまじい音がする。


リリンが、弓を放っているのだ。


ゴブリンに当たるや、矢の勢いに合わせて、なぎ倒れていく。


精密射撃はとても優れており、相手の顔や心臓めがけて的確にヒットさせていく。


速さだけではない、威力もあるのだ。


ゴブリンの数は8匹、感覚として8秒に1匹づつ仕留めていく様は、


凄みを感じさせた。


気づくと、ほぼすべてゴブリンは倒れていた。


ほとんどリリンが1人で倒したといっても、良いほどだった。



あんな細い腕なのに???と思わず思うほどのあまりにも、


豪速で重い矢を放っていた。


エルフは筋力があるのかもしれない。


初めてのアーチャーと出会い、弓矢の特徴、有用性にも驚いた。


俺に弓矢は扱えるんだろうか・・・・この時興味が少しだけ沸いた。



ゴブリンを全滅させた後の、


風に金色の髪をなびかせながら遠くに目を向けている彼女。


より一層美人に見えたが、同時に非情な冷たさを感じさせた。


相手を射抜く事に躊躇をしていれば、自分や仲間は死んでしまう。


彼女が優秀なアーチャーだというのが、大いに理解できた。


今回の討伐には、彼女が成功の立役者になるのだろう。



そのあと午後1時には、依頼主がいる村に着いた。


村長に歓迎され、詳しく話を聞く事にした。


「村人が、薬草を取りにソロイ森に入った所、オークがおり、後を付けたところ


洞穴に5匹おったと報告があった」


「なにより、森はここから歩いて30分の所にある、


このままでは、この村を襲撃されかねない、急いで討伐をお願いしたい」



ハイオークがいたかは、見かけた村人が慌てていたので


確証は得られなかった。


ここから30分の所なので、馬車をこの村において、


村人に案内してもらう事になった。



馬車で向かう途中偶然出くわし、馬車を壊されたら賠償にも、帰るにも困る。


騒々しくなり、オークに発見されバレるのも問題だ。


出来れば、ふいうちを仕掛け、安全に優位に戦闘し倒したい。



村長宅で、村長同伴のもと


俺が昨日買ってきた閃光玉をそれぞれ各1つづつ渡して、作戦の最終確認を行った。


村長も、その作戦なら大丈夫そうだと、安心しているようだった。


俺たちはこれから、討伐目的でもあるオークのいる洞穴に向かう事にした。

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