第2話 特別な招待状

タイトル:占い師(イル・カルトマンテ)


第1章 - フォルトゥーナ


【第2話】 特別な招待状


【あらすじ】

サーカスの招待券を配る若者たち。ロレンツォは謎めいた少女から「特別な」チケットを受け取る。その出会いが運命の歯車を回し始める。


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彼らは、大学の長く退屈な授業が終わったあと、いつも通りふざけ合っていた。あの三人──高校時代からの旧友だった。

前日もそうだった。町に宣伝に来ていた若いサーカス団員たちに声をかけられていた。

サーカスが街に来たのは前日のことだった。ロレンツォの住んでいるアパートは、その仮設会場のすぐ向かいにあった。

彼は、トラクターで引き上げられる大きなテントが設営される様子を眺めていた。テントを支えるためのコンクリートの重り、行き交う作業員たち、チケット売り場の組み立て、周囲に並ぶトラックたち──まるでアメリカの開拓時代、敵の襲撃に備えて車を円形に並べていた時代を思わせる風景だった。

その日、サーカスの若者たちが翌日曜の招待券を配っていた。赤と黒と金のブロケード衣装に身を包んだ彼らは、舞台でもそのまま使われるであろう衣装だった。若者二人に少女一人、皆十八歳にも満たないように見えた。

「明日のお芝居、見に来てくれませんか?」と一人の少年がマルティーナにチケットを差し出した。

「私、サーカスあまり好きじゃないの」と彼女は正直に答え、しかめっ面をした。「ピエロが怖いの。」

「僕の父はピエロだよ」と少年は即答した。「赤い鼻に、青いジャケット、大きな赤い蝶ネクタイ。とても優しくて、誰も怖がらせたりしないよ。」

「そりゃそうでしょ。自分の父親だもの」とマルティーナが返した。

「本当だよ。ずっと一緒に暮らしてるし、母さんもときどきあの格好するし。具合が悪いときは代わってる。君が言ってるのは映画のピエロのことでしょ? でも僕らはサーカス。全然違うよ」と少年は肩をすくめた。「で? 来てくれる?」

マルティーナは微笑み、小さなカラフルな紙片を受け取った。「いいわよ」とため息まじりに答えた。「行ってあげる。」

マリオはもう一人の少年からチケットを受け取った。「行くよ。決まりだな」と言ってからロレンツォの方を見て言った。「家で集合な、ロレンツォ。」

「え、うち? 何でさ? まあ確かに近いけど…」

「その方が都合がいいだろ? 軽く何か食べてから行こうぜ。劇場の真ん前に住んでる友達って、便利だよな」

ロレンツォは軽く肩をすくめた。「いいよ、別に」そう言って自分のチケットをもらおうとしたところで、あの少女が近づいてきた。彼女と目が合った。

栗色の髪が肩にかかるほどで、ややウェーブがかかっていた。目は澄んだ空色で、鼻には細く小さなリングが二つ──その繊細な金属が、彼女の顔立ちをいっそう引き立てていた。

「私のをどうぞ」と彼女はそっと言った。

さらに一歩近づき、チケットを手渡した。

「これは特別なの」と彼女は続けた。「あなたの友達が持っているものとは違うの。」

ロレンツォは彼女の目を見つめながらチケットを受け取った。

「明日、来てくれる?」と彼女が訊いた。「あなたの未来を知ることができるわ。もしかしたら、来てくれたら、私の力にもなるかも」その声は優しく、旋律のようで、甘く、どこか催眠的だった。ほんの数語だったが、それだけで彼は惹き込まれていた。

「このチケットは他とは違うの。特別なのよ」と彼女はもう一度言った。

ロレンツォはうなずいた。「行くよ」と答えた。目は彼女から離れなかった。

「約束して?」

「約束する」と彼はもう一度うなずいた。

「楽しみにしてるわ」と彼女は囁いた。


---


(続く)

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