占い師(イル・カルトマンテ)
@fantapietro
第1話 運命の赤い幕
タイトル:占い師(イル・カルトマンテ)
第1章 - フォルトゥーナ
【第1話】 運命の赤い幕
【あらすじ】
サーカスの赤いテントに集う人々。ロレンツォと友人たちが、運命の出会いを予感しながら会場に足を踏み入れる。
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テントは濃い赤色で、ところどころ時間に晒されて色褪せ、シミが残っていた。まさに未来をタロットカードで占う人物、正確には「アヌビスの強き友」と自称する偉大なるセスが構えるサーカスのテントにふさわしい佇まいだった。いかにも、という感じだった。だがサーカスとはそういうものだ。
テントの入り口には、外から内部が見えないように厚手の赤いカーテンが垂れていた。その内側には、扇形に広がった小さな空間があり、そこで占い師が休息を取ったり、彼の若き助手が身を潜めたりしていた。彼女は、訪問者の運命を知りたいという欲望をより深く刺激するため、香油の香りで雰囲気を作り出す役割を担っていた。たとえ“アヌビスの強き友”といえども、偉大なるセスも時に疲れを覚えるのだ。
テントの前には赤いカーペットが敷かれ、その下には木のステップが隠されていた。まるで好奇心旺盛な者たちを、運命の予言という儀式へと誘うかのように、数メートル先までそのカーペットは続いていた。
右手には、赤いエナメル塗料で汚されたレンガに突き刺さった支柱があり、その内部には電源コードが通っていた。それが繋がるのは、光る案内板──色とりどりの文字が流れ、「偉大なるセス、占い師は未来を予言します」と書かれていた。今占い中か、または次の来訪者が入ってよいかを示すことで、おおよその待ち時間を知らせる仕組みになっている。
時代が変わったとはいえ、未来を知りたいと願う人は後を絶たなかった。愛に、仕事に、幸運に──何かを求める者たち。だからセスのテントの前には、たいてい二、三人ほどの列ができていた。“忍耐こそ、より良き未来への鍵”と書かれた看板が、テントの周囲に控えめに掲げられていた。
ロレンツォとその友人たちがサーカスのチケット売り場を通り、回転式ゲートをくぐったとき、すでに一人の女性が、案内板の光を待ちながら静かに立っていた。四十歳ほど、赤毛で濃い赤の口紅を引いていたが、少し滲んでいたことから急いで化粧を済ませたのがわかった。彼女の服はクリーム色だった。
「やっぱり来てしまったな。」ロレンツォはテントに近づき、友人たちに言った。
「恋かしら〜」と、マルティーナがからかうように言った。
「未来を知りたいだけさ…」ロレンツォは照れ隠しに言った。
「未来という名の女の子の名前、知りたいだけでしょ?」マリオがすかさずツッコミを入れた。「さっきどう見てたか、バレバレだぞ。」
「俺は未来の話をしてるんだ。」ロレンツォは肩をすくめて軽くため息をついたが、否定しなかった。「ここは占い師のテントだ。未来の話をする場所だ。君たちには分からないかもしれないが…」そう言って頭を軽く振り、ぼんやりとした口調で付け加えた。「今の世の中は不確かすぎるんだよ。」
「でもさ、あのチケットをくれた女の子は、十分に“確か”だったけどね」とマルティーナは笑い出した。
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(続く)
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