31話「再会の灯火」
静まり返った大地に、ようやく陽が差し始めていた。
闇が消え、空に色が戻る。
風が優しく吹いて、草の香りがふわりと広がった。
「……生きて、る……?」
ユウヤが、そっとまぶたを開けた。
光の粒が空を漂い、遠くで誰かの声がした。
「ユウヤ……おい、しっかりしろ」
それは千年の声だった。
少し乱れた呼吸を整えながら、隣に立っている。
キラも同じく、少しほこりをかぶりながらも無事な姿でそこにいた。
「……勝った、のか……?」
ユウヤの問いに、キラがうなずく。
「ああ。ノクトは、完全に消滅した。
俺たちの“誓い”が、奴の闇を打ち破ったんだ」
「智くんの声が……最後に、僕を動かしてくれた」
ユウヤの手のひらに、まだうっすらと金粉が残っていた。
それをそっと見つめながら、彼はつぶやいた。
「でも……もう、会えないのかな……」
そのとき――
「ユウヤーっ!!」
遠くから走ってくる足音。
そして――
「智くん……!」
光の中から駆けてきたのは、
あのとき別れたはずの智くんの姿だった。
「ほんとに……ほんとに、無事でよかった……!」
ユウヤは、もう何も言えなかった。
ただその姿を見て、涙がこぼれた。
智くんがそっと抱きしめたとき、
ユウヤは確かに感じた――
“心”が通い合うということを。
「ありがとう、ユウヤ」
「ありがとう、千年」
「ありがとう、キラ」
そこに、ふわりと跳ねる白い影。
「にゃあ!」
しろちゃんが、駆け寄ってくる。
「しろちゃん……」
「もう……全員、そろったね」
千年が小さく笑った。
キラも静かに頷いて、光の残る空を見上げる。
「これが……未来へ続く誓いの、“答え”だな」
ユウヤが、そっと手を空に伸ばした。
もう金粉は消えていたけれど、
そこには確かに――“光”があった。
そして世界は、再び動き始めた。
新しい時を、優しく刻みながら――
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