19話しろちゃん覚醒の時
不穏な気配が街を覆っていた。
空気がざわめき、空は黒く染まる。
スマホの画面に映るチトちゃんの姿が、ふっと消えた。
「チトちゃん!? 応答して!」
何度も呼びかける。けれど返事はない。
胸の奥が不安で脈打つ。
その時だった。
「……ミャッ。」
小さな鳴き声。
振り向くと、そこには――白い猫のしろちゃんがいた。
だけど、いつものしろちゃんじゃなかった。
目がゆっくりと蒼く光り出し、身体の一部がカシャッ、と変形を始める。
背中からは金属のパーツが展開され、足元にはエネルギーサークル。
「しろ……ちゃん……?」
鳴き声はもう、警戒と覚悟を帯びていた。
しろちゃんは僕の前に一歩出ると、ぐっと宙をにらんだ。
そして――
「ミャオオオオオオーーーン!!」
鋭い声とともに、機械仕掛けの爪が飛び出し、漆黒の空気を切り裂く!
チトちゃんの代わりに、僕を守るように。
チトちゃんの声が届かない今――
しろちゃんが、僕の前に立ってくれた。
その姿は、まるで――
月の使者。白銀の戦士。
「しろちゃん……君は、僕を守るために……!」
その小さな背中に
「――しろちゃん……?」
その瞬間だった。
静寂を切り裂くように、しろちゃんの体から淡い光が放たれた。白い毛並みが、月明かりのようにやさしく輝いている。
空へとふわりと浮かび上がるしろちゃん。
その背中には翼のように広がる光、そしてしっぽからこぼれ落ちる金粉が、夜空を染めるように舞い散っていった。
「チトちゃん、しろちゃん……空を……飛んでる……?」
智くんが見上げた先に、ふたりの姿が重なる。
チトちゃんもまた、光をまとうように宙へと舞い、しろちゃんの隣へと寄り添った。
「これは……ふたりの力……?」
金粉が風に乗り、智くんの周囲に降り注いだ。
その温もりは、傷だけでなく、心の痛みまで癒すようなぬくもりを運んできた。
「――ありがとう、ふたりとも。もう、大丈夫だよ」
そしてしろちゃんは、確かにその声に応えるように、空の中でにゃあと鳴いた。
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