あなたは犯人です。
天野 純一
第1話 あなたは犯人です。
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あなたは犯人です。
目の前には一つの死体が転がっています。つい先ほど、あなたはカッとなってパートナーを刺殺してしまいました。
何とかして警察を欺き、この場から逃げ出しましょう。
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あなたは半年前、突然思い立って
目の前の死体は、あなたが「ぷりぱる」で活動していた頃にマッチングした相手の一人だ。
あなたのプロフィール画像は個人を特定できないように加工している。でも万が一アカウントの開示請求をされたら……。本名も生年月日もバレる。一発アウトだ。
相手を殺してしまった今、登録情報を書き換えるのは逆に怪しまれる恐れがある。その辺の処理はあとで考えよう。
重要なのは今あなた自身が置かれている状況――。
ここまでの経緯を振り返る。
OSシネマズで映画を見た帰り、あなたは電車に揺られていた。やや混んでいたが、運良く空いた席に腰を下ろすことができた。
そのとき、先に隣に座っていた乗客のスマホ画面がちらと見えた。そこには見覚えのあるプロフィールが表示されていた。
あなたは二分ほど躊躇したが、思いきって声を掛けた。
「すみません、
相手は驚いたようだったが、静かに頷いた。
「ああ、覚えていますよ。画面越しにも素敵な方なのが伝わってきてました」
そう言いながら夏生が手を差しのべてきた。あなたは握手に応える。
あなたは「ぷりぱる」に登録した直後からしばらく大平夏生とチャットでやりとりをしていた。向こうもそれなりに気があるようだったが、結局実際に対面することは一度もなかった。
そして半年経った今、偶然電車で隣り合わせになった。あなたはそれに運命じみたものを感じた。夏生も同じだっただろう。
あなたは夏生の家までついていき、上がらせてもらった。
そのあとはしばらく歓談をして……それ以降のことはよく覚えていない。夏生の何気ない一言があなたの逆鱗に触れてしまったことだけ記憶している。
気づいたらあなたはキッチンから包丁を抜いて夏生の胸に突き刺していた。夏生は苦しみ喘ぎ、あなたは少し返り血を浴びてしまった。
刺してから事の重大さに気づいたあなたは、慌てて風呂場を探し、飛び込んだ。服を脱いで体についた血をシャワーで洗い流す。幸い返り血が目立つのは上着だけだったので、上着を脱いでそれ以外の服はもう一度着こんだ。
そしてもう一度被害者の元へと戻る。さっき刺した包丁は脇に放置されたまま。
あなたは懐からハンカチを取り出した。三年前にヤマダ電機が創業五〇周年を記念して配布していた社名刺繍入りハンカチ。全国店舗で無料配布していたから、このハンカチの繊維が警察に見つかっても個人特定には至らないはず。
そう考えたあなたはハンカチで包丁の柄を拭く。
――いや普通に持って帰ればいいか。
あなたは自分のバッグからポリ袋を取り出し、包丁を入れて封をした。こうすれば夏生の血液があなたの所持品に付着する心配はない。
ポリ袋をバッグにしまい、やらなければならないことを考える。第一は――指紋やDNA。
夏生の家に来てからの記憶は判然としない。家中の自分の指紋をすべて拭き取るのは困難かもしれない。ましてやDNAを含むものを全部掃除するなど……非現実的にも思える。
幸いなことにあなたには前科がないため、警察の指紋のデータベースには登録されていない。あなた自身はDNAを調べたことはないし、家族がDNA鑑定をしたといった話も聞いたことはない。
――どうしたものか。まぁやれるだけのことをやろう。
あなたは指紋がついていそうな場所を片っ端からハンカチで拭き取り、床に落ちた毛も徹底的に掃除することにした。ありえないような場所に残っていたら諦める他ない。あなたは腹をくくった。
そんな矢先、あるものの存在に気づいた。
夏生のスマホがポーチから顔を出している――。
あなたは指紋がつかないよう手にハンカチを被せ、スマホをつまみだした。
スマホはiPhoneのようだった。夏生の指をホームボタンに押しつけると、指紋認証でロックが解除できた。
夏生は複数のウィンドウを開いていたが、そのどれにもあなたの名前やあなたとの会話内容は含まれていない。どうやらあなたが家に来ている間は夏生はスマホを触らなかったらしい。
ここであなたは思考する。
選べるのは三つの選択肢。状況を推理して今のあなたにとっての最善の選択肢を選べ。
一つ目の運命の分かれ道だ。
①夏生のスマホから「ぷりぱる」をアンインストールしてから、元のポーチに戻しておく。
↓下記URLへ
https://kakuyomu.jp/users/kouyadoufu999/news/16818622173454159365
②夏生のスマホから「ぷりぱる」はアンインストールせず、そのまま元のポーチに戻しておく。
↓下記URLへ
https://kakuyomu.jp/works/16818792437393207240/episodes/16818792439906648962
③何も分からないし怖いので、潔く自首をする。(①や②を選択して隠蔽工作を始めてしまえば、以後自首をすることは不可能となる)
↓下記URLへ
https://kakuyomu.jp/users/kouyadoufu999/collections/16818792439931934226
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