第2話 二年生の時の文化祭
「青江先輩!私にお化粧を教えてください!」
「ううん。困ったなぁ。僕より同い年の女の子に聞いた方がいいよ」
学年が上がると新入生の赤井さんから相談を受けるようになった。
赤井さんは高校デビューがしたいらしい。
でも、そのままでも持ち味を生かして充分可愛い。
「私は!青江先輩みたいな顔になりたいんです!」
そう言ってもらえるのは嬉しい。
「少しだけなら」
ついそんな言葉が出てしまった。
そんなやりとりをしていると、村崎さんがこちらを見ていることに気が付いた。
会釈をすると、同じように会釈をされて彼女は教室に入って行った。
今日も可愛いな。村崎さん。
「村崎先輩も美人ですよね〜。あれだけ美人ならお化粧なんて必要ないでしょ」
「赤井さんも可愛いよ」
僕がそう言うと、赤井さんは微妙な顔をした。
「青江先輩、そういうのむやみやたらに言わない方がいいですよ」
「なんで?」
「これだもんなぁ。先輩本命の女子…と、一部の男子が可哀想〜」
「?」
頭にはてなを飛ばしながらも昼休憩が終わる五分前のチャイムが鳴った。
「それじゃあ、青江先輩!またあとで!」
赤井さんは慌ただしくそう言うと、急いで一年生の教室へと戻って行った。
そうすると男子が群がる。
「いいよな〜!青江は!化粧しているだけで赤井ちゃんと喋れて!一年で一番可愛い女子だぞ!」
「じゃあ、君達もすれば?」
一斉に首を横に振られる。
「俺達じゃ無理だよ。青江くらいじゃないと」
くらいじゃないとなんだ。
僕の顔がどれだけの努力で出来上がっているのか知っているのか。
村崎さんを見る。
二年になってからは同じクラスになった。
村崎さん、今日も可愛いな。
そう思いながら見ていると、絡んでいた男子が騒ぎ出した。
「なんだなんだ!青江まで村崎狙いかよ!可愛いコンビで付け入る隙がねぇからやめてくれよ!」
「そんなんじゃないよ、ただ可愛いなぁって」
僕がへらりと笑うと一斉に頷かれた。
「わかる。村崎って可愛いよな」
「可愛いのにクールなんだよな」
「そのギャップがまた萌える〜」
わいわい話をしているのを聞きながら、視線はまた村崎さんを見詰めていた。
ちらりと村崎さんがこちらを向いて目が合った。
どきりとしたのは気のせいだ。
「ほら、チャイム鳴るよ」
促すと、ぞろぞろと解散し始めた。
「次、なんだっけ?」
「数学だろ?小テストあるけど大丈夫か?」
「まじで!?俺もうしんだ……」
騒ぎながら各々の席に着くと、先生がチャイムと同時に入室してきて淡々と小テストの紙が配られる。
僕も正直数学は得意じゃない。
村崎さんは得意そうだな。
なんか理系っぽい。
いや、外見で決めつけちゃダメだ。僕!
とりあえず今はこの小テストをやっつけよう!
僕は頭を捻りながらも予習していたおかげでなんとか全問埋めることが出来た。
放課後になり掃除の時間になると、女子が一人でゴミ捨てに行こうとしているのを制して僕が引き受けた。
「ゴミ捨て行ってくるね」
なんて教室のみんなには言って持ち上げたけれどゴミ袋は重かった。
やっぱり誰かと一緒に来ればよかったかなあ。
なんて、後悔しても遅い。
えっちらおっちら運んでいると、ようやくゴミ捨て場が見えた。
ゴミを捨てると結構な時間が経っていた。
中庭を突っ切って走って戻ろうかな。
そう思って走ろうとしていたら村崎さんがそこにいた。
相変わらず可愛いな、なんて思っていると視線に気付いたのか目が合った。
「青江くん、だっけ?」
まさか村崎さんから話しかけるなんて!
「うん、そうだよ。村崎さん」
「私のこと、知ってるんだ」
「そりゃあ有名人だもん」
「まあ、顔だけでね。それに青江くんとは去年猫の世話してるのバレた仲だし」
会話をしながらも胸はどきどきしている。
女子と話す機会なんてたくさんあったのに、村崎さん相手にはなんでこんなにどきどきするんだろう。
「青江くんはさ、なんでお化粧なんてしてるの?めんどくない?」
以前も聞かれた疑問。
「可愛いものが好きだから」
村崎さんの問いにきっぱりと答える。
そうだ。それだけは間違いない。
「ふぅん」
村崎さんは軽く返事をすると、興味無さげに呟いた。
「人間なんて薄皮一枚、綺麗な人もそうでない人も最後は骨になって土に還るのに」
「そんなことない!可愛いは重要だよ!」
僕が力説すると、村崎さんはニヤっと笑った。
「そうだね、大事なのはここだよ」
そう言って胸を指差し不敵に笑う村崎さんは格好良かった。
とすりと胸に何かが刺さった気がして、僕は村崎さんの表面しか見てこなかったことを痛感した。
村崎さんは可愛いだけじゃない、格好いい!
村崎さんへの何とも言えない感情を持て余したまま季節が進み、初夏。
文化祭の季節がやってきた。
「私は青江くんのコスメ講座がいいと思います!」
1人の女子の発言をきっかけに、僕のコスメ講座がクラスの出し物になった。
「僕がやっていいの?」
尋ねると、みんな好意的だった。
「他にやることないしなー。なら青江のコスメ講座なら流行りそう」
「青江くん、校内でも人気だしね」
なんて、騒ぎながら女子はどのコスメが気になるとか男子は女子生徒の衣装の話なんてしている。
僕を置いてけぼりに始まった企画だけれど、やるからには全力でやろう。
来たお客さんをみんな可愛くしよう。
そう心に決めた。
文化祭費ではテスターを購入することになった。
「青江くんがやるんだし、青江くんのやりたいコスメ買ってきてよ」
「分かった!」
どんなコスメがいいかな。
万人向け、ちょっと挑戦した感じ、初心者向け…考えれば考えるほど悩ましい。
予算を考えると絞り込まなきゃいけない。
「青江くん一人だと心配だし、村崎さんも着いて行ってあげなよ」
その言葉にどきりとした。
僕の心がみんなに知られているかと思った。
「いいよ」
村崎さんは二つ返事で了承して僕に向かった。
「よろしくね」
「う、うん…」
買い出し当日はとても楽しみで前日から服とコスメの選定で忙しかった。
でも、とても楽しかった。
村崎さんはまだかなと待ち合わせ場所で待っていると、通行人から心無い言葉が聞こえた。
「見て、男の子なのにお化粧している」
「今風だなぁ」
「恥ずかしくないのかしら?」
「男の子なのにねぇ」
少し俯く。
慣れた言葉なのに、今日は聞きたくなかった。
村崎さんに会う日なのに。
しばらくすると男の人が騒いでいるのが聞こえてきて振り向いてみると村崎さんがいた。
「村崎さん!」
「青江くん、お待たせ」
学校でも私服の村崎さんを見ているけど、今日は学外だからかよりドキドキしてきた。
さっきまでの誹謗中傷は村崎さんの可愛さで上書きされた。
今日は二人きりなんだ…。
そう思うと手に汗が垂れてきた。
ショップに行くと、あれこれ僕が話すのを村崎さんが生返事って感じだ。
「ごめん、興味がなくて」
「いいよ。気になるのがあったら教えて」
そうだ。コスメに興味がない子に興味を持ってもらうのもいいかもしれない。
そう思いながらあれこれ物色をしていると、薄紫色のリップを見付けた。
このリップ、村崎さんに似合いそうだな。そう思ったら手に取っていた。
「買うの?」
「うん」
文化祭費とは別に購入したリップを、村崎さんが離れている間にプレゼント用に包装してもらった。
「結構買ったね」
「持たせちゃってごめんね」
「いいよ、これくらい。私、文化祭の出し物手伝えそうにもないし」
ショップから出て休憩として喫茶店に入った。
村崎さんはコーヒーを飲んでいて、オレンジジュースを飲んでいる自分が恥ずかしくなる。
「村崎さんって大人だよね」
「そう?」
そう言ってコーヒーを飲む姿も可愛くて格好いい。
「あのさ、これ…」
村崎さんに似合うと思ったリップを差し出す。
「なにこれ?」
「村崎さんへのプレゼント。もちろん自費だよ!」
「なんで?」
村崎さんは不可解そうだ。
「僕がこれを付けた村崎さんを見たいだけだから」
「ふうん」
そう言いながら手に取ってくれる。
「貰えるなら貰っておく。ありがと」
そう言ってまた微笑むのだ。
だけど、村崎さんがそのリップを付けてくれることは学園祭の準備期間中一度もなかった。
文化祭当日、鏡の前で村崎さんは仏頂面だ。
「なんで私が呼び込みなんて…」
「客引きは可愛い子がいいんだって!」
「他にもいるじゃん」
「村崎レベルになると比較するのも烏滸がましい」
なんて、わいわいしながら女子が騒いでいる。
「あの、そろそろいいかな」
「あ、うん。ごめんねー。青江くん。それじゃ村崎。青江くんに今以上に可愛くしてもらいな!」
そう言ってクラスの準備を始めた。
「それじゃあ始めるよ」
「ちょっと待って。付けるならこれにして」
差し出されたのは僕が贈ったリップだった。
「え…」
「私に似合うんでしょ?」
不敵な笑みは格好いい。
「うん!最高に可愛くて格好良くしてみせるよ!」
ゆっくり、丁寧に、優しく。
村崎さんが僕の手で可愛くなっていくことにどきどきした。
まずはベースから順に作っていく。
柔らかい肌。長い睫毛。さらさらの髪。
すべて可愛い。可愛いの権化じゃないんだろうか。
何もしていなくても充分可愛いけれど、僕の力でもっと可愛くしてみせる!
一人で燃え上がって至福の時間を過ごす。
最後はあのリップ。
そっと塗って出来上がり。
「出来たよ」
村崎さんが閉じていた瞳を開ける。
手鏡を覗き込んで一言。
「ふぅん」
「村崎さん、どうかな?」
「可愛いね、このリップ」
そう言って笑ってくれるだけでもう昇天しそうだった。
「悪くないんじゃない?」
村崎さんは少し満足気だ。
「こうしてみると、お化粧も悪くないんじゃない?まあ、私は面倒くさくてしたくないけど」
「可愛いよ、村崎さん」
きっと彼女には何百回も何千回も言われているであろう言葉。それでも言わずにはいられない。
「うん。ありがとう。青江くんのおかげだね」
ふわりと微笑まれてキュン死寸前。
「初めてお化粧したな…。やってくれたのが青江くんで良かった」
これは僕にとってこの上ない賛辞だ。
「村崎さんが可愛いからだよ」
「そんなことないよ。青江くん。将来はメイクアップアーティストになれば?きっと人気出るよ」
それは青天の霹靂だった。
僕は、可愛いものが好きで僕自身も可愛くなりたかった。
だからメイクをした。
可愛いものが好きで可愛くなりたかっただけの僕が、他の誰かを可愛くする。
考えたこともなかった。
「うん!そうなれたら素敵だね!」
素直にそう思えた。
ふふふと笑い合う僕達にクラスメイトが声を掛ける。
「おうい、お二人さん。そろそろ文化祭が始まるから準備してくれよ」
「はーい」
「分かった」
そうして文化祭は幕を上げた。
最初のお客様は赤井さんだった。
とびきり可愛くしてあげると、自慢してくると走って回って行った。
村崎さんと赤井さんの効果で客入りは上々だ。
けれど、親以上の世代の目は厳しい。
「見て、あの男の子。お化粧なんてしている」
「いくら綾部高校が自由といってもなぁ」
「多様性、ねぇ」
萎んでくる心を村崎さんが背中を叩いて励ました。
「自信を持ちな。あんたは可愛い」
村崎さんは、可愛くて、格好いい。
僕は可愛いだけを求めているけれど、村崎さんはそうじゃない。
可愛いだけじゃなくて内面が格好いい。
いいな。すごいな。
僕は少し涙目になって村崎さんを慌てさせてしまった。
文化祭の交代タイム。
コスメ講座の先生は他の女子と交代になった。
この子もかなり詳しくて、僕が教わることも多々あった。
村崎さんは一人でふらりと出掛けようとしていたので思わず引き留めた。
「村崎さん!もしよかったら二人で回らない?」
どきどき、どきどきしながら返答を待つ。
「別にいいけど」
あっさりと村崎さんからの了承は出た。
「どっか行きたいとことかある?」
「洋裁部のドレスとか、サイエンス部の自作のコスメを作っている人の作品に興味があるんだ」
「いいよ。じゃあ行こうか」
手が触れ合うかどうかの距離で僕等は並んで歩き出した。
時折話して、無言で、でも心地よくて、僕はやっぱり村崎さんはすごいと思った。
最初に訪れたのは洋裁部だった。
ドレスは生地も厳選されていてフリルやレースがふんだんに使われているものからシックな派手さはないながらも上等だとわかるジャケットまであった。
ここの洋裁部、なかなか出来る!
じっくり見て洋裁部の人と話をしている間も村崎さんは興味無さ気にうろうろと流し見ていた。
あ、あのドレス。村崎さんに似合いそうなのにな。
そう思っていたら洋裁部の人もそう思ったみたいで村崎さんに試着を進めていた。
僕も見たくて擁護した。
村崎さんは嫌そうにしていたけれど、僕達の熱意が通じたのかようやくドレスを着てくれた。
「こういうのは、私より可愛い子がするもんだよ」
「村崎さんより可愛い子なんて早々いないよ」
ドレスを着た村崎さんはドレスに負けないくらい輝いていた。
なんて可愛いんだろう。
うっとりとする僕に対して村崎さんはどこまでも冷めた感情だ。
「もう脱いでいい?」
「ええ!ありがとう!作ってみたはいいんだけど、やっぱり着てくれる人がいるのは嬉しいわね!」
その言葉にハッとした。
僕も、僕のメイクで可愛くなってくれる人がいてくれて嬉しかった。
……メイクアップアーティスト…。
村崎さんの言葉が思い出される。
なれたら素敵だな。
なりたいな。
そう思ったらすとんと自分の夢が降ってきた。
うん。僕はメイクの学校に行って他の子も可愛くしたい。
村崎さんはすごい。
何気ない言葉で僕の進路を決めてくれた。
可愛いものが好きなだけの僕に色々与えてくれた。
この感情も、村崎さんが与えてくれたものだ。
大切にしたいな。
「次は何だけっけ?サイエンス部の自作のコスメ?」
「えっ、あ、うん!行こう!」
いつの間にかドレスを脱いだ村崎さんが尋ねてきた。
並んでサイエンス部に行く途中で喫茶店をやっているクラスに入って軽食を食べた。
「美味しいね」
「そうだね。原価高そう」
「村崎さんは現実的だなぁ」
「コーヒーも美味しい。豆から淹れてるやつだ、これ」
しげしげとコーヒーを見詰める村崎さんは満足気だ。
僕は相変わらずのオレンジジュース。
そこかしこから僕達の話が聞こえる。
「見て、二人とも可愛い」
「二年の村崎さんと青江くんだよ」
「お化粧上手いね〜!そういえば、青江くんのクラスってコスメ講座なんだっけ?あとで行ってみようよ」
わいわいと騒がしい中で聞こえる評判。
「青江くん、人気者じゃん」
ニヤリと村崎さんから揶揄われる。
「村崎さんが可愛いからだよ」
僕が慌てて言うと、村崎さんが蠱惑的に微笑んだ。
「青江くんのコスメの力だよ」
村崎さんはずるい。
僕の心を掴んで離さない。
僕は真っ赤になりながらオレンジジュースを啜った。
サイエンス部のコスメは素人が作ったにしてはとてもよく出来ていて、僕もアイシャドウを試させてもらった。
「どうかな?」
「うん。可愛いよ」
鏡の中の僕も確かに可愛い。
でも、村崎さんにそう言ってもらえたから余計に可愛く思える。
「あの、青江くんだよね?コスメのことで色々と話を聞いてみたいんだけど…」
サイエンス部の子にそう尋ねられて僕はちらりと村崎さんを見た。
村崎さんが頷いてくれたので、僕はサイエンス部の子とコスメのことで話し込んだ。
村崎さんがどんな表情で僕らを見守っていてくれているのか知らぬまま交代の時間がやってきた。
「あっという間だったね」
「そうだね。青江くんが誘ってくれてよかったよ。私じゃ行きそうもないところに行けて面白かった」
村崎さんが微笑んでいる。
「そんな!僕が行きたいところに行っちゃっただけで、村崎さんが行きたいところはなかったの?本当に大丈夫?」
「大丈夫。このまま交代だね。あと少し、文化祭を楽しもう」
村崎さんの言葉に僕は大きく頷いた。
「うん!僕の力で他の子を可愛くしてみせるよ!」
「…なんか、朝とやる気が段違いだね」
「村崎さんのおかげだよ」
メイクアップアーティスト。
僕の新しい夢。
その一歩が今から始まる。
戻って最初のお客様は男の子だった。
「どんなふうになりたい?」
尋ねると、困り気味に答えられた。
「実は、赤井さんに勧められて青江先輩みたいになりたいんですけどどうしたらいいのかどうしたら僕に似合うようになるのか分からなくて…」
不安そうな子に僕は胸を張る。
「任せて!僕が最高に可愛くしてみせるよ!」
その言葉の通り、丁寧に仕上げてその男の子を可愛くしてあげた。
うん。満足な出来。
男の子は手鏡を持って自分の顔を見ると、目を見開いた。
「これが僕…」
「うん。どうかな」
「すごいです…。僕が僕じゃないみたい!ありがとうございます!青江先輩!」
僕は照れながら細かく説明した。
特にスキンケアを頑張ることを勧めた。
朝晩二回の洗顔や化粧水は肌に丁寧に押し込むようにすることをアドバイスして、その子は僕が使ったスキンケアや化粧品を必死にメモると何度も頭を下げて帰って行った。
「よかったじゃん。喜んでくれて」
「村崎さん。うん!村崎さんのおかげだよ!」
僕がにへらと笑うと村崎さんは怪訝そうな顔をした。
「私、なんかした?」
「僕にメイクアップアーティストになればって言ってくれたこと。おかげで僕に夢が出来た。みんなを可愛くさせたいって思えた。村崎さんのおかげだよ」
僕の満面の笑みに村崎さんは少し頬を赤くして頬を掻いた。
「そんなの、青江くんのメイクの力が凄いからじゃん」
「ううん。僕じゃ思いつかなかった。僕は僕のことばかり。僕が可愛いことばかりを追い掛けていた。だからありがとう」
そう言って頭を下げると村崎さんは方の力を抜いて僕に笑い返した。
「どういたしまして」
お互いに笑い合って二年の文化祭は終了した。
来場者と在校生の投票で僕達のクラスが一位になった。
「青江くんのおかげだね」
「村崎さんの呼び込みのおかげだよ」
そう言い合っていると後ろから赤井さんに呼ばれた。
「私だって青江先輩のメイクの自慢しまくりましたー!」
「うん。ありがとう」
嬉しいなぁ。
僕のメイクで喜んでくれる人がいるなんて。
「おうい。中庭で花火やるってよー」
呼ばれて三人で中庭に向かった。
夜空に咲く花火の下、お化粧をしている人も、していない人も、それぞれの輝きを放っていた。
きらきらと、自由に、美しく。
誰もが素敵に見えた、そんな特別な日だった。
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