平凡ときどき非平凡

@sorakumoniji_2

第1話 最初の思い出

幼い頃に住んでいた集合住宅。

棟と棟の間には芝生があって、水はけのための溝があった。

よちよち歩きの私は、あるとき転んでその溝に頭から突っ込んだらしい。

「気付いたら頭が溝にはまって、逆さまになってバタバタさせてるんだもの!覚えてる?」と母と父は度々話しては大笑いし、楽しい思い出のように語るけれど…幸い水はなかったとのことだけれど、よく考えたら危ないでしょう?大けがしなくて良かったよね?といつも思う。そして、覚えてません。


私本人のいちばん古い思い出は、6歳のときの幼稚園のプール。

胸に小さな花が刺繍された赤い水着で、空のマヨネーズ容器を水鉄砲代わりにして遊んでいたときのこと。

その3月で退職された先生が遊びにきてくれて、私と向かい合って遊んでいた友だちの背後にそっと寄ってきた。

目が合って声を出そうとした私に、人差し指を立てて「しーっ」とジェスチャー。そして、友だちに目隠しをして「だーれだ?」

その後は、先生に抱きつく友だち、大声をあげて寄ってくる大勢の友だちたちで大騒ぎ。


そしてポツンと取り残される私。


先生と一瞬だけの秘密の共有、それはとても嬉しかったけれど。

その後うまく輪に入れずにみんなが騒ぐ様子を後ろから見ていた。

私が目隠しをされた側だったらあの輪の中にいたのだろうな、と思いながら1人でバシャバシャ水を蹴っていた…そんな思い出。


思い出の始まりにしては、なかなかにほろ苦い。







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