『俺達のグレートなキャンプ71 現代に蘇った千利休をゴージャスな珈琲でもてなせ』

海山純平

第71話 現代に蘇った千利休をゴージャスな珈琲でもてなせ

俺達のグレートなキャンプ71 現代に蘇った千利休をゴージャスな珈琲でもてなせ


第一章 グレートな発案

「よっしゃあああああ!今回のキャンプも最高にグレートにいくぞおおおお!」

石川の雄叫びが朝の静かなキャンプ場に響き渡った。隣のテントから「うるせえええ!」という怒声が飛んできたが、石川は全く気にしていない。

「で、今回はどんな突飛なことを考えてるんですか?」

千葉が期待に満ちた目で石川を見つめる。一方、富山は既に頭を抱えていた。

「ふふふ…今回のテーマはズバリ!『現代に蘇った千利休をゴージャスな珈琲でもてなす』だ!」

「「え?」」

千葉と富山の声がハモった。

「ちょっと待って、石川!千利休って戦国時代の茶人でしょ?それに千利休なら抹茶じゃないの?なんで珈琲?」

富山が慌てたように言うと、石川は胸を張って答えた。

「そこがグレートなポイントなんだよ、富山!現代に蘇った千利休だからこそ、現代の最高級珈琲でもてなすのさ!きっと千利休も『わび・さび』の精神で珈琲の奥深さを理解してくれるはずだ!」

「いや、でも千利休ってどうやって…」

「大丈夫!俺が千利休役をやる!」

石川が自信満々に宣言すると、富山の顔が青ざめた。

「ちょっと、ちょっと待って!あなたが千利休?」

「そうだ!俺は今日から千利休だ!『利休、現代に蘇る』的な感じで!」

第二章 準備は念入りに

石川は早速、持参した巨大なダンボール箱から様々な道具を取り出し始めた。

「まずは最高級のエスプレッソマシン!これは家から持ってきた!」

「重かったでしょうに…」千葉が呆れる。

「そして!サイフォン式珈琲メーカー!ドリップ用の高級ミル!フレンチプレス!」

次々と出てくる珈琲器具の山。富山は頭痛を覚えた。

「石川、これキャンプよね?野外よね?電源どうするの?」

「心配するな!ポータブル発電機も持参済み!」

「「うわあああああ」」

さらに石川は白い着物らしきものを取り出した。

「これが千利休の衣装だ!」

「それ浴衣じゃない?しかも女物っぽい…」

「細かいことは気にするな、富山!大事なのは心だ、心!」

千葉は相変わらず目をキラキラさせている。

「すごいですね、石川さん!で、僕たちはどんな役なんですか?」

「千葉は弟子役!富山は…そうだな、現代からのお客様役でどうだ?」

「私はお客様でいいわ…」富山が諦めたように呟いた。

第三章 千利休、降臨

昼過ぎ、石川は浴衣(千利休の衣装)に着替えて現れた。頭には何故か鳥の羽根を挿している。

「拙者、千利休なり!現代に蘇りたるぞ!」

「なんで語尾が『なり』なの?それに羽根は何?」

富山のツッコミを無視して、石川改め千利休は堂々と宣言した。

「現代の珈琲道を極めんとす!まずは最高級のブルーマウンテンから始めようぞ!」

千葉が感動している。

「すごい!本当に千利休みたいです!」

「千葉くん、あなたの目は大丈夫?」

富山の心配をよそに、石川千利休はエスプレッソマシンの前に陣取った。

「さあ、現代の茶の湯、もとい珈琲の湯を始めるぞ!」

ゴゴゴゴゴ…

エスプレッソマシンが唸りを上げる。その音が静かなキャンプ場に響き渡った。

「うるさい!」「何やってんだあいつら!」「朝から騒音公害だ!」

周りのキャンパーたちからブーイングが飛ぶ。

「あ、あの、石川さん!周りの人たちが…」

千葉が慌てるが、石川千利休は意に介さない。

「芸術に理解のない者どもよ!現代の珈琲道の神髄を見せてやろうぞ!」

第四章 珈琲道、開眼

石川千利休は次々と異なる方法で珈琲を淹れ始めた。

「まずはエスプレッソ!現代の技術と古の心を融合させた一杯なり!」

プシューーーー!

濃厚なエスプレッソが小さなカップに注がれる。

「次はサイフォン!この泡立つ様こそ、まさに現代の茶の湯!」

ボコボコボコ…

サイフォンが泡立ち、珈琲の香りが辺りに漂う。

「そして極めつけはドリップ!一滴一滴に魂を込めて…」

石川千利休が真剣な表情でお湯を注ぐ。その姿は確かに茶道の作法のようにも見える。

「おお…なんか本当に千利休っぽく見えてきた」

千葉が感動していると、富山も少しずつ興味を示し始めた。

「まあ、確かに動作は綺麗ね…でも相変わらず浴衣は変よ」

第五章 究極のおもてなし

「さあ、現代に蘇った千利休による究極の珈琲道!ご賞味あれ!」

石川千利休が恭しく珈琲を差し出す。

千葉が恐る恐る口をつけた。

「あ…美味しい!すごく美味しいです!」

「本当に?」富山も試してみる。「あら、確かに美味しいわね」

「当然である!拙者の心を込めた一杯、不味いわけがない!」

すると、隣のテントの中年男性がやってきた。

「あの、さっきは騒音で迷惑だって言ったんですが…その珈琲、良い香りですね」

「おお!理解ある方がいらしたか!」

石川千利休が急に明るくなる。

「よろしければ一杯いかがですか?千利休特製の現代珈琲道をご堪能ください!」

「え、でも…」

「遠慮は無用!これぞ真のおもてなしの心!」

第六章 巻き込まれる人々

気がつくと、石川千利休の周りには多くのキャンパーが集まっていた。

「この豆はどこのですか?」

「この淹れ方、教えてもらえませんか?」

「私も茶道やってるんですが、なるほどこういう応用があるんですね」

石川千利休は得意満面だった。

「皆の者よ!これが現代の茶の湯、珈琲道の神髄ぞ!心を込めて淹れれば、必ず美味しくなるのだ!」

「すげー!」「美味い!」「また来てください!」

賞賛の声が飛び交う。

千葉は目を輝かせている。

「石川さん、大成功ですね!」

富山も苦笑いしながら言った。

「まさか本当に成功するなんて…あなたって時々すごいのよね」

「当然である!拙者の珈琲道に不可能はない!」

第七章 新たな伝説

夕方になると、石川千利休の珈琲道は完全にキャンプ場の名物となっていた。

「千利休さーん!今度はカプチーノ教えてください!」

「フラペチーノの作り方も知りたいです!」

「写真撮らせてください!」

石川千利休は忙しく立ち回っている。

「皆の者、落ち着くのだ!珈琲道は心を静めて味わうものぞ!」

千葉が感激している。

「すごいです、石川さん!みんな笑顔になってます!これぞ『どんなキャンプも一緒にやれば楽しくなる』ですね!」

富山も認めざるを得なかった。

「確かに…変な企画だったけど、結果的にはキャンプ場全体が盛り上がったわね」

エピローグ グレートな記憶

夜、焚き火を囲みながら三人は振り返った。

「今日は最高にグレートなキャンプだったな!」

石川は満足そうだ(まだ浴衣を着ている)。

「でも明日は普通のキャンプにしましょうよ?」

富山の提案に、石川は悪戯っぽく微笑んだ。

「実は明日のテーマも決まってるんだ…『現代に蘇った宮本武蔵とバーベキュー勝負』!」

「「ええええええ!」」

千葉と富山の絶叫が夜のキャンプ場に響いた。

しかし、三人の心の中には、今日という特別な一日の温かい記憶がしっかりと刻まれていた。

そして石川の新たな珈琲道伝説は、このキャンプ場で語り継がれることになるのだった。

「俺達のグレートなキャンプ、まだまだ続くぞ〜!」

石川の声と共に、星空の下で焚き火がパチパチと音を立てていた。


【完】

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『俺達のグレートなキャンプ71 現代に蘇った千利休をゴージャスな珈琲でもてなせ』 海山純平 @umiyama117

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