第13話 轟く雷鳴
使う魔物は、コウモリ5匹(150ポイント)と、ゴブリン25匹(500)、ミニゴーレム2体(600)。
そしてスライム生成器から生み出したスライム30体。
生成器から生み出された魔物は階層のポイント制限にカウントされないようなのだ。
故に、他の階層からも少しずつ集めてきて、30体。
これは時間が経つほど増える。後はゴブリン生成器も買った。つまりゴブリンも今日から10匹ずつ増えていく。
さらにゴブリン数匹に今まで死んだ冒険者から得た装備を与えた。
代わりにおれのポイントは残り500を切ったが……。
これぞ物量。戦いは数なのだ!
幸いなことに、その日あの女はもう来ず、ダンジョンの改修は無事終わった。
そして翌日の早朝。またあの女が来た。
やはり早朝が活動時間らしい。鬱陶しいことこの上ない。
おれは眠い目を擦りながら、モニターを見た。
女は丁度、3階層の中盤だった。この前の続きというわけだ。
おれは水を飲みながらそれを鑑賞する。コーヒーでもあれば良いんだがな。コーヒーは1杯500ポイントだった。ちなみにお茶は100ポイント。
カフェインは中々取れそうにない。
と、その時、女に矢の罠が四方から飛んだ。3階層の罠の山場だ。
これまで結構な数の罠を回避してきた女だが、さすがにこれは回避しきれなかったらしい。
女は2つを剣で弾き、1つを避けた。しかし残り1つが……当たる!
女の右太ももに矢が直撃した。おれはおっ、と思わず声を出した。
しかし矢は刺さらず、弾かれた。
「は…?」
矢は刺さらなかった。しかし傷はつけたようだった。当たった場所から、血が出ていた。
矢が刺さらない?
見た目は柔らかそうな太ももだが、カチカチなのだろうか。
女はそのカチカチの太ももに何やら液体をかけていた。恐らく回復ポーションだろうと思われる。何度か他の冒険者が使っているのを見たことがあるのだ。
しかしそんなには見たことがないので、結構貴重なのだと思う。軽度の傷なら使わない冒険者がほとんどだからな。
そう考えると、それなりの傷を与えたと考えていいのかもしれないが。
……うーむ。
そのまま3階層も突破され、ついに4階層に女が来た。前人未到、初のお客さんだ。
女はまっすぐ、目の前の道を進み始めた。良いチョイスだ。まっすぐから進む道は入り組んでいる。つまり、時間がかかる。魔物を集める時間が稼げる。
おれは通信できる25メートルギリギリにいるコウモリに、魔物を真ん中の道に集めるよう指示を出した。次いで、他のコウモリ達にも指示を出していく。
一度に集めると、できるのかは知らないが、気配を察知したとかでバレる可能性がある。故に一番近くはあえて少なく囲う。
そうすれば彼女が気配を察知したとしても、この程度なら対処可能だと油断してくれるかもしれないからだ。
そして囮の魔物達の後ろに大量の魔物を集める。今は大体4階層の半分くらいの魔物が集まったか。
もう少し。せめて7割は集めたい。
女が突破してしまわないか焦る。が、このペースなら間に合う。
まだだ。もう少し。よし、良いぞ。もっとゆっくり進め。
そしてついに魔物が集まった。
「よし。行け!」
おれの指示が25メートル外周ギリギリにいたコウモリ達に伝わり、そしてそのコウモリ達から次のコウモリへ。
ついには魔物達の近くにいるコウモリに伝播して伝わり、そしてそのコウモリがくるくると時計回りに回る。
そして集まった魔物達が一斉に突撃し始めた。
よし! 成功だ!
魔物達が一斉に近づいてくると、女はすかさず雷の魔法を撃ち、数を減らしにかかる。
しかし最前列の魔物を倒したところで、後ろから物凄い数の魔物が迫ってきていることに気づいた。
一瞬驚いた後、すぐに逃げ場を探すが、全方向同じ様子だ。
女は焦ったような顔を浮かべて、元来た道から来ている魔物の方に突撃した。
剣を振るい、無理矢理抜けようとするが、ミニゴーレムに殴られ、弾き飛ばされる。
「かはっ…! ゲホ、ゲホ……」
剣が転がり、女は地面にお尻をつけた状態で、憎たらしいものを見るように迫り来る魔物を睨みつけた。
息を整え、目を瞑り、次の瞬間、バチバチと辺りに雷が弾け出す。
その時一番前にいたゴブリンの槍が女の身体に刺さった。
その瞬間、物凄い轟音と光が迸り、映像が砂嵐になった。カメラが壊れたらしい。
「何だ…?」
急いで無事なカメラを確かめるも、場所が遠いため、もちろんそこには何も映っていない。
いや。砂煙が女のいた場所に繋がる通路から来ているか…?
ほんのうっすり、砂煙が来ているような気がしたが、分からない。
何かの魔法か? 自爆?
いや、まだカメラなどが設置できない。ポイントも入っていない。なら女が生きているのは間違いない。
おれは急いで遠くにいたため無事だったコウモリとゴブリンを向かわせた。
女が生きている場合は、無事だったカメラの前にいるコウモリが時計回りに回るようにした。
さて。どうだ…?
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