第12話 一点集中!
どうやらミディアムヘアのあの女は、新人冒険者ちゃん達と別れ、帰ったらしい。
そこら辺の会話は聞き取れなかったが、あんな早朝に来たわけだから、眠かったのだろう。
それか何かしら準備をしているか。
早朝限定の強さということも考えられるか? 考えたくないな。その場合毎朝起こされることになる。
そんなことを考えていると、一階広間にいた冒険者達がヒソヒソと話し始めた。
こいつら最近はいつもここに屯っているのだ。情報収集とか、ダンジョンの準備とか、攻略の合間の小休憩とからしい。
滞在ポイントは1時間につき、その冒険者が死んだ時のポイントの1/1000だが、ここまで滞在されると結構美味しかった。
まあそれはそうとして、重要なのは話の内容である。
「今のって、"雷鳴"だよな」
「ああ」
「なんでこんなところに?」
「さあ。だが、奴が来たとなると、ここも稼ぎづらくなるな」
「まだ大丈夫さ。どうせ下の方行くだろ?」
「そう祈ろう」
「神様にか?」
「ああ。イシリア様に」
「くくく…」
何が面白かったのか、男達が堪えながら笑った。
イシリア様というのは前も会話に出ていたな。今回の会話でモルダン教の神の名前と確定か? ありがたい。
しかし、雷鳴というのは?
あの女の名前だろうか。二つ名という奴か? ライメイなんて名前の可能性もある?
…まあそれなりに有名人ってことだな。強いし納得である。
その後、彼らも休憩を終え、新人冒険者ちゃん達もいつもと変わりなく、2階層をウロウロしていたので、おれはダンジョンの強化について考えることにした。
この前のようなサービスショットがあれば見たいが……。
現在4階層は2階層と同じような迷路型の地形で、至る所に壁を設置し、その壁裏から不意打ち、といった形だ。
それを強化するにはどうしたら良いだろうか。
4階層のポイント制限は1250ポイントで、現在700ポイント使っている。つまり残りは550ポイント。
おれは今朝のあの女の強さを思い浮かべた。
「生半可な罠じゃ勝てないな…」
ならやるのは一点集中。
一箇所に全てのポイントを注ぎ込むのみ。
問題は上手く誘導しないと素通りされて終わりということだろうか。
幸いにも4階層は2階層と同じような作りだ。なら彼女も同じように進むはずである。
とりあえず既に設置している壁を動かして、行ってほしくない道はとにかく壁で塞ぎ、でもあからさまにならないように満遍なく散らしてみた。
そうして設置していて思った。
こうすると結局2階層と大差ないかもな、と。
奴の下に、満遍なく散らしたモンスターが合流できればいいんだ…が………!
その時おれは閃いた。
そうか。コウモリ。
コウモリネットワークを使えば良いんだ。
4階層、つまり侵入者が少ない階層だからこそできる一点集中。
侵入者が選んだ道に、コウモリネットワークを使って全ての魔物を集合させる。
罠はその分少なくなるが……今回大事なのは魔物の数だ。
4階層全ての魔物を一点集中させる。
大事なのは緻密な連絡網。せっかく魔物を集めても、逐次撃破されては意味がない。
全てを同じタイミングで投入する。
圧倒的物量で勝負だ!
現在のポイント:3955
久々に冒険者が1階層で死んだ。足を滑らせ、矢に撃ち抜かれたらしい。
臨時収入!!
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