第11話 コネクト
冒険者達がいなくなった夜中。
おれはポイントを使って、ダンジョンを強化していた。
今回新たに導入するのは、コウモリ(30ポイント)である。
コウモリ。30ポイントの割にはゴブリンより弱そうで、導入を見送っていた魔物であるが、今回活用方法を思いついたのだ。
それは、コウモリを利用した連絡網の整備。
というのも、ダンジョンでは、周囲25メートルに侵入者がいると、魔物に指示を出せない。しかしカメラで侵入者の位置や状況はわかる。
そんな時、魔物で奇襲を仕掛けられたら、便利だと思ったのだ。
そこで白羽の矢が立ったのがコウモリで、理由としては飛んでいるから動きが速いというのもあるが、それ以上に、その超音波である。
超音波で遠距離でも会話できないかと思ったのだ。
ちなみに魔物の言葉が伝わる範囲としては、
ダンジョンマスター(おれ)→魔物
半径25メートル以内に冒険者がいなければ可能。
魔物→ダンジョンマスター(おれ)
不可能。
同族の魔物→同族の魔物
可能。
別の種族の魔物。
不可能。
となっている。種族の違う魔物同士は基本会話できないということだな。
そこで、連絡役のコウモリを2匹用意し、おれから連絡を受け取ったコウモリがもう1匹に超音波で伝える。連絡を受け取ったコウモリが何かしらの合図──例えば、時計回りに2回転する、とかそういったことで、魔物達に指示を伝える、という仕組みを考えた。
しかし良いアイデアだと思ったのだが、コウモリの超音波というのはそこまで遠くには届かないようである。実験したところ、大体20mってところだ。しかもダンジョンは迷宮なのもあって、減衰しやすい。まあでもないよりはマシになった。
思ったよりも効果は弱いが、コウモリ通信網、構築!
その翌朝、6時。おれはスライムに起こされた。スライムには3層に侵入者が来たら起こすように言っている。
つまり……
3階層を映すモニターに、冒険者がいた。それもひとり。
こんな朝早くに迷惑な奴だ。
女か?
左手に剣を持っていて、肩に掛かるぐらいのミディアムヘアの女だ。腹見せスタイルの装備をしていて、チラリと見える脇腹が良い。
彼女は3階層の一本道に入っていった。彼女が歩いていくと、まずバネ罠が作動し、それに連動してスライム罠が発動した。
彼女はバネ罠を物ともせず、3方向から飛んできた矢をスライムごと、斬り捨てた。髪がゆらゆら揺れる。
このまま進まれるとまずいか? と思っていると、彼女は一本道を2分の1ほど進んだあたりで、引き返していった。
何だったんだ。一体。
……とりあえず彼女のことは忘れることにして、おれは補充を済ませると、二度寝することにした。
彼女が本腰入れて攻略しに来たらマズイが、しかし具体的な強化案も思いつかない。ポイントを沢山使えば単純な強化はできるだろうが……その程度の強化なら彼女が3階層を突破するのを見てからでもできるはずだ。
それを今使うのは、浅慮に過ぎる気がするのだ。
少しならともかく、多く使うならじっくり考えてから使いたい。
ということで寝ることにした。
そして起きると、ポイントが600ポイントも入っていた。罠の消費具合からして、2階層で誰か倒したらしい。
嬉しい臨時収入だ。
現在冒険者はカメラで見える範囲では、2階層に2組、1階層には3組。
1階層の大広間には、新人冒険者ちゃん達がいた。さらに、あの女も。
彼女らはどうやら元から知り合いだったらしく、話しながら歩いていた。
「教会もあなた達には期待しているのよ」
「あなた達には才能がある。きっとすぐイシリア様の期待に応えられるようになるわ」
イシリア様? 神か? 教会のお偉いさんか? 分からないな。
「ありがとうございます!」
「じゃあそろそろ……」
と、そこで音が遠くなり、聞き取れなくなった。
それから少しして、次のポイントのマイクに音が入ってきた。
「…が…だから」
「かっ…いいな」
この声は恐らく金髪のドンクとかいう男だ。
そして次の言葉でやっとしっかり音が入ってきた。
新人冒険者ちゃんだ。
「はい。私達もイシリア様のご期待に応えられるよう、頑張りましょう!」
会話が途切れたのか、そこで声が聞こえなくなった。タイミングが悪い。
しかし、ここまでの話をまとめるとなるほど? つまり彼女達はモルダン教の敬虔な信徒で、だから普通の冒険者より積極的にダンジョンを攻略しに来ていると。そういうことか?
少なくとも新人冒険者ちゃんとあの女は、そうに違いない。
ちっ。これだから宗教関係者は厄介なんだよな。
現在のポイント:3555
そういえばこの前、寝袋を買った。これで硬い床ともおさらばかと思ったのだが、部屋の温度的に微妙に暑い。難しいものである。
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