第15話 聖地の林檎

 俺はライガ種族の・・・んん~・・・そうだ、『白林檎の君』って名乗ろう。


 俺は『白林檎の君』。


 代筆してくれるんだってな、頼むよ。


 ・・・俺は白林檎の守番の家の生まれで、白林檎は別名『聖地の林檎』って言う。


 白林檎で作る林檎酒は、お金持ちや協会側が喜んでくれるよ。


 なんたって俺が住んでる里は、ライガ系と言う浅黒い肌に黒色意外の瞳をしている血。


 人種として珍しいから、白林檎と一緒に保護区にいる。


 協会側が見つけて保護してくれたお礼に、俺達が古から育てていた白林檎を提供中。


 なぜか白林檎は、ライガ族しか栽培できないんだ。


 理由は定かでない、って言われるけど、多分、コツの掴み方だな。



 そうそう、そう言えば、本題に入ろう。


 俺には親友がいる。


 一緒に保護区に入った別の人種の子で、中性性別なんだ。


 心も身体も。


 小さい時から一緒に遊んでて、その妖艶で無垢な感じで狙われる。


 性別を選べる中性体について、ひとさらいや偏見もあるらしい。


 俺は気にせず遊びながら守ってたけど、そこらの女子より可愛いことに気づいた。


 容姿とか器量とか性格とかが、性別関係なく可愛い。


 その親友は俺のために女性化してくれて、晴れて結婚することになった。


 その記念に代筆を頼んだんだ。



 そうそう、俺の里には葉剣って言う植物がある。


 渦巻き脈葉っていう珍しい植物が保護区にあって、あれって面白いんだ。


 つんで気を練って集中して的に投げると、武器になるんだ。


 手裏剣ってやつのかわりになるじゃん、と思って投げて遊んでいた。


 それがバレて、珍しい植物だからそれで遊ぶなって言われて禁止命令。



 ただ、里のおとなに言われたんだ。


 緊急の時に葉剣を使えるように、手裏剣の練習をしていなさい、って。


 占いが得意な近所の姉ちゃんに相談したら、鍛冶屋を紹介された。


 気難しそうな顔の鍛冶屋に、渦巻き脈葉の話をしたら、手裏剣になった。


 はつるぎ。


 愛称として適当に呼ばれていたのに、出来た手裏剣の名前は『葉剣』。


 黒い本体は葉っぱの形をしていて、渦巻きの脈がある。


 指ではさんで投げるもので、けっこうするどい。



 それで遊んでいたら、里の者に「実は忍者の里」なんだ、って言われた。


 大人になったかもしれない時期までそのことは子供たちには隠される、と。


 保護区と呼ばれている住んでいる場所が、どこなのか分からない。


 時々仕事に行ってくる、と、大人が数日から数週間里からいなくなったりはする。


 不思議に思っていたが、仕事をしに行く役割だと言われて、それで済んでいた。


 白林檎の守番の家だったからなんだろう。


 親は里にいつもいるし、忍者だって言われても変わらず近所は近所で愛しい人たちだ。



 晴れの日が多い、植物の育ちやすい環境。


 森の中は涼しくて、時々マルと遊びに行っていた。


 マル・・・幼馴染兼結婚相手とのなれそめは、とある騒動からだった。



 保護区の監視員が、少し変なやつであることは気づいていた。


 そしてマルと俺が森で遊んでいる所を発見し、俺が逃げ出したふりをして隠れた。


 マルは「中性体なんて性病と同じだ死んでしまえ」と叫ばれ動けなくなっていた。


 そいつの発言は許さないものであると判断し、葉剣を四回投げた。


 よっつとも男の背中に刺さり、ライガ系には利かないしびれ効果が作用した。



 手裏剣葉剣には、ライガには利かないしびれ薬が塗ってある。


 それは『植物の方の葉剣の毒素』を模したもので、マルには効いてしまう。


 マルが襲われたのは、葉剣の群生する場所。


 そしてマルは、葉剣に触れた小さな傷口から侵入した効能で動けなくなっていた。



 急いで家に連れて行って、治療をしようとした。


 丘に面している家から、黒煙が立っているのが遠目に分かる。


 火事で焼けている・・・



 きっと白林檎を狙ったんだ。



 マルを背負って急いで家に向かい、にやにやしながら林檎をもいでいる男発見。


 俺の名前を叫んだ親父が信じられないことを言った。



「お前のストーカーが、奇襲かけてきやがったっっ」



 俺の容姿を見て、視察に来た姫が気に入ったらしかった。


 姫って言ったって、色々いるぜ。


 俺に惚れた不愉快な態度と匂いの姫は、俺についてストーカーを放ったらしい。



 ぞくぞくとライガの仲間たちが来てくれて、乱闘になった。


 ちなみに林檎をもいでいた不審な男には、葉剣を投げておいた。



 騒動はテレパシーの使える双子の、外出中のやつがラジオ番組に投稿。


 俺達の存在は知れ、そして俺達に「姫」を名乗っていたのはただの小金持ち。


 実際の姫っていう位を持っていたわけじゃない、ってこと。


 そして世の中が探していた「姫」って言う存在は、マルだった。



 マルには生まれつき婚約者がいた。


 でも、マルが「あなたと結婚したい」と「君」じゃなく「あなた」と言った。


 一生に一度しかない性転換をして女性になったマルは、今日、俺の嫁になる。



 代筆ありがとう。


 なかなか気はすんだぜ。


 ライガ忍者仲間から『花影』になるんだから、書記するなって言われたんだ。


 白林檎酒、そっちにいくつか贈ってやるよ。


 

 自分がどこにいるのかよく分からないけど、協会に入ったからそっち経由で。


 じゃーなー。



 ――

 ―――――・・・この記述はレイラと魔法の羽根ペンが代筆して記した。



 [ 追記 ]


 あのあと神父さまのもとに呼ばれて、白林檎酒をいただいた。


 白林檎酒の名前は「ニュートン」って言うらしい。


 林檎酒を飲んだのがそれがはじめてだったけど、とても貴重な味がした。


 キラキラしているような気がするの。


 ジュリアンが好きそうな味だな、って思った日、初潮が来たんだった。


 情緒不安定になっている私を、シャンクスとウィリーはだいぶ心配してくれたわ。


 彼らの存在に感謝。


 

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