第16話 ミカナスのスイッチ
君か、どうしても話しておきたいことがあるならレイラに連絡するといい、と
言われてね・・・
私の名前はミカナス・メ・レノバ―ス。
『香りの民』と呼ばれている部族の一員である。
出生届は出されておらず、戸籍を持っていない。
そして先日、闇医者フィーに頼んで、身体の中に爆弾のスイッチを仕込んでもらった。
私の鼓動が止まれば、スイッチが入る・・・そんな仕掛けだ。
敵は私を必ず殺すだろう。
そしてスイッチは入る。
かつての人体実験についての、拉致監禁。
許されざることである。
そしてアンドロイドの着る服一着よりも、一生分の食費が少ない者がいる事実。
私は仲間を集い、その団体としての名を『ダークマター』として活動している。
今宵は酒盛りをした。
団体として「名」を持った部下たちは素直に喜び、わいわいとしている。
片足が義足の戦士、アレク・グレイリア・ヴィヴィレック。
まだ二十歳だが、殺し屋だ。
そしてヌイ。
私が拾った農家の生まれの、戦いよりも草花が好きな男。
暗殺術を持っているくせに、自分を普通のひとだと言う少し頭の弱いやつ。
ほかにもちらほら・・・いや、だいぶか・・・まだ若いそいつらが心配だ。
レイラ:あなたは何歳くらいなの?
何歳か?
ああ、四十くらいだ。
驚いた、そちらからも喋れるのか。
なんだか意外だ。
続きを話してもいいか?
・・・ん~・・・そうだなぁ。
信託で、ヌイは私が死んでスイッチが入ったあと、ミッションを成功させる。
そして、傷で死ぬそうだ。
その件で、ワゴンカーではなく、ヘリコプターの中だと言われた。
そちらを選べ、と。
そこには『ウサギ女』とアレクがいるから、と。
ウサギ女とはラーヴィーと言う、ハッキングが趣味な高級娼婦。
ヌイはその女に恋心をよせている。
戦士としても役にたつあの女は、なかなか気に入っている。
客を選ぶし、率直な意見は分かりやすく、そして願望が綺麗だ。
なんでも整形癖があって、トラウマかららしい。
可愛い目は天然らしいが、あの女もなかなか心配だ。
現実世界、優位な人種しか天国に行けないの?って聞いてきた。
多分あれはわざとだろうが、なかなか部下に響いている。
何となく話したら、深く考えるべきことかもしれない、と言われたんだ。
案外と意外だった。
んん~・・・まぁ、色々と心配なんだがどうにかなるだろう。
書き残しておいて欲しいのは、それに関連してるかもしれない夢なんだ。
睡眠夢で信託を受けることがあるんだが、今回は不思議な気分だった。
俺には子種がない。
ただ、協会員のイトコの血筋、その子孫にフウマって言う男が生まれる夢を見た。
そのフウマも倭の国で協会員をしている。
初恋の相手と恋人になって、甘い時間をすごすのかと思ったら・・・
なんだか妙なんでぃ。
ふんわり見えるに、手紙で詩のやりとりをしていたりする。
俺には知らない世界観だった。
書いてももらっても、嬉しいのかどうか分からない。
だから今回、イトコのすすめで文字司のレイラに話してみたかったんだ。
別に悪夢のたぐいではないんだがよう。
いや、妙な夢だった・・・
まだ青い恋人たちと、その仲を裂くことに夢中なへんてこ女。
腹立たしいそのへんてこ女は、きっと俺の目前にいたら銃弾を食らうだろう。
それくらにはイヤな夢だった・・・
フウマには特殊な聖獣として、光の蝶がいる。
それを手放して恋人と駆け落ちして、心中しようとしていた。
それすらも邪魔をしにきたへんてこ女は、フウマをナイフで刺した・・・
それからフウマが助かるのかどうか分からない状態で夢は途切れた。
俺によくしてくれたイトコの子孫かもしんれないフウマが心配だ。
聞いてくれてありがとう。
案外とすっきりするもんだな。
ムイが育てた花の鉢を贈るよ。
それから俺が協会員として育てていた白い猫もあずける。
名前はルナと言う。
きっと俺は幸せ者なんだ。
守りたい者たちがいて、一緒に生きてこれたから。
・・・それを、イトコに言っておいてくれ。
気恥しくてなかなか言えない。
じゃあ、ありがとうなレイラちゃん。
――
―――――・・・
そのあとお花の鉢が届いて、甘い香りに癒されたわ。
鉢を部屋の窓辺に置いて、残りは庭に植えて。
やってきた白猫ルナに、シャンクスは一目で恋をしたようだったわ。
ルナも、人語を喋れるけど時々意外なことを言うわ。
この記述はレイラと魔法の羽根ペンがしたことをここに記しておく。
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