第19話 古い遺跡を探索する

「信じろ、創造神よ…お前の大切なものは全て、必ず滅ぼしてやる!」

――歪曲


幽玄な声が彼らの周りに響き渡った…周囲の空間が粉々に砕け散った…


威厳ある人物が球体を手にしていた…その顔ははっきりと見えなかった…いかなる生き物もそれをはっきりと見ることはできなかった…


タガの姿が、彼が手にした球体に映っていた…


この瞬間のタガ…


風がタガとシルの耳元を吹き抜けた。遺跡を開いた隙間から飛び降りる間、シルはタガの首を掴んでいた。


タガは真剣な面持ちで、眼下の底なしの虚空を見つめていた。空洞からは陽光が差し込んでいたが、その闇は陽光を貪り食う巨獣のようだった。


シルはタガの首をしっかりと掴み、タガは目を固く閉じ、開けようともしなかった。


暗い虚空に落ちてどれくらい経ったか分からないが、タガは突然眉をひそめた。


タガは体勢を変え、足を下ろした。突然、ルーン文字で覆われた地面が視界に入った。


タガは地面に勢いよく着地し、たちまち砂塵が舞い上がった…


しばらくすると砂塵が晴れ、自らの足取りで砕けた地面に、半ばうずくまっているタガの姿が現れた。シルはタガの首を強く掴んだ。


「シル、もう目を開けていい。地上に着いたんだ」タガは優しく言い、首にしっかりと巻き付けられたシルの手を優しく叩いた。


「もう着くの…」シルはゆっくりと目を開け、周囲を見渡し、それから掴んでいた手を離し、タガの背中から飛び降りた。


タガはうずくまっていた状態からゆっくりと立ち上がり、周囲を見渡した。周囲は真っ暗だったが、タガの目は徐々に輝き始めた。


「神の力」を得て以来、タガの目と体は、散乱した瓦礫や奇妙な鼓動の音など、これまで見えなかったものを見ることができるようになった。


「ここが遺跡の内部なのか? なぜこんなに暗いんだ?」シルは首を傾げながら、背中の笏を持ち上げながら尋ねた。


笏の宝石が青い光を放ち、視界を照らした。目の前には長い廊下が広がっていた。


廊下の壁には壁画が刻まれており、それぞれが物語のように伝説を物語っていた。


タガは壁画に歩み寄り、触れた。目に映る光景は、奇妙なほど馴染み深かった。


壁画の亀裂には金色の糸が交差し、まるで壁画が生きているかのように揺らめく光を放っていた。


それぞれの壁画には、沈黙の壮大な伝説が描かれていた。


最初の壁画は、無限の虚無を描いていた。その虚空の中に、夢の種のように、かすかな光が浮かんでいた。


二度目、光は分裂し、そこから七つの漠然とした形が流れ出た。それらは光の核を取り囲み、万物を生み出しているかのようだった。


三度目の絵では、中心の光は顔のない神――創造神――へと変貌した。

神は手を伸ばし、星々、海、そして魂の始まりを創造した。


四度目の絵では、「神の涙」が流れ落ちる様子が描かれている。その涙は「塵」へと変わり、創造したすべてを蝕んでいく。


五度目の絵では、神々が戦い、世界は崩壊し、創造神の姿は徐々に消え去り、砕け散った光と塵だけが残された。


最後の絵には、一行の古代の文字だけが残っていた……。


タガは古代の文字を見て、困惑して頭を掻いた。彼はまだこの壁画の意味を完全に理解できていなかった……。


その時、シルが駆け寄ってきた。彼は壁画を見つめ、顎に手を当ててから、タガの方を向いた。


「これは創造神による世界創造の物語のようだ。そして、その文面には…『全てが解決したら、全ては再び始まる!』と書いてあるようだ。」


「ははは、この壁画は祖父が語ってくれた伝説そのものだな。前はちょっと信じられなかったけど…今は信じられる。ただ…」タガの口調は、最初は懐かしさから、落胆へと、そして最後には新たな自信へと変化した。


多くの苦難を乗り越え、タガはようやく物事を受け入れた。彼の今の使命は、ティナを救う方法を見つけることだ。運命が自分に何を求めているのかは定かではないが、宇宙を救わなければならないということだけは分かっている。


宇宙を救うことが何を意味するのかは分からないが、ティナを救うことが宇宙を救う道だとしたら、彼は不確かな運命を喜んで受け入れる。


タガは廊下の奥へと視線を向けた。巨大な扉があり、その前に二つの石像が立っていた。


タガはゆっくりと近づき、二つの石像を見つめた。それぞれが長剣を手にしていた。守護神のように、彼らは何百万年もの間、この遺跡を守ってきた。その体は埃と苔に覆われていた。


タガは扉へと歩み寄り、シルも熱心に後を追った。タガが扉を押し開けようとしたまさにその時、彼は突然凍りついた。なぜか、殺意に満ちたオーラを感じ取ったのだ。


「なぜ止めたんだ?」シルは困惑して首を傾げ、タガがなぜ話を聞いていないのかと不思議に思った。


タガはすぐに身を乗り出し、シルを押し退けると、素早く後退した。


二人の視点から見ると、石像は長剣を振り上げ、タガとシルに斬りかかった。タガは素早くシルを押しのけたため、石像の攻撃は外れ、重々しい剣は石の床に突き刺さった。


「チッ……邪魔だ……」タガは小さく呟き、手を伸ばしてシルを抱き上げ、運び去った。


二体の石像は目を覚まし、赤く光った。長剣を手に、タガの後を追いかけた。


タガはシルを肩に担ぎ上げ、暗闇の中へと駆け出した。


二体の石像は暗闇の中、赤い目で周囲を見渡し、タガの後を追ってきた。しかし、無駄に探し回ったようで、引き返した。


タガは片腕でシルを抱き、もう片方の腕で岩の突起を掴み、後退する石像を見つめていた。


「タガ、俺たち、ちょっと曖昧じゃないか?」タガに強く抱きしめられたシルは、動けないままだったが、顔には笑みが浮かんでいた。


「すみません、緊急事態なので、少しの間お邪魔させていただきます。今は冗談を言っている場合ではありませんよ!」タガは、いくぶん無力感を感じながらも、彼特有の優しさでそう言い、ゆっくりと飛び降りた。


「危なかったね。幸い、すぐに反応してくれたね!」シルはタガの腕を軽く叩き、彼女への信頼を示した。


「ちょっと面倒そうだね。後でいい隠れ場所を探してくれ。この二つの像を倒す方法を見つけなきゃいけないんだ」タガはそう言ってシルの方を向いた。


シルはタガを見て頷き、立ち去ろうとした。しかし、タガは彼のバックパックを掴んだ。


「ちょっと待って、ロープを貸してくれないか?」タガはシルのバックパックからそれをひったくった。


「ロープは何に使うんだ?」シルは困惑して首をかしげた。タガがロープのある場所まで歩いていき、それを岩に結びつけ、ゆっくりと引っ張って近くの柱に結びつけるのを、彼は見ていた。


「よし、簡単な罠ができた!隠れろ!」タガはシルの方を向き、石像に向かって駆け出した。


石像たちは元の場所に戻っていた。タガは少し離れて歩き、しゃがみ込んで石を拾い上げ、二体の石像に投げつけた。


二体の石像はゆっくりと目を開けた。門を入ろうとした人物が、まさに到着した人物だと分かると、二人は立っていた台からゆっくりと降り立ち、剣を抜いてタガに向かって駆け出した。


タガは嘲るような表情を浮かべて走り去った。石像たちは猛然と追いかけてきた。


やがて二人は、タガが罠を仕掛けた場所に到着した。彼女は柱のそばに立って、石像たちを見張っていた。


「バイバイ!」タガは別れの合図をすると、片手で岩を繋いでいたロープを切った。岩はたちまち像の頭から落ち、反応する間もなく押し潰された。


「タガ、ちゃんと片付けたのか!」シルはゆっくりと角から出てきて、感嘆の眼差しでタガを見つめた。


「大した仕掛けじゃなかった」タガはそう言い、ゆっくりと前に進み出てしゃがみ込んだ。砕けた石を拾い上げ、独り言を呟いた。


「何をしているんだ?」シルは困惑した様子でタガを見つめた。


「彼らに謝っている。彼らは何も悪いことをしていない。遺跡を守っていただけだ。我々はただの侵入者なのに、彼らを踏み潰してしまった。これは罪だが、どうすることもできない」タガは謝り、石を置き、門へと向かった。


シルはタガの後を追い、ゆっくりと門を押し開けた…


どこか別の場所で…


歪曲の船団は氷の大陸に到着し、兵士たちは上陸していた。


歪曲は玉座に座り、周囲の凍り付いた木々や花々を眺めていた。熱い紅茶を一口すすり、隣に立つラゾスは遺跡を探しながら周囲を見渡していた。


草むらにエルフが横たわり、眉をひそめていた。シルはエルフが何か悪さをしていると感じていた。族長に報告に戻ろうとしたが、ふと下を見ると、触手が彼の足首をしっかりと掴んでいた。


瞳孔が震え、触手は瞬時に彼を歪曲の前に引き寄せた。


「エルフよ、他人を覗き見るのは悪行だ。無礼だ。罰として…死をもって罰する!」ディストーションは作り笑いを浮かべ、冷たく残酷な声色で、生への軽蔑を込めた口調で言った。


ディストーションは即座に触手を振り上げ、エルフの頭部を貫いた。血が噴き出し、ディストーションの顔や口元にも飛び散った。ディストーションは反応せず、口の端に溜まった血を舐めた。


「血を口にするのは久しぶりだ…懐かしい…」ディストーションはそう言い、エルフの遺体を投げ捨てた。


「エルフの集い場を見つけた」ラゾスは冷たく言ったが、ディストーションの最近の行動には全く頓着しなかった。


「助けてくれてありがとう。さあ、残酷なことをするぞ!」ディストーションは周囲の触手が動き出す中、丁寧に言った。


祭壇に座る老人は何かを予期していたようで、相手の到着を待ち構えていた。


ディストーションは玉座に座り、兵士たちにゆっくりと祭壇へと運ばれ、そこに老人の姿を見た。


「この聖遺物を開く守護者か? 解錠を手伝ってくれれば、お前を生かしてやる。どうだ?」 ディストーションは老人に寄りかかり、微笑んだ。唇の下には奇妙な触手が生えていた。


「お前が来ることはずっと前から分かっていた。解錠しようがしまいが、俺は死ぬ。お前には解錠する方法がある。だから、タガにここで時間を稼いでもらうのもいいだろう。」 老人は勇ましくそう言った。その口調には、ディストーションへの勇気と軽蔑が込められていた。


「ハハハハ! お前はまさに創造神の化身だ! お前の放つエネルギーは実に見覚えがある! 解錠を手伝わないなら、お前を殺してやる!」 ディストーションは乱暴に笑った。彼は既に、相手が創造神の化身だと見抜いていた。試していたところだったが、それが真実であることがわかった。


歪曲は笑った後、ゆっくりと触手を伸ばし、そこにいたエルフたちを皆殺しにした。しかし、ラーゾスは無関心な様子で祭壇へと歩み寄った。歪曲が何をしようとしているのかは気にしなかった。ただ創造主を見つけ出し、完全に滅ぼしたいだけだった。


ラーゾスは祭壇の扉を開けた地面に手を置き、エネルギーを集め始めた。祭壇の床がゆっくりと開き、ラーゾスは振り返り、歪曲に去る合図を送った…

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