第18話 古い遺跡を開く

「君の存在は偶然ではない。全ては運命だ。」

――黒衣の男


空から細かな雪が降り注ぎ、小さな氷の結晶が木々の葉に舞い降りた。辺り一面が氷と雪に覆われていた。


雪に覆われた森の真ん中に、奇妙な家々が立ち並び、その周囲には氷の結晶に覆われた人々が集まっていた。


彼らは二人の人物を掴んでいた。聞き覚えのある二人の声は、私たち、タガとシルだった。


タガとシルの手はロープで縛られ、エルフたちは二人を村の中心へと導いていた。


村の真ん中には、笏に手を置いて、背中を丸めた人物が立っていた。彼は賢者のように空を見つめ、思索に耽っていた。


タガとシルは、背中を丸めた人物の前に、エルフたちに導かれていた。


背中を丸めた人物は、エルフたちの肩に膝まづかされているタガとシルの方を振り返った。「それで、ここで何をしているんだ?」タガは周囲のエルフたちを見渡し、かすかな警戒心をにじませながら大声で尋ねた。


タガは両手を縛っていた縄を簡単に解くことができたが、シルの安全を確保するため、周囲のエルフたちを常に監視していた。


背中を丸めた人物は咳払いをし、杖を上げてタガの頭を軽く叩いた。


タガとシルは、老人が何をしようとしているのか分からず、困惑した目でその人物を見つめていた。


杖がタガの頭に触れた瞬間、老人は驚きで顔面蒼白になり、手を振った。


老人の傍らに立っていたエルフたちは、老人の命令を受けるとすぐに前に進み出て、タガとシルを縛っていた縄を解いた。


縛めを解かれたタガとシルは、戸惑いながら向かいの老人を見つめた。


「我が民の無礼をお許しください…本当に申し訳ありません…」老人は謝罪の念を込めた口調で言った。


「私たちの言葉を話せるのか!?」シルは驚き、瞳孔を大きく開いた。


「ははは!長年生きてきて、様々な種族を見てきたから、当然ながら色々と分かっているんです」老人は丁寧かつ明るく答えた。


「それで、あなた方の民は一体何のために我々をここに連れてきたのですか?」タガは二人の反応を見て、意味不明な会話を遮り、単刀直入に本題に入った。


「正直に言うと、彼らは祭壇のエネルギーの変動を感じ取っていたのですが、それが祭壇自体から発せられているエネルギーだとは理解していませんでした。誰かが祭壇を破壊していると思い込んでいたのです」老人は首を振り、ため息をついた。その口調には謝罪の念が込められていた。


「あのエネルギーの変動は、私が祭壇に触れたことで彼らが感じ取ったエネルギーのことでしょうか?」タガは眉をひそめ、困惑した様子で男を見つめ、腕を組んで彼の言葉に耳を澄ませた。


「確かに、私は何百年もの間、この祭壇を民と共に守ってきました。普段はエネルギーを発していませんが、あなたが来てからというもの、途方もないエネルギーの波を発し始めたのです。」老人の優しい声には、タガのエネルギーへの疑念が滲み出ていた。そして彼は優しく指を立てて彼女を指差した。


「私ですか?私の体のエネルギーが影響しているのですか?」タガは指を立て、自分のエネルギーと祭壇のエネルギーが相互作用していることを示した。


「感じます!あなたの中には、この古代のエネルギーが宿っています!それはあまりにも素晴らしく、あまりにも広大で、宇宙全体でさえも収まりきらないほどです!」老人は興奮して両手を空に掲げ、彼の笏から金色の光が放たれた。


「取り憑かれてるの?」シルは口を尖らせ、タガにそっと近づきながら囁いた。まるで自分が狂人になったような気がした。


「失礼なこと言わないで」タガは指を立て、シルの額を軽く叩いた。


タガに額を軽く叩かれたシルは黙り込んだ。諦めたように、タガの指で叩かれたことで赤くなった額をこすった。


「それで、この祭壇には一体何が隠されているんだ?」タガは困惑したように彼を見た。彼は祭壇に何が隠されているのか、とても興味を持っていた。


「この祭壇には古代の遺跡が隠されている。そして、この遺跡には宇宙の全てが隠されている!」老人は何か重要なことを言いたげに、笏の尖端で地面を重く叩いた。


「これ…宇宙の全て?」シルは首を傾げながら二人を見渡し、古代遺跡でこの祭壇について何か見たことがあるのではないかと考えていた。


「その通り!それが『真理の心』だ!宇宙の根源そのもの!それがなければ、宇宙は存在しなくなる!祭壇のエネルギーはそこから生まれている!」老人は真剣な口調でタガを見た。


「そしてお前も!お前こそがこの宇宙全体を救う鍵だ!お前こそが運命づけられた者だ!」老人は笏を掲げ、タガに向けた。


タガは自分を指さし、困惑した表情で彼を見て、疑わしげに話し始めた。


「私は運命づけられているのか?」タガは困惑した様子でシルを見た。シルもまた、自分は運命づけられていると言っていたからだ。


シルはタガを見て、厳粛に頷いた。彼は親指を立てたように軽く手を挙げ、タガの言う通りであることを示すようにした。


「なぜ私は運命づけられているのか?」タガは困惑した様子で彼を見た。


「すべては源泉によって選ばれたのだ!」老人は敬意を込めて「源泉」と言った。


「源泉? 私は運命づけられている。だが、過去を償う方法を見つけたいだけだ」タガは拳を固く握りしめ、彼を見つめた。


「あなたに起こることはすべて運命づけられている。それを変えることはできない…どんなに努力しても、やがてあなたは自分の道を歩むことになる」老人はタガに肯定の笑みを浮かべた。


タガの表情は困惑に満ちていた。彼は今、この言葉の意味を理解していなかったが、将来、完全に理解することになるだろう。


「何か導きを受けたのか…祭壇に入りたいと?」老人はタガとシルに視線を向け、確認を求めるような口調で言った。


「そうだ!祭壇に行くぞ!入れてくれないか?」シルが最初に口を開いた。その目には嘆願の色が浮かんでいた。


老人は考え込むように頭を下げた。少しの間を置いて頭を上げ、頷き、タガとシルの祭壇への入場の要請に応じた。


タガは頭を下げ、感謝の意を表した。


老人は振り返り、タガとシルに続いて来るように合図し、祭壇へと歩み寄った。


タガとシルは急いで彼の後を追った。


やがて…彼らは古い祭壇に到着した。老人は祭壇に歩み寄り、笏を掲げ、未知の言語で呟いた。


タガとシルは老人の後ろに立ち、老人が祭壇に向かって詠唱するのを見守った。二人には聞こえない何かだった。同じ言語だった。


突然、祭壇の中央にあるルーン文字が奇妙な光を放ち、その中心がゆっくりと開き、祭壇から巨大なエネルギーが湧き上がった。


タガはこのエネルギーがもたらす安らぎを感じ、それが体中を流れ、やがて…魂。


タガは手のひらを掲げ、体内のエネルギーが強くなっていくのを感じた。それから祭壇に目を向け、そこから発せられるエネルギーを観察した。すると、そこにどんな秘密が隠されているのか探求したいという思いが彼の心を満たした。


老人は振り返り、タガを見た。笏からはエネルギーが放たれ、その目にはタガの肯定の言葉が込められていた。


「次は、この遺跡を探検することになる。君ならできると信じている!」老人は厳粛に頷き、まるで我が子に向けるような優しさでタガを見つめた。


「助けてくれてありがとう…やります!」タガは感慨深げに語りかけ、相手に微笑みかけた。


タガはシルを背中に乗せた。シルは素直にタガの背中に飛び乗り、タガの首をぎゅっと抱きしめた。タガは祭壇の中央から飛び降りた。


祭壇の端に立っていた老人は、遠ざかるタガの姿を見ながら微笑んだ。


「タガ…成長し始めたな…これからの功績は無限だ…」そう言うと、老人は背を向け、エルフたちと共に去っていった。


別の場所では…


巨大な船が海を渡って行き、無数の兵士たちが船上にいた。


ラーゾスは船首に立ち、海を見つめていた。彼は、この世界で最強の存在のオーラを放っていた。過去の出来事が過ぎ去り、周囲の空気はエネルギーの波によって歪んだ。


歪曲は突然、触手の一本に赤ワインのグラスを握ったラゾースに近づいた。


「我が偉大なるラゾース卿!何が見える?」歪曲は作り笑いを浮かべたが、その声色にはかすかな疑念が混じっていた。


「真理の心臓の古き遺跡が開かれた…そして運命の者が入った。」ラゾースは終始無表情で、無関心にそう言った。


「開いたのか?素晴らしい!本当に助かった!」歪曲は赤ワインをゆっくりと一口飲んだ。その奇妙な瞳からは奇妙なオーラが漂っていた。


「今、力を十分に発揮できていないのか?」ラゾースは正面を見つめたまま、疑わしげに歪曲に尋ねた。


「仕方ない。この体は弱すぎるし、この忌々しい結界に縛られているんだ。」 「力は全く使えない…だが、運命の者には十分だ!」歪曲の口調は自信に満ち、唇の笑みはますます不吉なものへと変わっていった。


「創造神は我々にあまりにも多くの制約を課した。胴体を取り戻さねばならない!そうして初めて我々の目的が達成されるのだ!」ラーゾスの口調は冷淡だったが、その奥にかすかな怒りが漂っていた。


「我々はできる!ハハハ!」歪曲は空を見上げながら笑った!


彼の不吉な笑い声が多元宇宙に響き渡った…

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