Paigia

第11話 降伏

「私はこの多元宇宙の支配者…共に旧世界宇宙全体を統べる相棒が必要なのだ…」

—ディストーション

今日は美しい夜だった…アルカロス帝国、ディストーションは玉座に座り、手にしたトカゲを撫でていた。鋭い指がトカゲの粗い鱗を優しく撫でると、トカゲはディストーションの掌に静かに収まり、ディストーションが愛撫するに任せた。

その時、宮殿の門をノックする音がした。ディストーションの半眼がゆっくりと開き、トカゲを撫でていた手がゆっくりと上がった。門の脇に立っていた二本の触手が、すぐに宮殿の門を開けた。

外に立っていた兵士は、門がゆっくりと開くのを見届け、中へと足を踏み入れた。彼はディストーションの玉座の前に片膝をつき、頭を下げた。

「王よ、選ばれし者の現在地を突き止めました。彼は現在アトランティスにいます。」兵士は頭を下げ、敬意と無関心が入り混じった口調でゆっくりと話した。

歪曲は手を振り、何か他に知らせがないか尋ねた。歪曲の掌の中のトカゲはゆっくりと目を開けた。その目は奇妙なほど不気味で、まるで恐ろしい気配を漂わせているようだった。

「それから…​​『あれ』の行方は大体分かっています…現在どこかに監禁されていますが…まだ調査中です…」兵士は腕から奇妙な破片を取り出し、発見した手がかりを説明した。

「『あれ』の信奉者や、過去の戦いの残骸も見つかっています…」兵士は両手で破片を差し出した。歪曲はただ手を挙げると、触手はそれを掴み取り、彼の前に差し出した。

歪曲は鋭い指で破片を拾い上げ、注意深く調べた。月明かりの下でも、それは見抜くことはできなかった。透明なはずの破片は、月光を透過せず、むしろ月光を呑み込むようだった。破片は、まるで悪魔の気配を漂わせるかのように、極めて濃厚なオーラを放っていた。

「そろそろお前を探し出す番だ。戻って探しに行かなければ…」歪曲の唇がわずかに歪められ、鋭い歯が露わになった。その笑みは神秘的で邪悪で、誰もその本性を見抜くことはできなかった。歪曲は手を振り、兵士たちに退去の合図を送った。兵士たちは頷き、宮殿を去っていった。

歪曲は掌の中のトカゲを撫で続け、その目は周囲を見渡していた。歪曲は心の中で一つの計画を練っていた。

一方、タガの側では…

タガはアルカに続いてアトランティス宮殿へと向かっていた。道中、彼は不安を感じていた。無意識のうちに、何者かが自分を操ろうとしているという予感があった。タガはただ顔を撫で、アルカの案内でアトランティスの特徴を説明しながら進んだ。

歩いていくと、髭を生やした人型の像に出会った。現在のアトランティスのマーフォークとは全く異なる姿だった。マーフォークというより人間に近いように見えたが、像の台座には、タガがかつて万物の森で見たことのある言葉が刻まれていた。

「この像は…誰の像ですか？」タガは困惑した様子でアルカを見た。アルカは顔を上げて言った。「彼ですか？アトランティスの創始者、最古の存在の一人です。アトランティスの全てを切り開いたのです！」アルカは誇らしげに言った。

「この言葉は何です…？」タガは像の台座の文字を指差しながら尋ねた。アルカはタガが指差した方向を見て、古代の文字を見て言った。「正確には分かりません。ただ祖父が話してくれたのを覚えています。神々が私たちを祝福し、救ってくれるという意味です…」アルカは頭を掻いた。

「でも正直に言うと…神様なんて見たことないんです。いるのかどうかも知らないんです。ただの伝説だと思っているんです。」アルカは肩をすくめ、神の存在を信じていないようだった。

タガはアルカを見て微笑み、続けるように合図した。アルカは時間を無駄にせず、すぐにタガをアトランティス宮殿へと導いた。

まもなく、彼らはアトランティス宮殿の前に到着した。宮殿の前にいた警備員が手を挙げてアルカに立ち止まるよう合図した。アルカは素早くポケットから身分証明書を取り出し、警備員に渡した。警備員はそれを受け取り、調べてからアルカに返し、進むように合図した。

アルカはタガの方を向き、手を振って中に入るように促した。タガはアルカの後について宮殿に入り、アトランティスの装飾に視線を釘付けにした。

装飾は様々な生き物で溢れ、壁には珍しい宝石で作られた絵が飾られていた。窓ガラスは歪んでいて、差し込む陽光が歪んでいた。

アルカはタガを宮殿の門まで案内した。ノックすると、中から低い女性の声が聞こえてきた。「どうぞ…」。アルカは扉を押し開けて中に入り、タガもそれに続いた。

中に入ると、アルカは片膝をついて言った。「王様、先ほどお話した見知らぬ方を連れてまいりました…」アルカは敬意を込めて言った。タガはアルカが跪くのを見て、同じように跪いた。

王妃はアルカの方を向き、「立ちなさい！」と言った。揺るぎない命令の声がアルカに届き、彼はすぐに立ち上がり、タガもそれに続いた。

「あなたがその見知らぬ方ですか？」王妃はタガを見つめた。その瞳は厳しさと美しさに満ちていた。タガは王妃の瞳がティナに似ていると思ったが、真似しようとはしなかった。タガは女王の質問に耳を傾け、頷いた。

「あなたの目的は理解できませんが、アルカとの関係はあなたが好戦家ではなく善良な人であることを証明しています。追い払いますが、あることであなたの助けが必要です」と女王はタガを見ながらゆっくりと言った。タガは困惑したように首を傾げ、何の助けが必要なのか気になった。

「あの多頭の海獣に遭遇されたのですね？」女王は両手を背中に組んでゆっくりと言った。タガは頷き、「ええ…私もあの海獣と戦ったことがあります…」と言った。

それから女王はゆっくりと玉座へと歩み寄り、座った。「これがあなたの助けが必要なことです。あの海獣はあなたと戦った後、ひどく苦しんでいるように見えました。あらゆる手段を試しましたが、手懐けることも、傷つけることもできませんでした」

「それで…殺してほしいのですか？それとも捕まえるだけですか？」タガは疑わしげに尋ねた。その目には困惑が浮かんでいた。そして、まるでベヒーモスと戦うようにと指示されているかのように感じたようだった。

「必要な時以外は殺す必要はありません…ただ、捕まえてくれないか、自分で調教してくれればいいんです…」女王はゆっくりと顎に手を当て、口調は揺るがなかった。

「調教？本当ですか？」タガは困惑した様子で女王を見上げ、眉をひそめた。「もちろんです…自分より強い者にしか服従しません。一度倒せば、調教できますよ」女王は寛大に言った。

「なぜ捕まえようと思ったのですか？」タガはようやく尋ねたが、心の中には疑問が残っていた。「元々は私たちの乗り物だったのですが、ある日突然、なぜか暴走してしまいました。多くの人を傷つけ、近くの食べ物をすべて食べてしまいました。もっと危険なことをするのではないかと恐れていたのですが、止めることができませんでした…」女王はどうしようもなく頭を下げた。

「では、お願いがあります！」タガはゆっくりと声を張り上げ、自信に満ちた口調で言った。「本当ですか？」女王は恍惚とした表情で彼女を見た。

「この人こそ真の女王様！お力添えいたします！」タガは胸を叩いた。「約束します。納得のいく説明をいたします。もちろん、その条件として、凍てつく大陸への地図が必要ですが。」タガは女王に微笑みかけ、その目はまるで「この提案をどう思われますか？」と問いかけるようだった。

「約束します！」女王は嬉しそうに手を叩き、アルカにタガがベヒーモスを止めに行くようすぐに手配するように命じた。

「さあ、タガ！武器を取りに行くわ！」アルカはタガに遮られた。「武器なんていらないわ！ 「俺は自分の力で何とかなる！」タガが自信たっぷりにそう言うと、アルカの心の奥底に傲慢の種が植え付けられた。

「本当か？」アルカはタガを少し心配そうに見つめた。彼はまだタガには武器とその力が必要だと信じていた。「必要ない！俺に頼ればいい！」タガは自信満々に言い、強大な力を放つ拳を指差した。

タガを説得できないと悟ったアルカは、どうしようもなくため息をつき、屈服した。

その時…

暗い洞窟の奥深く…一匹の海の怪物が傷を舐めていた。タガの攻撃によるダメージを当初は感じていなかったが、時が経つにつれ、タガの力はあまりにも強大で、攻撃は深く裂けるような傷のように感じられるようになった。

傷を舐めていると、海の怪物はかすかな音を聞いたようだった。その時、洞窟に雷が落ち、怪物は洞窟から飛び出した。雷はあまりにも強力で、一撃で洞窟は粉々に砕け散り、崩壊した。

海の怪物は見上げると、タガが巨大な怪物を上から見下ろしているのが見えた。海の怪物はタガに向かって咆哮を上げ、血まみれの口を開けて突進してきた！

「噛みつくか？」タガは素早く横に避けた。海の怪物の巨大な顎がカチッと音を立てたが、外れた！タガはすぐにタガを探し始めた！

「俺を探しているのか？」からかうような声がこだました。海の怪物は下を見ると、タガが手に力を込め、腹を殴りつけているのが見えた。海の怪物は吹き飛ばされた！タガもすぐに後を追った！

海の怪物は素早く反応し、体勢を立て直し、もう一方の頭をタガ​​に向けて振り下ろした。タガはただ微笑み、素早く噛みつきをかわした！海の怪物は驚いてタガを見つめた。タガの素早さを予想していなかったのだ！

多賀はそれをかわし、海獣の頭上へと飛び移った。彼は足に雷の力を込め、強烈な蹴りを放った。海獣は避けきれず、頭部を直撃した。多賀の蹴りの威力で、海獣は100メートル近く離れた岩の上に吹き飛ばされた。

海獣の巨体は蹴り飛ばされ、岩に激突して砕け散った。発生した煙が海獣の姿を覆い隠し、多賀は煙の中へと飛び込み、海獣を探した。

多賀は注意深く見ていたが、海獣の姿は見えなかった。突然、血まみれの口が大きく開き、多賀を飲み込み、丸呑みした。海獣は多賀が死んだと思い込み、丸呑みしてしまった。

まさに立ち去ろうとしたその時、口の中に鋭い痛みを感じた！多賀は拳に力を込め、必死に海獣に襲いかかった。一撃一撃が絶大な威力を発揮した。あまりの激痛に、海獣はタガを吐き出した。

「俺を食らう気か？何を夢見てるんだ？」タガは海獣を嘲り、突進して顎に強烈なパンチを叩き込んだ。海獣は顎の骨が砕け散るのを感じ、崩れ落ちた洞窟へと吹き飛ばされた。

海獣は崩れ落ちた洞窟の上で、苦痛に呻きながら横たわっていた。タガは近づき、「死にたくなければ、降伏しろ…安心しろ、お前を大事にする…」と言った。タガは海獣を見下ろした。海獣はタガの目を見て、拒否する権利がないことを悟り、頷いた。

タガは海獣が降伏するのを見届け、エネルギーを戻した。突然、一筋の光線が海獣を照らし、海獣は瞬時に腕章へと変化した。タガは驚愕してその腕章を見つめた！ 「一体これは何だ…ミスター？」タガは困惑しながら目の前の腕章を見つめ、ゆっくりと手を伸ばした。

腕章は持ち主を察したのか、タガの腕にまっすぐ飛んできて、滑らせた。タガは腕章を見た。そこには5つの海獣の頭があり、それぞれにルビーの目が描かれていた。

「名前をつけなきゃ…」タガは考え込み、言葉を詰まらせた。5分後…「わかった！『ルロヴァックス』って呼ぶことにした！」タガが興奮気味に名前を言うと、腕章もそれに応えたようで、目の宝石が同意するように光った。

「この名前が気に入ったみたいだね…」タガはどうしようもない笑みを浮かべた。その時、遠くからアルカがついに現れた！他のマーロックたちと共に息を切らしながらタガを助けに来た。しかし、崩れかけた洞窟や岩場を眺めながら、アルカは困惑した様子で尋ねた。「海獣はどこだ？」 「倒したの？」

「ええ、今は従属しています！」タガはニヤリと笑い、腕の腕章を指差した。「私を待たせたらどうだ…無謀だわ…」アルカはどうしようもなく首を振り、タガを見た。

「ああ、大丈夫。私はこんなに強いんだから、どんな敵でも倒せる！」タガは自信満々に言った。彼の心は次第に傲慢と誇りで満たされていった。力に慢心していたのだ。

「忘れた…戻って王に報告しよう…」アルカはため息をつき、踵を返して出て行った…タガもすぐに後を追った。

アルカロス帝国にて…

ディストーションはバルコニーのティーテーブルに座り、お茶をすすり、リザードは静かに眠っていた。兵士が状況を報告しにやって来た。

「陛下…『あの方』が監禁されている場所は見つけましたが、それ以上は侵入できません…故に、失敗です…」兵士は恥じらいながら頭を下げ、得た情報を報告した…

「大丈夫です…今は『あの方』のことは気にしないでください。運命の人にもう一度、大切なものを失わせなければなりません…手配を整え、兵士をアトランティスへ送りましょう」歪曲はトカゲの冷えた体を撫でながら、紅茶を一口飲んだ。

任務を終えると、兵士は踵を返し、去っていった。歪曲はティーカップに映る自分の顔に目をやったが、そこには歪曲の顔ではなく、また別の奇妙な顔が映っていた…