第48話 犯罪奴隷、仮雇用だったことに驚く
「さて、ジェフ。メイリーン。二人とも聖女様に心からお仕えできそうかな?」
にこりと辺境伯様が笑いながら問う。
本心を強制力をもって問われている圧迫感がくる。
「もちろんです。お嬢さまは素晴らしいですからお仕えできたこれ以上ない悦びです」
メイリーンが目をキラキラさせて宣言している。
「お嬢さまは魔力の凝りを散らす水をおつくりになるのです。凝りを散らすだけで魔法を魔具の影響を壊すわけではないのです。わけがわからないのです。なんてなんて素晴らしいのでしょう。私はお嬢さまにおつかえできることを幸福に思います」
うっとりと言い募るメイリーンの熱はすこしこわい。狂信的にも感じられる。行き過ぎる狂信はお嬢の害になる。
「俺はお嬢におつかえすることに不満はありません。あの方は少々ぬけたところのある方ですが、鍛錬を嫌がられませんし、俺たちの必要かと思ってする発言も許可し耳を傾けてくださいます。お嬢におつかえするためには俺ももっと学ぶことが多いとは考えています」
辺境伯様がゆるく微笑んでいる。
俺たちは犯罪奴隷で有り、処刑を免れ新しい存在だとして生きている。意志などは求められていないとちゃんと理解している。
「領都の学舎にしろ、王都に召喚されるにしろ聖女様が学生の間はおまえたちの本意がどうであれ仕えてもらうのは確かだが、主人を合わぬと反発を抱く使用人は不要かと思っていてね。おまえたちの本意が聖女様に添っているのならよかったよ。これからもどうか良き道具であれ」
辺境伯様が静かに言い渡してくださる。
俺らは変わらずおつかえできる。
安堵感が心を染める。
「もちろんです。たとえどのような者であれ、お嬢さまに危害を加えるモノは認めませんとも! たとえ、それが辺境伯様であっても。きっと誓約を刻んでもお嬢さまにつきましょう」
メイリーンが過激だが確かに同意ではある。
苦笑いをした辺境伯様が「あまり大きな声で言わないように」と嗜めてくる。
「正式な書類を整えよう。数日は実験農場で滞在できる予定だ。その間に聖女様の学力と礼法の確認とおまえたちの必要と思う方面の学習項目をあらい出せ。必要ならば教師を考えよう」
辺境伯様の宣言に俺らは深く頭を下げる。
俺はこれでお嬢の所有物なワケだ。
「ありがとうございます。辺境伯様、お嬢さまは私どもを気に入ってくださっておられるのでしょうか?」
俺やメイリーンは良くともお嬢が俺たちを気に入らないと言えばそばに居続けることは望ましくないじゃないか。
「ぅん? 一緒にいるのは楽しいようだよ? 気になるならおまえたちが隠れている状況で聞いてみようか?」
え。
お嬢を騙しうち?
「ぜひ!」
メイリーン!?
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