第30話 犯罪奴隷、忠告する
「で、少年には異世界の記憶があるわけだ。神殿は知ってるのか?」
チョコデニッシュリングが原因かオレンジジュースが原因かはたまた揚げ芋かわからないがザナも少年も俺らも腹を下して大変だった。
お嬢と受付嬢は平気なようで「ピーマンにっがぁ」と舌を出し合っていた。
「い、異世界の記憶?」
少年を神殿に送るかたわら聞いてみた。
異世界から招かれて帰れぬまま知識と救いを与えてくれる勇者や聖女と呼ばれる救世者の他にも異世界を由来とする記憶を持つ者が時折り生まれるのはよく聞く話で記憶はなくともお嬢のように『異世界』の物を呼び出す者、スキルとして再現する者もよく聞くパターンではある。
だいたいの者は神殿か、王族貴族の保護を得るのが一般的だろう。利用されるとも言う。
「お嬢の『くじ引き』に出てきた物をわかっていたようだから」
「あ」
「神殿の後見を受けているようには見えないが」
「後見?」
「救世者の補助に使える記憶を持つ人材は有用で囲い込んでおくものだよ。たとえば神殿。たとえば貴族が。招かれた『異世界の英雄』に繋がる知識を確保するためには」
わかっていない少年の様子からただの孤児として保護されているだけのようだ。
すこし脅しておけば、お嬢の情報を抑えさせておくことができるかな?
「お嬢と関わって異世界のものに触れていけば厄介なこともあるかもな。お嬢はわからず引っ張り出しているだけだが、少年は『ソレ』がなんであるか、わかっている様子だったからな」
お嬢と距離をとればいい。
そう提案すれば少年はものすごくわかりやすく悩んでいた。
俺から見ていてもお嬢の出すくじ引きの品物に少年は楽しそうだったしなぁ。
「ポテチ……」
「同じ物が出るとは限らないらしいぞ?」
おまえ、それ食って腹下したんだが?
「す、すこし考える。よ。神殿で変なこと言わなきゃいいんだろ」
俺らが神殿にいい印象がないだけだからなぁ。
お嬢は気にしていないようだしな。
ただ、神殿側に妙な手を入れさせたくない。
「ああ。お嬢は穏やかに平凡に暮らしていきたいらしいから」
「平凡?」
少年が不思議そうに呟く。
わかる。
お嬢は非凡な人だよな。
異世界の知識を持つ者は精神年齢が高かったり判断が妙に割り切れてたりするらしいから正しい判断をしてくれることを祈っておこう。
今の少年ならいくらでも対処できるしな。
「まぁいいや。しばらくは町にいて迷宮行くんだろ?」
「ああ」
「じゃあその間は俺を下働きさせてくれよ。飯代浮くのも迷宮行けるのも助かるんだよ」
「武器の扱いくらいなら教えられなくもないぞ」
やる気があるのなら。
「お。いいね。頼んます。ジェフセンセイ」
少年との距離はとりあえずこのあたりか。
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