第15話 犯罪奴隷、小迷宮の街コドハンにつく
ピレトマイアからゆっくり五日、小迷宮の街コドハンについた。街を管理する役所付きの兵士がやはり案内につく。
その様子にチラチラと冒険者たちが視線をよこす。
明らかに兵士が特別扱いしているのは幼い少女なのだから見もするだろう。
迷宮のある街近辺には聖女の巡回は組んでいなかったらしく、あまり『水の聖女』の評判は高くないらしい。恩恵がなければそんなものだろう。
兵士如きが『領を救った聖女様なのに』と口惜しがってもしょうがないというヤツだ。
お嬢はけろりとして「来ない相手にはなんとも思えないよねー。他所は助けてここには来ないって恨まれ案件〜」と呑気だった。
案内されたのはまず役所。
街に来た迷宮探索希望者は役所と冒険者ギルドと迷宮管理局で登録する必要があるのだと案内の兵士がお嬢に説明している。
「聖女様はレベルいくつなんですか?」
「わたしのレベルはね、よん! もうじききっとごになるの!」
自信満々ドヤ顔で告げるお嬢の様子を見て『え?』と言わんばかりの兵士が救いを求める表情で俺たちを見てくる。
そうだよな。
領地巡回している聖女様がレベルよんだとか思わないよな。
コレ辺境伯様のとこのお前らのお仲間が過保護にした結果だぜ。
「それは……たぶん、探索許可がおりませんね」
俺とメイリーンが静かに頷く。
ですよね。
危険過ぎる。
「ぇええ!? どーして? だってりょーしゅ様、ジェフ達と一緒ならいいよって」
オロオロするお嬢がかわいい。
「ぇええとですね。聖女様。迷宮に探索に行くにはレベル十が目安になっているんですよ。攻撃を受けても生きて出口へ走れるように。ですから基本的な経験を積んで街はずれや水路で見える魔物や害獣を倒してレベルを上げるものなんですよ。トドメを刺さなくてはならないので危険ですしね」
そう経験値はトドメを刺した者だけに与えられる。
共に戦っていた者に恩恵がないかと言えばある。
経験値は蓄積され次に何にトドメを刺してもレベルが上がるからだ。
そう、蟻を踏み潰してもレベルが上がる。経験値さえ溜まっていれば。
そしてこのレベルというのは魔物や害獣、幻獣と戦わないと手に入らない。
ひたすらに修行しているだけでは上がらないらしい。
畑を耕し、植物を育てることに適性を持つ人が途中でレベルの上限にくるのは畑の害獣を世話の中で退治するにも限度があるからだと言われている。
あと弱すぎるモノを倒しても経験値は微々たる量しか貯まらない。
レベル十くらいまでなら野山にいる小さな蛇やスライムでレベルが上がらないでもないがそこから先は無理が過ぎる数を求められるし、そこから得られる経験に意義が薄くなる。
強さを求めるなら強いものを倒さなくてはいけないものなのだ。
あと、レベルは一気に複数上がることはなくて上がって一日一レベルが上限と言われている。
ぷくぷくとむくれるお嬢を連れて役所、冒険者ギルドに滞在登録と迷宮探索申請を提出する。
冒険者の護衛付きでレベル上げ探索は可能という話でお嬢の機嫌は改善した。
引き受けてもらえるかどうかと迷宮管理局が入場チケットを出してくれるかどうか、これが問題となるらしい。
兵士が案内してくれたのはすこしにぎやかな大通りからはずれた一軒家。
辺境伯様から提供されたお嬢のための家だとのこと。
役所と神殿管理の貯水池に近く、冒険者ギルドや役所へも遠くない場所に用意された家。
掃除と雑用係で通いの使用人がひとりついているらしい。
「迷宮管理局は?」
「本日は受付を終了しているとのことで明日の予約を取ってますよ。今日は役所と冒険者ギルドでの申請、あとは旅の疲れを癒してください。兵舎の食堂から食事は運ばせておりますので」
兵士に通いの使用人の少女と引き合わされてコドハンでの拠点となる家でお嬢が息を吐く。
滞在予定は十五日くらいだ。
「お嬢さま、一日一レベルあげたら五日で迷宮探索許可おりると思いますよ! 明日は管理局に申請に行って近隣で狩りをしてみましょう!」
メイリーンが励ましている。
実際のところ一日一レベルはあと三レベルくらいは順調にいけるだろうが八から十にかけてがすこしかかると思う。
「お嬢さま、レベル十五までは攻撃魔法をひとつ覚えればすぐですよ。すぐ」
通いの使用人もメイリーンに追従するように励ます。
「攻撃魔法……」
しょんぼり度をあげたお嬢の様子に使用人の少女が慌てるが、まぁ、お嬢には無理よりの無理だからな。適性がない。
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