第5話:図書館の奥の不思議な光
翌日の夕方、私はアリアとの約束通り図書館へ向かった。
エルディア魔法学院の図書館は実に荘厳な建物である。
石造りの高い天井には魔法による照明が浮かび、無数の書籍が整然と並んでいる。
しかし、その静寂さは墓場のようでもあった。学生たちは皆、魔法理論書と格闘しており、楽しそうな様子は微塵も感じられない。
奥の一角で、アリアが一人で分厚い本を読んでいるのを発見した。近づいてみると、彼女が手にしているのは「魔導河の歴史と伝説」という古い書物であった。
「こんな本まで読まれるのですね」と私は声をかけた。
アリアは顔を上げると微笑んだ。
「あ、いらしてくださったのですね。実はこの本、とても興味深いことが書いてあるんです」
「どのような?」
「学院の近くを流れる魔導河には、古い伝説があるそうなんです。満月の夜に特別な儀式を行うと、真実が見えるようになるとか」
私は興味を抱いた。「真実、ですか」
「ええ。自分の本当の姿とか、大切なものとか...でも、まあ単なる迷信でしょうね」とアリアは苦笑いした。
我々は並んで座り、様々な話をした。アリアは魔法理論は得意だが、実技は苦手だという。
「計算はできても、実際に魔法を使うのは難しいんです。感情と理論のバランスが取れなくて」
「私は計算も実技も両方ダメです。そもそも、この世界の魔法が想像と全然違っていて」と私は正直に答えた。
「想像、ですか?」
「もっとこう...直感的で情熱的なものだと思っていました。『愛と友情の力で敵を倒す!』みたいな」
アリアは目を輝かせた。
「それです!まさにそれなんです!私が求めているのも、そういう魔法なんです」
その時、図書館の奥から不思議な光が漏れているのに気づいた。
淡い青色の光で、まるで蛍のように明滅している。
「あの光は何でしょう?」と私は尋ねた。
アリアも気づいたようで、振り返った。
「あ、また出てますね。時々あそこから光が見えるんです。でも近づいてみても何もないんですよ」
「何もない?」
「不思議でしょう?図書館員に聞いても『そんな光は見たことがない』と言われるんです。私にしか見えないのかもしれません」
私は立ち上がった。
「一緒に確かめてみませんか?」
アリアは少し躊躇したが、好奇心が勝ったようで頷いた。
「ええ、お願いします」
我々は書架の間を縫って奥へ向かった。光はますます明るくなり、まるで我々を導いているかのようである。
しかし、光源に近づくと、それは突然消えてしまった。
そこには古い書架があるだけで、特別なものは何も見当たらない。
「やはり何もありませんね」とアリアは肩を落とした。
しかし、私は書架の隙間に奇妙な空間があることに気づいた。まるで隠し通路のような...
「あの、ここに何か隙間が...」と私は書架を指差した。
その瞬間、図書館員が現れた。
「お二人とも、そこは立ち入り禁止です」
私たちは慌てて振り返った。図書館員は厳格な表情で我々を見つめている。
「立ち入り禁止、ですか?」とアリアが尋ねた。
「ええ。あそこは古い書庫で、危険な魔法書が保管されています。学生の立ち入りは禁止されているのです」
我々は素直に退散したのだが、歩きながらアリアが呟いた。
「でも、おかしいですね。今まで何度も来ているのに、あの図書館員は初めて見ました」
私も同感だった。そして、あの光は一体何だったのだろうか。単なる偶然にしては、あまりにもタイミングが良すぎる。
「つまるところ...この図書館には我々の知らない秘密があるのかもしれませんね」と私は呟いた。
---------------------------------
こんにちは、こんばんは作者です!
ここまで読んでいただき本当にありがとうございます!
もし良かったらブックマークやコメント、☆や♡していただけると嬉しいです!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます