大変

思ってよりも

実空みそらの保育園を探すのと同時に転入届を出したりと大忙し。とりあえずここならば数年はいられるような気がしていた。


市役所に来たついでに近隣の幼稚園や保育園の定員について尋ねてみた。自分たちで調べて1件ずつ問い合わせをしようとも考えたが、どれだけ時間がかかるか見当もつかない。


来たばかりでどこに幼稚園や保育園があるかもよく分かっていないことを伝え、新しい住所から近い順番に幼稚園や保育園を電話をかけてくれた。


何件か電話をかけて受け入れ可能な保育園を見つけてくれて、それも家から近いところを見つけてもらった。電話を切らず保留のままで、さらに今から行くならば伝えますと言ってくれた。


お言葉に甘えて、そのまま行くことにした。

お礼を言って立ち去ろうとすると市内マップを渡してくれて、分からなくなったら電話して欲しいと自分の電話番号まで書いてくれた。


名前をメモをしたが、本来接客の人ならばするべきはずの名前が書かれておらずイニシャルだけで何かあったのか。気になったらスグに聞いてしまうのが実空みそらパパの悪い所。


「なぜ名前じゃなくて、イニシャルなのか?気になって聞かれる方も多くいまして。理由としてはカスタマーハラスメントで正しいことを述べても態度が悪いだのと理不尽なことが多くて……。それで名前じゃなくてイニシャルになったのではという話を他の日から聞きました」


カスタマーハラスメント、所謂いわゆるカスハラってやつか。出来ないことを要求したり土下座をさせたりとニュースでよく見る。


自分達もお弁当屋さんで働くにあたってどこまでが正当な意見で、どこまでがクレームやカスタマーハラスメントに該当するのかと言った線引きが難しいなと感じていた。


そう思いつつ、実空みそらとパパ、ママの3人で市役所でもらった市内マップを持って、バスを乗って向かっていた。家に帰る途中に最寄りのバス停があり、そこで降りて保育園に向かって歩いた。


挨拶をして、月曜日から登園すると伝えると必要な物を全て買い揃えて家に戻る。お弁当屋が夕方6時までなのでそれから迎えに行くことになる。そのことは住居を提供してくれた栗原くりはらさんにもお伝えした。


お店は9時から18時までの8時間勤務だけど、実空みそらちゃん優先でいいよ。体調が悪くなったり、病院に行かなきゃ行けなくなることも有り得るからその時は遠慮なく伝えて。


実空みそらママとしてはこれほど嬉しい事はないが、こんな状況でも果たして働いてよいのか?逆に邪魔になるのではないかというわだかまりの気持ちの方が大きい。


同姓だからこんなに優しくしてくれるのだろうか?血縁も何もない私たちにここまでしてもらっていいのだろうか?早くお弁当屋さんのお仕事を覚えて手助け出来ることしかない。

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