気になる

不思議

とりあえず住むところも仕事も何よりも心配していた実空みそらの保育園も決まってひと安心した。ありがたいことに家から近い保育園に決まったことで何かあってもスグに駆けつけることが出来るのは家族としても実空みそらも嬉しい。


実空みそらママは家で料理をしたりして初日から卒なく教えてもらってスグにお弁当の調理に関しては何も問題ないくらい出来ている。その一方でパパはというと包丁を持たせると覚束ない様子で大丈夫なのかという感じ。


そのような感じであっても夫婦と祖父母だけでやりくりするのは大変だからいてくれないと困るといわれた。理由はこのようなことからだ。


「調理がダメなら、接客や売上の貢献の為に広報としてチラシ作成やSNSで宣伝するとか色々やることはある。こちらとしては調理が出来ないからってもうお弁当屋の仕事はやりたくないって言われる方が困る」


その言葉を聞いて少しでも売上に貢献しなくてはと感じた実空みそらパパ。


自分は調理と言うよりも接客やお弁当のよさを多くの人に知ってもらうことに徹することにした。その為にはまず、お昼休憩のタイミングや仕事終わりの時に実際にお弁当を買ってみて感想をノートにまとめるようにしようと決めた。


まずは定番の幕の内弁当や唐揚げ弁当を食べてみてご飯の量や見た目の鮮やかさや唐揚げの大きさ等、作って提供する定員側と1人のお客さんとして食べて見た時、どうなのかと両方の目で見ていた。


お客様目線としては、老若男女誰が来ても買いたくなるようなお弁当。小さい子供には小さく食べやすいもので、女子校生や女子大生には映えを意識したお弁当。サラリーマンやスポーツをしている人にはガッツリスタミナ弁当。高齢者の人には食べやすい弁当等それぞれの世代やニーズに合わせて提供出来たらなと考えた。


これが出来れば理想で、出来ればウワサがウワサを呼んで色んな人がお弁当を買ってくれる。そう考えてワードで印刷をして、それを調理するママに提案する。


するとこのような回答が返ってきた。

「お弁当屋を初めてまだ数時間なのにお弁当を食べてみて、提供する側と買う側の視点を元にどうするかって考えているね。だけど、肝心なことを忘れている。あなたは調理は出来ないと烙印を押された身。宣伝という観点ではいいけど、実際作るのはあなた以外の人達だよ」


褒められているのか、なされているのか分からない。淡々とそのように言われた。


ワードを作ったものを破ろうとしていた。


破ったらゴミになる。まだレギュラーメニューも全て作れてないからまずはそこから。ひと通り作れるようになって、余裕が出来たら提案してくれた物をお弁当に出来るようにかけあってみる。そう言ってくれた。


パパの計画を実行するのはまず、お弁当屋さんと実空みそらが保育園で馴染んでみんなと仲良く出来てからでも遅くないかも、そう考えていた。

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