新天地

ゼロからのスタート

ひょんなことから、いやありがたいことに仕事と家の両方を手に入れた栗原くりはら家。これからお世話になるのだから手土産の1つでも持っていくのが礼儀だと考えていた。


せっかくならば自分達の出身でもある栗原市くりはらしの特産品を挨拶代わりに持って行こうとネットで調べていると届くまでに数日がかかると表示があって、それまで待てないと思っていた。


そこで失礼を承知で届け先を向こうの家に設定するという本来考えられないことをしようとしていた。ならば、特産品のイチゴや菜種油にアイスミルク、志波姫しわひめポークなどこれでもかというくらい購入して届けるようにした。


いきなり大量の物が届いたら相手もビックリするだろうと出発する前に電話を1本入れていざ、次の拠点となる群馬県ぐんまけん高崎市たかさきしに向かった。


車で行けたら理想だが、そんなお金などあるはずもなくて荷物を持って電車を乗り継いで数時間かけてやっと駅に着いた。


すると衝撃な光景があった。

この日に来るとは伝えてはいたが、何時までに着くというような詳細なことまでは伝えていないのに私たちに手を振って出迎えてくれた。なぜなのか?


理由を聞いてみると隣家の人が今、家を出たから多分これくらいの時間に着くだろうと根回しまでしてくれていた。なぜそこまでしてくれたのだろうかと聞きたくなるくらいだ。


ひとまず、迎えに来てくれた車に乗って家に向かう道中でお互いに自己紹介をすることにした。

「初めまして、今回は仕事と住宅を提供していただきありがとうございます。栗原くりはらと申します。ご迷惑をおかけします」


「そんなことないですよ。ウチも弁当屋は夫婦と祖父母でやっていて、人手が欲しかったので。私達も東北出身なので何かお手伝いが出来ればと思って」


しばらくすると家に着いた。そしてまた驚いた。お弁当屋さんの隣家の表札が栗原くりはらとなっていた。聞かずにはいられずにいられなかった。


「失礼を承知に聞きますが、この表札ってもしかして私達が住む為に態々わざわざ付けてくださってすみません。何から何まで」


すると笑いを堪えようと必死で答えた。

「そうなんです。と言いたいところですが妻が栗原くりはらという苗字で私が養子として来たんです。すなわちここにいる全員が栗原くりはら姓なんです。紛らわしくてすみません」


迎え入れてくれた栗原くりはらさんは照れ笑いをして、よそからやってきた栗原くりはらさんは勘違いも甚だしい気持ちで最悪なスタートになった。それぞれ名前で呼ばないと栗原くりはらさんと呼ぶと全員が振り向いてしまいそうだ。


偶然とはいえど、こういう縁もあって受け入れてくれたのかなと思うと感謝しきれない。パパとママ、2馬力で働く予定でいるが実空みそらが通う保育園は見つかるのだろうか?


見つからなかったら保育園を探すことになるが、途中で入りたいと言ってスグに受け入れてもらえるものだろうか?そう考えながら川の字で親子で寝た。

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