主人公シリルは元皇太子。
軍事が尊ばれる国家で彼の「動物を手なずける」だけの能力は評価されず、哀れ、彼は廃嫡されて宮廷を追い出されるのでした。
と、ここまで読んで、「なんだ、典型的な追放ものじゃん! この後はテイム能力でドラゴンやフェンリルをテイムして、彼を追放した王国にザマァするんだろ!」と思ったあなた、不正解です。
確かに序盤で巨大なオオカミのような魔獣をテイムします。でも、一般人を驚かせたらいけないからという理由で彼は殆どお留守番です。いつもいつもお留守番で、主人が帰ってきたら喜んで尻尾振ってるワンコ魔獣が不憫です、ヨヨヨ(嘘泣き)。
そんな元皇太子シリルは知り合ったドワーフの女の子に頼まれてダンジョン制作会社で働くことになり、いろんな依頼をこなしながら、依頼の裏に隠れた謎を解いていく……というお話。
作者さんが別の創作論で書かれている「短編を連ねて長編とする」という手法で書かれており、一つのエピソードが長すぎず、短すぎず、非常に読みやすく、かつ、読後感の良い作品となっています。ぜひご一読ください。
賢く、真面目で誠実な国を追われた元皇太子シリルと優しくて真摯な仕事ぶりで可愛らしいダンジョン建築家のドワーフの女の子ドナという、人物も好感しかないです!
ダンジョンをつくる。
というテーマで、さまざまな依頼者(まさかの魔王様とか)の希望を叶えていく手順やアイデアが「なるほど!そうきたか!」と新章を読み終えるたびに著者である蒼碧様の引き出しの多さが羨ましいです!
シリルの故郷の国の闇の深さ、各領主たちの才能や領地運営など政治的なことも燻っているなかで新たなダンジョン制作も進む物語は先々の展開が楽しみになります。
良質なお仕事異世界ファンタジーをぜひ読んでいただきたいです!
この物語は、軍事魔法国家グロリアスでは無能のレッテルを貼られてしまっている皇太子シリルが、でっちあげられた恥ずかしい罪で国を追放されるところから始まります。
その描写が読者をいきなり笑わせてきます!
戦闘に使えない「動物を懐かせる」魔法の才能しかない彼は、周囲から蔑まれ続けてきました。
そんな彼が、ひょんなことからドワーフの少女ドナと出会い、経営不振の「ぽんこつダンジョン製造所」の再建を手伝うことになります。(ぽんこつの意味は誤解しているようです…)
彼の魔法は、軍事国家では無価値とされてきましたが、ダンジョン製造という新たな舞台で、その真価を発揮していくことになる……
動物だけでなく魔獣とも心を通わせる力、そして皇太子として培ってきた政治的・戦略的な知見は、経営者としては不器用なドナの強力な支えとなる……
本作は、自身の境遇に葛藤を抱えながらも、ドナという最高の相棒と共に、新たな人生を歩み始めるシリルの成長を描いた王道ファンタジーです。
無能と蔑まれてきた少年が、居場所を見つけ、自らの才能を開花させていく姿は、読者の心を揺さぶることでしょう。
彼の魔法が、そして彼自身の存在が、いかにかけがえのないものであるかを証明していく様から、目が離せなくなります!
ぜひ、シリルとドナが織りなす、心温まる冒険の物語をお楽しみください。
蒼碧様の長編作品ということで、レビューを寄稿させて頂きます。
真面目過ぎる性格と才能の無さを疎まれ、挙句、国家予算を使って美少女フィギュアを購入したという濡れ衣を着せられ追放された皇太子シリル。それが、土いじりが何よりも好きなダンジョン経営者、ドワーフの少女ドナと出会い、ダンジョン製造の道へ……という場面から始まる物語。
本作の魅力は何と言っても、主人公となる二人の掛け合いでしょう。基本的に『良い人』ではあるけど、どこか頼りないシリルと、好きなことはとことん追求するけど、それ以外はサッパリなドナ。互いに欠けている要素を補い合いながら、成長していく二人を見守りたい気持ちになりました。
蒼碧様の作品らしく、とても読みやすい文体、自然に物語の世界に入っていけるような配慮が随所にみられ、『こういうのって、専門用語が乱れ飛んでて難しいんじゃないの?』と考えていらっしゃるファンタジー初心者の方にもお勧めです。