第37話「植村さん、気になる」

昼下がり。

大学ではなく、めぐるの住む忠生のアパート。

めぐるが部屋でリコリス弁当を広げようとしたとき──。


今日の献立


ご飯


味噌汁


鶏のガーリックチーズ焼き(香ばしいにんにくとチーズが絡むジューシー鶏肉)


ごま和え(胡麻の風味たっぷり)


カボチャのそぼろ煮(甘じょっぱくほっこり)


漬物


「めぐるちゃん、それ……美味しそうね」

ドアの前から声がして振り返ると、隣の住人・植村恭子さんが立っていた。


「リコリスの弁当です!」

「リコリス……? ああ、最近よく見かける配達の子ね」



恭子さんは遠慮がちに覗き込む。

「ちょっと見せてくれる? ……わぁ、鶏のガーリックチーズ焼き。お店の味みたい」

「ほんとに美味しいんですよ! それに毎回おかずが違ってて、栄養バランスも抜群で」


「へぇ……。私なんて昨日はスーパーの惣菜で済ませちゃったから、なんか負けた気分だわ」

と笑う植村さん。



そこに、ちょうど北山望がやって来る。

「あれ? 植村さんもいるじゃん。……ってか、めぐるちゃんリコリスか。やっぱり町田の人間はそこに行き着くんだよな」

「北山さんまで……なんかリコリスって、本当に町田の共通項なんですね」



植村さんは名残惜しそうに言う。

「……今度そのリコリス、私も頼んでみようかな」


めぐるは嬉しそうに頷き、再び弁当に向かう。

ガーリックとチーズの香りが広がり、カボチャの優しい甘さが後を追う。


献立表の隅にはやはり──


──監修:山岡るり


めぐるは心の中でつぶやいた。

(植村さんも、この味に触れる日が来るのかな)

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