第36話「卵の力」

昼休み。

めぐるがリコリス弁当の蓋を開けた瞬間、鮮やかな黄色が目に飛び込んできた。


今日の献立


ご飯


味噌汁


漬物


オムレツ デミソースがけ(ふんわり卵+濃厚ソース)


欧風ベイクドエッグ(チーズとトマトをのせてオーブン焼き)


カリフラワーのカレー煮(野菜の香りがやさしい)


「おおっ、今日は卵づくし!」

七海れいが箸を構えながら目を輝かせる。

静香は冷静に分析を始める。

「卵は完全栄養食って呼ばれるくらい、たんぱく質もビタミンもバランスがいい。……二品も卵が入ってるってことは、意図的」


「意図的……やっぱりそうなんだ」

めぐるも頷く。

「毎回、必ず野菜があるし、カレーや魚やハンバーグも周期的に。卵も……実は“軸”なのかも」



学食の隅で北山望がちゃっかり弁当を広げていて、笑いながら口を挟む。

「卵はな、町田の命をつなぐシンボルなんだよ。……あ、いや、今のは忘れてくれ」

「えっ!? どういうことですか!」

「さぁな。続きはリコリスの厨房にでも聞けよ」


また煙に巻かれるようなセリフを残して去っていく北山。



食べ終えた献立表の隅。

そこにはやはり小さな文字が──


──監修:山岡るり


めぐるはつぶやく。

「卵の使い方まで、全部この人が……?」


謎と栄養、そして卵のまろやかさが、めぐるの胸に残るのだった。

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