第34話「いつもの昼休み」

今日のリコリス弁当を開けためぐる。

漂ってきた香りに、思わず「ふふっ」と笑みがこぼれる。


今日の献立


ご飯


味噌汁


漬物


牛肉コロッケ(衣サクサク、中ほくほく)


青菜のソテー(さっぱり塩味)


白和え(ほんのり甘み)


「お、またコロッケだ!」

七海れいが真っ先に反応。揚げ物が大好物な彼女は、もうそれだけでテンションMAX。


乾静香は白和えをじっと見つめ、「タンパク質と食物繊維の組み合わせ、これはいい」とひとり分析を始める。

小夜は味噌汁を啜って「こういう普通が一番幸せなんだよね」とのんびり。


めぐるはみんなの表情を見て、自然に頬が緩んだ。

(こうして一緒に食べる時間って、ほんと大事だなぁ)



そこへ唐突に現れた北山望。

「お、コロッケか。揚州商人のまかないと交換する?」

軽口にみんな大笑い。結局、めぐるのコロッケを一口かすめ取って逃げていった。


「……ほんとに自由だよね、あの人」

「まぁ、そういう人がいると平和って感じするけど」



お腹いっぱいになり、めぐるは空を見上げる。

特別な仕掛けも、謎の匂わせもない。

ただの、大学キャンパスでの昼休み。


「……こういう日があるから、また明日のお弁当も楽しみになるんだよね」

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