第31話「魚の周期」

昼休み、日向めぐるは弁当の蓋を開けると、ふわっと香ばしい香りが漂った。


今日の献立


ご飯


味噌汁


漬物


魚のみりん焼き(皮パリ、中ふっくら)


ツナマカロニサラダ(さっぱりクリーミー)


アスパラソテー(塩コショウの香ばしさ)


「……あれ?」

めぐるは魚をひと口食べてから、首をかしげた。

「気のせいじゃないと思うんだけど……魚、定期的に入ってない?」


七海れいが笑う。「魚の日って嬉しいけどね。唐揚げやハンバーグばっかじゃ重いし」

静香は眼鏡をクイッと上げ、「EPAとDHA。青魚や白身魚に含まれる脂肪酸は脳の働きに効果的。リコリスはそこまで計算してる」


「えっ……脳まで?」

めぐるは思わず箸を止めた。



そこへ学内を通りかかった猫丸がニヤリと笑い、唐突に口を挟む。

「魚はな、人の思考を澄ませる。町田を栄養で満たすってのは、そういう意味もあるのさ」


「え? 思考を澄ませる……?」

猫丸はそれ以上言わず、ツナマカロニをつまみ食いして立ち去っていった。



食べ終わった献立表の隅。

小さな文字が目に入る。


──監修:山岡るり


「……やっぱり、この人が全部考えてるの?」

めぐるの胸には、カレーに続いて魚まで“周期的な意味”があるのでは、という疑念が深く刻まれていった。

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