第10話 いまどきラブレター?

 校庭でトークしているサクセスを見上げているゆきちゃんとたかしと、あとえーと、くみこちゃん? の三人は、楽しそうに話をしていた。


 その顔が三人とも輝いていて、俺は気後れしてしまって。

 だって俺ゴリラだから。と、自嘲的になってしまう。

 太い眉がぐっと寄って、眉間がけわしくなっている感じがする。


 俺はいたたまれなくなって、その場を去った。



 次の日、なんか重い気分で学校に行って、でもゆきちゃんもたかしもいつも通りだったから、俺もいつも通りでいられた。

 くみこちゃんは、別のクラスだ。

 そうだ、俺が昨日感じた感情は、俺だけが悩んでいることであって、ゆきちゃんもたかしもきっとくみこちゃんも、俺がゴリラみたいにごつい顔や体だって、関係ないんだろう。俺自身をみてくれていて、昨日と何も変わらない。


 俺だけが、コンプレックスにさいなまれているんだ。

 ただ、それだけのこと。俺だけのこころの問題だ。


 少し気持ちが上昇して、授業と柔道部の部活もおえて、家へ帰ろうとしたときだった。本当になにげなく視線を体育館の裏へやったら。衝撃的なものを見てしまった。


 それは、ゆきちゃんとたかしだった。

 ゆきちゃんが、何かたかしに話していて(声までは聞こえる距離じゃなかった)、少し赤くなって、何かをたかしに渡したのだ。それは、手紙のように見えた。手紙……メールが主流になっている今時分に手紙……。


 それは、俺にはいわゆるラブレターに見えた。


 ゆきちゃんが手紙をたかしに……ラブレターをたかしに。

 渡して、また何かを話して少し離れた。

 たかしは何かうなずいていた。


 ゆきちゃんはたかしが好きなのか? ……やっぱりイケメンが好きなのか。

 ゆきちゃんは俺にすごく優しかったから、俺は勘違いしていたのかな。

 ショックが大きくて、呆然としてしまう。

 俺じゃだめなのか?


「ゆきちゃん……」


 絶望的な気持ちで彼女の名前をつぶやく。

 胸がつぶれそうで、心臓がぎゅうっとイタイ。

 俺はしらず胸を手で押さえていた。

 呼吸ができなくなって、でも心臓は激しく動いている。


 今でていく勇気も、見つかる勇気もなくて、俺はすぐに体育館裏から視線を戻して、ダッシュでその場を離れた。


 学校からの帰り道、俺は考えこんだ。

 ゆきちゃんとたかしが付き合うことになったら。

 俺はどうしたらいいんだろうか。

 いまの教室で一年間、ゆきちゃんとたかしの傍で俺はどうしたらいいんだろう。

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