第28話 古代の守護者とお菓子外交
『虚無の回廊』でのダンジョン探索から、数日。
『生産型移動要塞『フロンティア号』』は、今日も空をゆったりと移動しとったわ。
ミオの工房は、伝説の素材『世界樹の雫』を手に入れて、さらに賑やかや。
(うわぁ、世界樹の雫やで!これ、どんな美味しいお菓子になるんやろ!?ロマンやなぁ!)
ミオは、フカフカソファに埋もれて、資材スライムをモフモフしながら、至福の時を過ごしとった。
資材スライムは、ミオの膝の上で、気持ちよさそうにぷるぷると震える。
ダンジョンの最奥で、一行は、まばゆい光を放つ巨大な樹、『世界樹の雫』を発見したんや。
それは、世界の生命力を維持する根源的な存在であり、その魔力は、世界の始まりの時代からこのダンジョンに眠っていたと言われている。
その輝きは、まるで小さな太陽のようやった。
「な、なんという魔力……!これほど純粋な魔力は、見たことがない!」
エリアスが、震える声で呟く。彼の瞳は、知識への探求心で爛々と輝いている。
ゴルムはんも、世界樹の雫の輝きに、目を奪われている。
「これほどの素材、我らがドワーフの鍛冶師の夢じゃ!ワシの知らない技術が詰まっているに違いない!」
ライオスたち「暁の剣」パーティも、伝説の素材を目の前にして、冒険者としての血が騒いどる。
ルナリア姫とリリアーナ王女も、好奇心いっぱいの目で、世界樹の雫を見つめていた。
世界樹の雫の前に立ちはだかっとったんは、古代の守護者「原初のゴーレム」やった。
ゴーレムは、石と魔力でできた巨像で、その目からは赤い光が放たれている。
体表には、苔むした岩石と、古代文字が刻まれている。その巨体は、ダンジョンの天井に届きそうなくらいや。
「我は、世界樹の雫を守る者。侵入者は、排除する!」
ゴーレムの低い声が、ダンジョンに響き渡る。その声は、岩壁を震わせるほどや。
ライオスたちが剣を構え、フィオナが魔法の準備に入るが、ゴーレムの放つ圧倒的な威圧感に、一瞬動きが止まる。
(ゴーレムやん!めっちゃデカい!これは、美味しいお菓子で懐柔するしかないやろ!戦うのはめんどくさいし!)
ミオは、目を輝かせた。戦うことよりも、いかに楽に目的を達成するか。それがミオのポリシーや。
「ちょっと待ってや、ゴーレムはん!うちは、あんたを排除しに来たんやないねん。美味しいお菓子、持ってきたんやけど、食べてくれへんかな?」
ミオは、資材スライムにそっと耳打ちした。
「スライムはん、この世界樹の雫使って、最高の魔力お菓子作ってくれへん?ゴーレムはんが喜ぶようなやつ!」
「ぷるるるるるーっ!!」
フルーツ好きの資材スライムが、嬉しそうに世界樹の雫に飛びつき、モグモグと食べ始めた。
雫は、スライムの体内で、みるみるうちに甘い香りを放つ、美しい七色の液体に変化する。
ミオは、その液体を使い、その場で『世界樹の雫入りレインボーケーキ』を生産した。
ケーキは、七色の層が美しく重なり合い、そこから世界樹の雫のまばゆい光が放たれている。
甘い香りが、ダンジョン全体に広がる。ゴーレムの赤い目が、わずかに揺れる。
「これを、食べてみてください。きっと、お腹も心も満たされますよ」
ミオは、ゴーレムにレインボーケーキを差し出した。
ゴーレムは、不審そうな顔でケーキを見つめる。その巨体から、警戒の魔力が放たれる。
「侵入者は、排除する……だが、これは……?」
ゴーレムは、震える巨体でレインボーケーキを一口食べる。
その瞬間、ゴーレムの赤い目が、大きく見開かれた。
「な、なんという甘美さ……!世界樹の雫の魔力と、この甘さ……これは、至宝……!」
ゴーレムの声が、どこか恍惚としている。彼の全身から放たれる魔力が、安堵の波動へと変わっていく。
ゴーレムは、あっという間にレインボーケーキを平らげた。その姿は、まるで小さな子供がお菓子を食べるみたいや。巨大な手が、もう一切れ、とミオに差し出された。
「まさか、ゴーレムがこんなに可愛いなんて……」
フィオナが、目を丸くして呟いた。ライオスもシエラも、その光景に呆然としている。
ゴーレムは、ミオの作ったお菓子のおかげで、あっさり機嫌が直り、平和的に世界樹の雫を得ることに成功したんや。
「感謝する。貴女の作ったお菓子は、我の使命を一時的に停止させた……。世界樹の雫は、お主らに託す」
ゴーレムは、そう言うと、静かに目を閉じた。その巨体から、微かな光が放たれ、ゴーレムは眠りについた。
(うわぁ、めっちゃ平和的に解決できたやん!お菓子外交、最強やな!これも、ロマンやん!)
ミオは、ちょっとだけ得意げやった。
遺跡の奥深くには、他にも古代文明の謎が眠っとったんやけど、資材スライムたちが罠を解除したり、ゴーレムの素材をモグモグしたりして、あっさり突破。
ミオは、資材スライムたちが集めてきた古代の遺物の中から、古い石板を見つけた。石板には、エリアスでも読めないような、さらに古い古代文字が刻まれている。
(読者の疑問回収:ミオの「究極の生産」能力が、古代の技術と何らかの繋がりがあることを示唆する程度に留める。能力の起源はまだぼかす。)
その石板からは、微かに魔力が漏れ出ていて、ミオの能力が反応した。
(あれ?なんか、眠くなってきた……)
ミオは、石板に触れたまま、うとうとし始めた。
「ふぁ~あ……」
眠りながら、ミオの脳裏には、古代の技術の断片が、走馬灯のように流れ込んできた。
『魂の鍛造術』と呼ばれる失われた技術のヒントが、夢の中でミオに語りかけてくる。
フロンティア号は、伝説の素材『世界樹の雫』と、新たな古代の知識を積んで、次の目的地へと向かう。
世界は、ミオのチート生産能力と、彼女のゆるふわな行動によって、また少しだけ平和になったんやな。
王族や冒険者たちも、ミオの奇跡に、もう慣れてきたみたいや。
資材スライムたちは、新しい素材を見つけては、嬉しそうにモグモグと食べている。
「ぷるる~♪」
工房の中は、今日も平和な音色に包まれていた。
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次回予告
世界中で、うちのチート生産の技術が模倣されとる!?
王都の市場は、模倣品のドタバタで大混乱!?
資材スライムはんたちは、模倣品を「まずいぷる!」って評価するんやろか!?
そして、うちのチート生産の影が、世界にどんな影響を与えるんやろ!?
次回、チート生産? まさかの農奴スタート! でも私、寝落ちする系魔女なんですけど!?
第29話 技術の流出と模倣品のドタバタ
お楽しみに!
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