番外編2:子どもたちの冒険
俺、
「夏休み最後の2週間ほどを目安にしたいと思っています。
夏休みが始まる前から、我らが院長ははしゃぎ切っていた。
この親バカは普段はとても冷静で、頼れる人間だというのに、娘のことが絡むと一気にダメ人間になってしまう。
「……あー」
俺は
「──『冒険者としての活動体験』……か。子どもだから冒険が好きなんじゃないかって思ったのか」
旅行プランには、冒険者としての活動を体験するというものもあった。俺と
「……まぁ、俺たちがいるから危険はないか」
普通に考えれば中学生にはまだ早い気がするが、俺と
これは自惚れなどではなく事実だ。
「それと……『奴隷商見学会』?……あいつ、やりやがったか……」
そして『奴隷商見学会』と書かれた欄には、説明として『命が売買される現場を見ることで、社会を知る。そして奴隷商を間接的に潰しにかかることで社会を動かす練習をする』と書かれていた。
あいつのことだから、きっと今回も強引に何かをするに違いない。子ども達の旅行の内容がそれで良いのかは正直分からない。
「『旅行には、補助として
一通り読んだ御形は、仕事に行くために家を出た。
***
「じゃあこれからこの世界の冒険者ギルドに登録しに行きますよ。ついてきてくださいね」
「はーーい!」
「はい!」
「…………おー」
「1人元気ないけど、出発しましょう!」
旅行初日、いきなり芹たちは冒険者ギルドへと向かった。
異世界へのゲートから冒険者ギルドまでは歩いて20分ほどであろうか。芹たちは足が早いためすぐに到着した。
「すみません、登録したいのですが」
「あ、はい、少々お待ちください」
カウンターにいた受付嬢に、石山は話しかける。
それに受付嬢は応じた。
そして数分後。
「お待たせ致しました。それでは、これから能力値の測定を行いますので、この水晶に1人ずつ触れていただきます。これが、今後冒険者としてどのように活動していくかの参考になります。なお、水晶の能力値を確認した後に、簡単な登録試験を行いますので」
「分かりました……では早速」
2人の目を確認すると、芹は2人の背中を押した。
「お願いします!」
「宜しくお願いします!」
2人は元気だった。
ところが、ここで思わぬ展開になる。
「えっ……、もしかしてその子たちも登録するんですか?」
受付嬢が、水晶に近づこうとした2人を止める。
「この子たちしか、登録しませんよ」
「え?」
「おや、年齢制限などありましたか?」
「いえ、そう言う訳ではないんですけど……。流石にまだ子供ですし……、冒険者はとても危険な仕事ですので……」
受付嬢は、2人のことを心配しているようだった。確かに2人はまだ10代前半であるため妥当な判断だと言える。
「ですが、私たちがついていますので大丈夫ですよ。2人は私と御形くんが絶対守りますから」
だが、芹は気にしていないようだった。
「お、お子さんですか?し、しかし……!」
「大丈夫ですよ、では、取り敢えず水晶で2人の能力値を見てみましょう。それでダメだと言うのなら、諦めましょう」
「……それなら、まぁ……」
受付嬢はやや不服そうであったが、ひとまず了解が得られたため、まずは真也が水晶に触れる。
すると──
「え゛っ!?!?」
おっとりと話していた受付嬢から発せられたとは思えないような大きな声がギルドに響き渡った。
―――――――――――――――――――――
【ステータス】
名前:シンヤ・アラガミ
年齢:14歳
肩書:
職業(才能):勇者
レベル:32
HP:1200
AP:2200
MP:100
DP:370
―――――――――――――――――――――
「ゆ、勇者ぁ!?」
受付嬢は、思わず水晶を凝視する。
「おお、真也くんは異世界用に少し能力値をいじったのですね」
「ちょ、どういうこと!?こんな場所に勇者!?何で!?本当にあってるの!?」
受付嬢は激しく動揺していた。
「じゃあ、薺ちゃんもやっちゃいなよ!」
「そうだね!」
そして間髪入れずに薺も水晶に触れる。
―――――――――――――――――――――
【ステータス】
名前:ナズナ・イシヤマ
年齢:13歳
肩書:
職業(才能):賢者
レベル:13
HP:100
AP:2
MP:2800
DP:3
―――――――――――――――――――――
「けっ……?…………あれぇ、ああ!なんだ、夢かぁ!!」
受付嬢は、もはやこれが現実だとは思っていなかった。
「いや、芹……こっちは一応異世界用に調整したっていうのに。さては何も
「あはは、大丈夫だよ、私が付いているからね」
「はぁ……」
ちなみに、この世界におけるレベルは、1歳歳を取るごとに1レベルが上がる(ただし、この方法で上がるのはレベル25まで)。
とは言え、実は本人の素質に関しては全くいじっていないのだが。
一方、完全にテンションがおかしくなっている受付嬢を前に、真也はどうしたものかと思っていた。
「あ、あの。石山先生、僕たちどうすれば良いですかね?」
取り敢えず、真也は芹に尋ねた。
すると芹は──
「あー、えーとですね。このままでも問題はないんですけれど、お偉いさんを呼ぶのでちょっと待っててくださいね」
そう言って芹は、受付の前に立つと、胸元から何かカードのような物を取り出した。
「彼を呼んでもらえますか?」
「……!?はいっ、少々お待ちください!」
そして数分後。
「おお!イシヤマさんじゃないですか。本日はどのようなご用件で?あ、もしかして『あれ』ですか?」
「ええ。お願いしたします」
「お安い御用ですよ」
***
「──はい、これで登録が完了いたしました」
「……ようやくか」
「こらこら、御形くん。文句を言ってはだめですよ?ここはそんなにまだ発展した土地ではないのだから」
「……はいよ」
「では、早速この世界を回ってみましょうか」
「「はい!」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます