第3章:さらなる救済を求めて
Prologue:異世界教育改革
「──はい。というわけでですね。やはりこの世界には、
「なるほど、教育ですか。流石です、
「……(こいつ、もう断定してやがる)」
真面目過ぎるというのか、硬すぎるというのか、先読みしすぎというのか、どこか無理をしているように見えるというのか。それに彼女は、芹のことを尊敬しているが少し依存的にも見える。
しかし……とは言え彼女にとって芹は命の恩人だ。彼女の目に光を灯したのは、まぎれもなく芹なのだから。依存したくなる気持ちは分からなくはない。
「そう、教育です。この世界の人間その他種族、特に平民より下の階級の者は、そもそも文字すら書くことができないのが現実です。これをどうにかしない限り、この世界に未来はないと言ってもいいでしょう」
大袈裟な、と思うかもしれないが、実際はそこまで大袈裟ではない。教育がろくに行われなかった社会は、本当に悲惨な未来を形作る。
「……となると、お前のことだから、もう計画を立てているのか?」
「ええ、その通りです、御形くん。私は、この世界に新たに学校を作ろうと思っていますよ!」
***
──次の日の早朝。
「……よし、建設完了!」
病院がある町外れの高原に、
完成したばかりの鉄筋コンクリート造4階建の校舎は、芹が魔法も駆使して1日で建てたものだ。雰囲気を出すため『石山芹建設』という旗を立てているが、実際には芹しか作業員はいない。
「いやー、頑張ったものですねー。異世界に支部を始めて作ってから1日で、今度は学校を作ることになるとは。これだから、旅というのは分かりませんねえー」
そんな中──
「…………芹様!?」
何やら慌てた様子で病院から
「おや、どうかしましたか?」
芹は栄養ドリンクを飲むのをやめ、彼女の方へ向かう。
「こんな時間に何をされているのですか!?このような作業、私たちにお任せください!!
心配した様子で、
「ああ、そういうことでしたか。大丈夫ですよ。私は
「し、しかし……」
「君たちには無理はさせたくないんです。こういう仕事は、私のような者が強引に進めてしまった方がいいですからね。人件費の節約にもなります」
「そんなことは……」
芹は自らの心配を一切しない。自身が動けなくなるとは微塵も考えていないからだ。それは客観的に見て正しいのたが、
「それに、私には仲間がいます。ですから、大丈夫ですよ。さあ、せっかくです。そろそろ、新しい施設の使用について、話し合いましょう」
***
「……え?学校、ですか?」
「はい」
この国における最大級の商会である『モード商会』。
日用品から奴隷まで、あらゆる品物をそろえるその組織の頂点である商会長のヘンサの前に、今
「そうです。この国には残念ながら一般人が通うことのできる教育機関が存在しません。教育が受けられなければ、咲くはずだった才能や経験が生まれないことになります。ヘンサ商会長、是非今回の計画にご協力いただけないでしょうか?」
「そうですね……」
ヘンサは頭を抱える。確かに、
実際は、教育とは上流階級のみが得ることのできる一つの『特権』であり、一般市民がその権利を得るなど、上流階級の人間が許すはずもない。
「……申し訳ありませんが、現実的とは言えないでしょう……」
「そうですか」
「一応、模索はしてみますが、これに関してはあまり期待なさらないようお願いします」
「分かりました」
そう言うと、芹はヘンサのもとを後にした。
***
「で、どうするんだ?」
「そうですねー」
病院の一室にて、芹と御形が2人で話していた。
「…………正直、お金が足りませんねぇー」
「いやそこか」
「いやー、流石に商会長の後ろ盾がないのなら、私も本気を出さざるを得ませんね……資金調達に」
「本気のお前が何をやらかすのか、怖いったらありゃしないんだが……」
最近、また支出が増えて病院の経営が苦しくなりつつあった。奴隷を全員買った上で雇ったことや、その他色々なことが影響している。この世界だけにお金を使っているわけでもない。
「とりあえず、お金がないことには、始まりませんからね。まぁ……最悪商会長を脅しましょう。奴隷商売をやっているようなクズはそもそも好きではありませんから」
学校を1つ運営するだけならば、
しかし問題は、それをやってもこの世界の『発展』には繋がらないということ。
芹だけが一時的に頑張っても次世代には続いていかない。ある程度はこの世界の人間が頑張って後続を育てなければ未来は切り拓けないのだ。
「ゆくゆくはこの世界に学校があるのが当たり前にしたいですからね。給料を払って人材育成するのは必須です。ハッピーエンドは、この世代だけのハッピーエンドではダメなのです」
「…………で、資金のあてはあるのか?」
「ええ。
御形は嫌な予感がした。
そしてその予感は的中すら。
「『意思のない』『被害を出した』魔物を倒す──すなわち、
何故か芹の目はキラキラとしていた。
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