二十九輪 帰還

シャーロットサイド


「別に防犯映像を復元しなくても、カルロッタがその時間、本当に情報を持ち出せる状況になかったことを証明すればいいんじゃない?」


マリンさんは端末を操作しながら、近くのコンビニの防犯カメラの映像を片っ端から確認し始めた。


「ディルタの関係者は一般には知られていないから、噂の発信源は特定できない。でも、カルロッタがその時間どこにいたかを示せれば、それが一番の証拠になるよね」


慎重にデータを解析し続けるマリンさんの指が、急に止まる。


「……あった!」


マリンさんの声に、私たちは身を乗り出した。

画面には、カルロッタさんが外に出るときの変装をしてコンビニの前で買い物をしている姿が映っていた。

日付と時間は、まさにカルロッタさんが情報を持ち出したと疑われている時間と完全に一致している。


「これだ……!この映像があれば、カルロッタがその時間ディルタとは関係のない場所にいたことが証明できる。」


マリーさんが安堵の息をつきながらも、慎重に続ける。


「でも、この映像だけじゃ不十分。改竄されていないことを確認しないと、証拠として受け入れてもらえない」


ルーカスさんがすぐに解析を開始する。


「映像のメタデータを確認……問題なし。この映像はコンビニの公式記録とも完全に一致してる」


マリンさんが頷く。


「これなら、公的な証拠として提出できる」


マリーさんは手元のデータを整理しながら言った。


「前後1時間の映像もチェックするべきだ。カルロッタがずっとここにいたと証明できれば、ディルタの関係者と接触したという疑惑は完全に否定できる」


マリンさんは再び端末を操作し、防犯カメラの映像を確認する。


「……よし。カルロッタは情報盗難疑惑の時間の前後にもこの周辺にいた。この映像が決定的な証拠になる」


マリーさんがにやりと笑う。


「これなら言い逃れはできないな」


全員がホッとした顔を見せる。


「この証拠をすぐに提出する」


すぐにマリンさんが証拠を整え、関係者へ正式に送信した。

翌日、アビゲイルから、通信機ごしに連絡が来た。


『カルロッタにかけられた疑惑は、根拠のない噂によるものでした。これをもって、この事件の犯人には彼女が無関係であることを正式に証明します』


……やっとだ。

やっと、カルロッタさんの危機はようやく終わった。

私たちは顔を見合わせてハイタッチをする。


はやくカルロッタさんに伝えに行かなきゃ。

私は急いで変装を済ませ、静かにカルロッタさんの、今居候としてお邪魔している家に向かう。

ドアーチャイムを鳴らし、中から人が出てくるまで待つ。

変装したカルロッタさんに、一通の手紙を差し出した。

カルロッタさんは慎重に封を開く。


『カルロッタさんの疑いは、すべて晴れました。いつでも戻ってきてくださいね。みんなで待ってます』


カルロッタさんは手紙を見つめたまま、そっと微笑む。


「……ありがとうございます」


長かった戦いは一段落し、ようやく静かな、暖かな日常が戻る。

その兆しが、そこにはあった。

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