第7話 国家とアドリブ

 ここで父様について話したい。

 父様は別の国の出身だが、功績をあげ貴族になった。

 ではその階級は? シゼンレリアル・レヌウラータである。そう地球の男爵だとか、どうだとかの階級ではないのだ。英再伝の知識がなければお手上げだったね。


 この階級の名前は、国の創世物語に出てきたえら~い人たちの名前だったりする。

 上から説明すると。

 王。ここはさすがに変わらなかった。覚えやすくてありがたいね。

 東西南北のまとめ役。

 東の、シゼンレリアル。

 西の、ガラクエイ。

 南の、アスラムヴーア。

 北の、ウールメディカ。


 その下に北東、南東、南西、北西の4方位を守護する。

 レヌウラータ。

 こっから呼び名は一つだけなので安心してほしい。


 北北東、東北東……など、8方位の守護をする。

 ランビル。


 その下の。

 バーゲス。


 の下の。

 ホス。


 で、もう1回父様の階級名を日本語に訳すると

 シゼンレリアル(東に所属する)レヌウラータ(南東守護者)となる。

 南東何処から生えたと思うだろうが、シゼンレリアルのレヌウラータは南東と決まっているので略されている。う~ん不親切。

 ちなみに略称してシゼンのレヌとか言ったりもするみたいだよ。


 気がついた人もいたと思うだろうが「いやいや、これ軍隊の階級じゃね?」とお思いだろうが…… そうだよ! としか言えない。


 この世界は日常的にモンスターに襲われていので『何はなくとも力こそすべて!!』という脳筋な所があり、えらいのは強い奴なのだ。小学生かな?

 上の階級になればなるほど総合力を求められるらしいので本当に脳筋ってわけではないらしいけど。

 物の本にはこうある。貴族とは……弱きを助ける、力ある高貴な精神の者。文化としてノブリスオブリージュが根づいているのだ。いや、任侠かな?

 まあどっちでもいいけれど、そのおかげで他国出身の父様がずいぶんと上の階級にもなれたりする国、それがアルフアル王国である。


 で、そんなエライ階級の父様はけっこう忙しい。場合によっては何日も帰ってこれない日が続いたりするが今はユズリハのこともある、切羽詰まって無ければ帰ってくると信じて僕は玄関前で待機していた。


「む~~……」

「若様、そのように空を見つめても、早く帰っては来ませんよ? 御屋形様が帰ってきたらお知らせします故、中でお待ちくださいな」

「今中でじっとできる自信ないので……」


 今僕に話しかけているのは、カエデ。父様についてきたメイドってか女中。狐の獣人、糸目キャラ。こっちをしょうがないな~という風に見つめている。


「では寒くならないようカエデが温めて差し上げましょう」


 僕を後ろから出し決めるカエデ。


「む~……なぜみんな僕のことを抱きしめるのでしょう?」

「若様は大変可愛らしいですから、構いたくなってしまうのですよ」

「背がのびるまでの辛抱ということですか……」


 そんな風に待っていると遠くの空からこちらに近づいてくる父様の騎獣、グリフォンの姿が見えた。


「ただいま? どうしたアツキ?」


 グリフォンが庭に着地し降りてきた父様の困惑した声が庭に響く。


「父様!!」

「お、おう」


 ん? パッションだけが先行してどう説得するのか考えていなかったな。なんだ? 精神が体に引っ張られてる的な奴か? ここまで来たんだアドリブで乗り切ろう!


「僕がユズリハを守ります!!」

「え?」

「あの子の事情を聴いて、大変な目にあったのを聞いて、僕は自分が恥ずかしくなりました! この国の貴族として、剣術を学んで大会で勝って、強くなったつもりでいました。」


 嘘です。姉さまにそんな気持ちは一瞬で砕かれてます。


「でも、そんなのじゃ足りない! 僕はまだ何もできていない! だからっ!」


 だから……すぅー、だから……えっと……


「僕は今日ここに誓います! 僕がユズリハを、妹を守ります!! あの子の幸せを守れる強い兄になります!! ですから僕を強くしてください!!!!」


 言うと同時に頭を下げる。魔法教えてくれ~~~~!! 


「アツキ……」

「若様、ご立派ですっ!」


 感極まってる声が聞こえてくる。なんか感触は悪くなさそうだし、とりあえず頭下げたままにしとこ。

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