第4話 ゲームのミツヒサ家
ユズリハ・シラヌイのプロフィールにあったが、誰もその笑顔を見たものはいない。
この原因、僕である。
まあ、僕というかゲームの登場人物であるところの、アツキ・ミツヒサ君だ。
なぜ僕が3年後に死ぬかというと……
ゲーム内では3年後、どこかで開催される狩猟際に家族そろって参加し、人ごみの苦手なユズリハを気遣ったアツキ君は彼女を連れて周囲の散策に出る。そこでモンスターに出会い彼女を逃がすためにアツキ君は犠牲になる。そりゃもう、悲惨なもので生きたままおなかの中を美味しくいただかれてしまうらしい。
その場を発見し発狂しながらもモンスターを倒すのが我が姉、シノン・ミツヒサ。うちの姉はふにゃふにゃふわふわとした少女然とした人なのだが。その日を境に何もやる気のない無気力人間になる。そのまま才能を腐らせるのを惜しまれ、王国の兵士となる(無理やり)やる気はないのに強いから近衛騎士になってた。ゲームの本編でも登場していたのだがあまりにもビジュアルがかけ離れていたので思い出せなかった。ダウナーお姉さんキャラだったんだよ。
母様はあまりのショックに心を病み数年後に亡くなる。
父様は自分を攻め、逃げるように仕事(モンスター殲滅)に没頭する。母様にも先立たれゲームで解決するまで家族ともぎくしゃくする。
で、ユズリハはモンスターに幸せを壊され続け、モンスター絶許ガールへと変貌する。ついでに言うと姉さまに僕の死をお前のせいだとなじられ続ける生活となる。そりゃ笑顔なんて浮かべられないだろう。ゲームではレオンに救われるのだが……
「流石に死ねないな」
僕の目的はレオンの活躍を間近で見る。お化けになって背後霊よろしく特等席をもらえるならいいかもしれないが……流石に愛する家族をぽいっと捨てられるほどは僕も人間が終わってはいない。
「っそうだ……だめだ! 英再伝のラストって……」
英再伝のラスト。それはレオンと結ばれたヒロインが力を合わせた大魔法により魔王を倒すが。その反動として、レオンとヒロインは死んでしまうのだ。最後は100年後~のテロップとともに世界を救った2人の銅像の前でその時代のアルフアル学園の生徒が
「僕も必ずあなたのような英雄に……」
と続編の匂わせをしてEND。この終わり方も人気でない原因の一つだったんだよね。
「でも、僕が頑張れば、その結末を変えられる? いや、変えよう!」
口角が上がる。ニヤニヤが止まらない。あのエンディングも僕的には感動的であったがやはりハッピーエンドを、レオンがちゃんと1人の人間として幸せになる世界が見たい。
「フフフッ、だからこそ、まずは近々の脅威に対処しなけりゃね。捕らぬ狸のってなってしまってはつまらない」
その日は一日中今後の計画を練って過ごした。
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