第30話 もう絶対に悪いことはしません
「お前みたいなゴミ人間の奴隷になるくらいなら、死んだ方が遥かにマシだよ、バーカ」
僕はゴミに向かってそう吐き捨てた。
当然ながらそのゴミは激高する。
「て、てめぇっ!? いま自分がどういう状況にあるのか、理解してんのかっ!?」
「そりゃそうでしょ? 理解した上で言ってるに決まってるじゃん」
「っ……ああ、そうかよっ! だったら、お望み通りぶっ殺してやるよっ!」
大剣を構え、距離を詰めてくるゴミ、もとい、ゲイン。
ただ、頭は悪くても〈そよ風〉で吹き飛ばされたことは覚えているのか、少なからず警戒している様子だ。
もちろん今回もまた〈そよ風〉でゴミのように吹き飛ばしてやってもいいのだけれど、あえてその接近を受け入れた。
やがて大剣の間合いに入ると、大上段から振り下ろしてくる。
「死ねっ!」
ガンッ!
だけど刀身が何かにぶつかり、途中で停止した。
「な、何だ!? 壁のようなものがっ? ぐっ……硬くて剣が動かねぇ!?」
満身の力で刀身を押し込んでこようとするけれど、まったくビクともしない。
ならばと、ゴミゲインはいったん剣を引こうとしたものの、
「剣がっ……て、てめぇっ、何をしやがった!?」
「何って、魔力で止めてるだけだけど」
「なんだとっ!?」
ゲインの大剣を防いだ壁の正体は、僕の魔力だった。
さらに魔力を操作することで、大剣そのものを動かなくしてしまったのだ。
「嘘を吐けっ! 魔力にそんな真似はできねぇはずだぞ!?」
「できるよ? 相応の魔力量と、相応の操作技術があればね」
確かに以前の僕にはできなかった。
でも魔力量と魔力の操作技術が向上したことで、ゲインの大剣を受け止められるだけの強度にまで魔力を凝縮できるようになったのである。
「だ、だがっ、剣なんざなくても、てめぇごとき素手でぶっ倒して――っ!?」
「身体の方だって、同じように拘束できるに決まってるでしょ?」
僕の魔力に絡まれ、身動きを封じられるゲイン。
「ば、馬鹿なっ……そんなはずはっ……」
ここにきてようやく自分が狩る立場ではなく、狩られる立場だということを理解し、ゲインが戦慄する。
「やっぱり甘かったみたいだね。あのとき軽く痛めつけただけで許してあげたのは間違いだった。もっと徹底的に懲らしめてやらないと、こういうクズは反省なんてしないんだよ」
「ひっ……」
僕がシルアのように甘くはないことを本能で察したのか、ゲインの頬が思い切り引き攣った。
「どうしようかな? ……まぁ、とりあえず、一つずつ試してみようか。まずは……〈水生成〉」
「ぶごごごごっ!?」
ゲインの全身を取り囲むように水を作り出す。
呼吸を奪われたゲインの顔が、見る見るうちに苦悶に満ちていく。
「ふふ、これ、いいね。いったん解除っと」
「ぶはあああっ!? ぜぇぜぇぜぇっ……」
「あ、今ので終わりじゃないよ? そうだね……百回くらいはやろうかな?」
「ひゃっ……」
「〈水生成〉」
「ぶごごごごおおおおっ!?」
これを十回くらい繰り返した頃だった。
「っ……げほげほげほっ!? や、やめてくれっ……あ、謝るっ……謝るからっ……もう許してくれぇぇぇっ! 百回もやられたら死んじまう……っ!」
「あはは、僕を殺そうとしておいて、その命乞いは意味わからないね。許すわけないじゃん?」
涙目の懇願を一蹴する。
「というか、むしろそれだけで終わりと思った? さっき、まずは、って言ったでしょ? 水攻めを百回やったあとは、火炙りでもしてみようかな。大丈夫、火傷は〈修繕〉で治してあげるからさ。まぁ、本来は人間に使えるやつじゃないから、気絶するほど痛いと思うけど」
「~~~~~~っ!?」
ゲインの顔が絶望で歪む。
「もう二度と悪いことはしませんと、心の底から誓うなら考えてあげてもいいけどね」
「ち、誓うっ! オレはもう二度と悪いことはしねぇ! 今の犯罪グループからも足を洗って、まっとうなやり方で生きていく!」
やっぱり冒険者をクビになってから、犯罪グループに身を置いているようだ。
牢獄から脱走する際に手を回してくれたのも、そのグループなのだろう。
必死に宣言するゲインに、僕はうんうんと笑顔で頷いてから、
「全然ダメだね。口だけでまったく反省していない。やり直し。〈水生成〉」
「ぶばばばばばばばばっ!?」
「……本当に申し訳ありませんでした、ライルさん」
「うん。反省してる?」
「心の底から反省しています……。私は本当に愚かでした……。ライルさんがおっしゃる通り、生きている価値なんてない、ゴミクズのような人間でした……。ライルさんはもちろんのこと、シルアさんにも本当に酷いことをしたと思います……。弁明の余地もありません……」
「もう悪いことはしない?」
「はい、もう絶対に悪いことはしません……」
「本当に?」
「神に誓ってしません……」
色んな方法で痛めつけ続けたら、ゲインはすっかり大人しくなった。
完全に生気を失った虚ろな目で、ひたすら自責と謝罪を繰り返してくる。
「じゃあ、このまま牢獄に戻るね?」
「戻ります……しっかり罪を償って、更生して……これからは、余のため人のために、役立つようなことをして生きていきます……」
というわけで、僕はゲインを連れ、捕らえられていた牢獄に戻った。
まさか逃げた犯罪者が自ら素直に戻ってくるなんてと、看守たちは大いに驚いていた。
そんな彼らに、僕は告げる。
「あなた方の中に賄賂を受け取って、彼を逃がした人がいますよ」
「「「えっ!?」」」
「アルフレットという人はいますか?」
全員の視線が一斉に一人の看守へと向いた。
「~~~~っ!? お、俺じゃない! そ、そんなことはしていない!?」
「この人で間違いない?」
「はい……その人で間違いありません……」
「~~~~っ!?」
ゲインの脱走を補助したその看守は、その場ですぐに拘束され、処罰されたのだった。
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