第2話~関西人、ヒロインを助ける~


 夏目 詩奈(なつめ しいな)…いわゆるギャルキャラ。ギャルらしい金髪(俺が通う学校は風紀が緩いらしい。ピアスとかもええねんて)。底抜けに明るい子でギャルらしいキャピキャピした「The 陽キャ」や。誰にでも明るく接して仲良くなれる子で、主人公の「今宮 俊哉」とは幼馴染。あと残りの2人のヒロインも詩奈と俊哉と幼馴染。


 天真爛漫な性格で翻弄。愛らしい仕草、言葉遣い、態度で主人公をドキドキさせまくり。せやけど、今この状態と一緒でギャルな見た目が災いして、やっぱりチャラ男に絡まれるねんな。そこを俊哉が身を挺して助けるんやけど、ボコボコにされてまうねん。せやけど、自分を庇って一身で守ってくれる俊哉に心を惹かれて思い切って告白。俊哉からOKもろてお付き合い。


 キスシーンなんかギャルらしからぬ乙女っぷりで、プレイヤーは「あまーーーーい」とかようSNSで悶絶しとる呟き見たわ。それくらいかわいらしいねん。


 甘酸っぱい生活から一転、大樹に詰め寄られるんやけど一切お断りの姿勢を見せてた詩奈なんやけど、無理やりモノにされてまうねん。高校生のくせにどっから手に入れたかわからへん危ないお薬を打たれて…それとプレイの快楽に堕ちていく詩奈。最終的には…その…キメセク中毒にされてまうねん。何とかぎりぎりで踏みとどまってた詩奈にトドメを刺したんは、俊哉の前での公開プレイ。


「俺らはこんなに愛し合っとんねん!邪魔すんなや!」

「大ちゃん気持ちいいのおおおお!!」


 これを見た俊哉は絶望。俺らも絶望。完全に壊れて快楽堕ち。そのあと大樹と詩奈はまあ当然逮捕されるわけで、ようやく大樹の呪縛から解放されんねん。そうして数年後、更生施設から退院して真っ当な生活を送ろう。俊哉とやり直そうと言う思いを胸に歩き出したところでスタッフロール。天王寺マジ最悪やなと悪態を吐いて終わったと思ったら問題のスタッフロール後や。


 真っ当な生活を送ろうとした詩奈を待ってたんは退院を待ちわびた天王寺と仲間。


「お前のせいで俺までパクられてムショ行きやった。お前だけ更生して真人間になんかなれる思うとんのか?」


 下衆な笑顔で待っとった天王寺に連れ去られて…またお薬打たれて、今度は逃げきれずに男にマワされ続けて、違法な店に放り込まれて。


「おくしゅり…おくしゅりください!なんでもしますからぁ!」


 薬漬けでぶっ壊れた詩奈のCGが出て詩奈編終了。終って文字が出てタイトルに戻った瞬間、俺は奇声をあげながらパソコンのモニターを窓から外へぶん投げそうになったわ。このシナリオ書いた奴、天王寺がそのまま乗り移ってんのちゃうんかって思うくらいやった。ほんまクソなシナリオライターやったわ。


 そんな悲惨な終わりを迎えた夏目 詩奈がそんな目に遭う前。せやけどこのままいったらもしかしたら薬漬けエンドを迎えてしまいそうな状況。そんなん、目の前の女の子が夏目 詩奈やったらなおさら放っておかれへんわ。俺は角からヌッと姿をチャラ男らの前に出した。


「お邪魔しまんにゃわぁ」


 チビデブの生前やったらこんなチンピラでもたぶん足ガックガクやったんやけど、今の俺なら何も怖いことなかった。せやから余裕で笑みさえ浮かべて前に出たったわ。


「ああん?何だテメエ?」


「お前うちのクラスメイト、こんなとこに誘い出して何してんのん?」

「お前に関係ねえだろ!邪魔だからどっか行け!」


「てか何だこいつ。変な方言使いやがって、馬鹿なのかよ?」


 俺はその言葉を聞いた瞬間頭に血が一気に昇った。このクソボケ…世界に通ずる関西弁をコケにしよったわ。しかもアホやのうてバカって言われたわ。


「俺アホよりバカ言われるほうがめっちゃムカつくねん。おまけにおどれらのせいで腹減ってるのに晩飯遅なるやないかい…」


「……え、え、もしかして…天王寺…クン?」


「知るかよ馬鹿が!!!いっぺん死んどけや!!」


 ひょろひょろの金髪の兄ちゃんが殴ってきたわ。俺はとりあえず殴られたっちゅう大義がほしかったから顔をおもっくそ一発殴られた…殴られたんよな?なんか、全然痛ないんやけど…?


「オラ、痛えだろ!もっとボコボコにされたくなかったら…え?」

「キミ、何したん?殴ったん?全然痛ないんやけど」


「く、クソがぁ!オラァ!もう一発食らえ!」


 今度はちょっとぽっちゃりした相方の兄ちゃんが腹殴ってきたんやけどぽす、とかぽこって感じで全然痛ないねん…おお、そうや。出かけるときに鏡見たらほんまに筋肉ムッキムキで腹筋とかきれいに割れとったもんな。そらぁ防御力高いわけやわ。ほな、正当防衛いっとこか。


「ほな俺の番やな」


 俺は軽めにグーを作ってまず最初にひょろい兄ちゃんのほうの顔をどついた。


「牛丼食いたいからはよ終わらせよ。ギュッと握ってドーン」

「ぶるっふぁあ!?!」


 嘘やん。ちょっと小突いただけやのに兄ちゃんぶっ飛んで行ってゴミ捨て場のゴミ箱に頭から突っ込んでいった。それを見ただけでぽっちゃりな兄ちゃんのほうは情けない声あげて逃げていったわ。


「え、あ、う…」


 一方で夏目さんはフリーズしとった。何が何やわかってないらしい。って言うか俺もこいつらの仲間やと思われたんちゃうん…。んなわけあるかい、俺は善良な高校生やで。


「えっと、大丈夫?なんかされてない?しい…あー、夏目さん」

「え?あ、うん。ケガとかはしてないし…大丈夫…」


「あー、よかった。とりあえず、ここにおったらまた変なん来るかもしれへんから大通り出よか」

「うん…あ、あれ…?」


 夏目さんはへなへなと座り込んでしもた。あー、緊張から解放されて腰抜けたんかな?そらまずいな。


「大丈夫?おっしゃ、俺おんぶしていくわ」

「う、うん…や、やっぱり怖かった…みたい」


「そら怖かったやろなぁ。あとちょっとでほんまに襲われとったかもしれへんし」


「……っ!」


 ギューッと俺に掴まる夏目さん。うっわ、軽!しかもめっちゃええ匂いするやん。女の子と無縁の生活を10年以上?もっとか。過ごしとったから…あかん、何や…妙な気持になるわ。てか、ほんまにこの世界…「NTR HAZARD」の世界やねんなぁ…本物の夏目 詩奈さんをおぶった感想は…ええ匂いがした。柔らかい。以上。


………


「はい、お茶でよかった?」

「うん!あの…あのね?助けてくれて…ありがとう。あーし…あのままだったら…」


「たまたま夏目さんの声が聞こえてん。運よかったなぁ」

「ほんとだよぉ…天王寺君が来てくれなかったら…」


「まあ嫌なことははよ忘れたほうがええよ。災難やったけど」

「うん…でも、天王寺君が助けてくれたことまで忘れたら…ダメだし…」


「いやまあ気にせんでええよ。俺が助けたことも含めて忘れてええんちゃう」

「ダメだし!!」


「さよか…」


 カフェオレを飲みながら夏目さんと話をしていく。そうやった。この娘、めっちゃ恩義を感じる娘でいっつまでも恩を忘れへんねん。ゲーム本編でも今宮君に助けられたことが今宮君を好きになるきっかけになってるし、そのおかげでほんまにグイグイ迫ってくる娘やったわ。今宮君はもう気にせんでええって言うてるのにあかん言うて健気な娘やったわ。ただ、恨みも忘れへんから天王寺が今宮君に対して嫌がらせとかしてたらものすごい勢いで食って掛かってきとった。まあ、その強気さが天王寺のやる気に火つけてお薬エンド…やねんなぁ。


 発売されてから何年経ってもエロゲの人気ヒロインの上位におったな。まああとの2人のヒロインも上位におった。で、そんな夏目 詩奈さんを薬堕ちさせた悪の張本人、天王寺 大樹とこうやってベンチでお茶しとるっちゅうんが…ものすごい違和感感じる。


「おっと、もうえらい遅なってもうた。もう帰らなあかんで。送ってくわ」

「だ、ダメ!これ以上天王寺君に迷惑かけらんないよ!」


「何言うてんねん。一回襲われかけとった女の子をこのままほったらかして帰れ言うんかいな。そんな格好してまた変なんが声かけてけえへんわけないわ」


そういうと「うう…」と何か呻いて考えこんどる。これ以上俺に迷惑かけられへんとか思ってるんやろうけど放っておけるかいな。男が廃るっちゅうねん。

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